【第62回】虫からながめた都会のすがた

福山 研二(ふくやま けんじ)

1.なぜ生物多様性は大切なのか

 こうした、地球温暖化問題は、主に工業関係が主流だと考えられるかもしれませんが、実は、温暖化の原因の2割は、森林減少によるものであるという結果も出ており、生き物たちが、地球環境全体にとってもきわめて重要であるということがわかってきたのです。遠い、熱帯の森林が減少していることは、なかなか気づきにくいものです。また、生物多様性の働きはきわめて複雑であるため、どの生き物が大切なのかを判断できないため、むしろ生き物を全体として保全するというやり方が必要になっています(図1)。
 こうした認識のもとに、現在では、温暖化のための会議(気候変動枠組条約による締約国会議UNFCCC-COP)とともに、生物多様性条約にともなう締約国会議(CBD−COP)が毎年開かれ、生物多様性をどう保全していくかを話し合っているのです。
 ですから、現在では、個別の自然を守る、自然保護ではなく、地球全体を見据えた、生物多様性保全という考え方になっているのです。そして、その生物の一員としては、我々人間も含まれるのです。

【図1】地球生命系という複雑な飛行機に乗った無邪気な乗客は、知らぬ間に、大切な部品を壊したり、無くしているのかもしれません

2.都会と自然

【図2】昔の農村と里山
【図3】現在の農村と都市

3.虫による環境診断

【図4】虫を調べることは、その自然の血液検査のようなもの
【図5】関東地方での陸産等脚目の分布(寺田ほか2001より改変)

4.都会の虫たち

【写真1】中国雲南省にある、石林(シーリン)の奇観は、虫にとっては、都会と同じ景観といえます
【写真2】典型的な都会の昆虫、アメリカシロヒトリの食害
【写真3】アメリカシロヒトリ成虫(森林総研HPより)
【写真4】アメリカシロヒトリ幼虫(森林総研HPより)

さいごに

参考文献