【第71回】トランジション・ムーブメント発祥の地:イギリス、トットネス

 ロンドンから特急列車で3時間ほどのデヴォン州トットネス。暖かく気候もよく、町の中心部にある「ハイストリート」には、活気のあるパン屋さん、お肉屋さん、洋服屋さん、オーガニックレストランなどが並び、街歩きを楽しませてくれます。かつては海運・造船業で栄え、農業地帯に囲まれていることもあって、「マーケット・タウン」と呼ばれていたこの町が、今は「トランジション・タウン」として有名になっています。「トランジション(transition)」とは、「移行」や「転換」を意味します。
 そう呼ばれているのは、石油等の化石燃料に大きく依存する暮らしから、その使用を大きく減らした暮らしに、住民の創意と工夫で「楽しく」移行しようとする草の根活動「トランジション・ムーブメント」が、2006年にこの町で始まったからです。
 今では世界中に広がっているこの動き。人口8000人ほどのこの小さな町が発祥の地です。本稿では、地域通貨の発行、地産地消の実現、住民ビジネスの定着など、その多岐にわたる取り組みを紹介します。

1.トランジション・タウンとは

2.非営利組織トランジション・タウン・トットネス(TTT)

3.プロジェクト

4.REconomy:リ・エコノミー

さらに、地元の人たちとの接点を密に保つことが重要なリ・エコノミーの考え方に基づき、以下のような事業も行われています。

  • 醸造バー:金曜日と土曜日の夕方5時から夜9時までだけは、醸造所をバーとして開店。
  • 結婚式へのケータリング:単にビールの配達だけではなく、新郎新婦の名前や写真入りのラベル付きビール瓶などの提供もしている。
  • 地元イベントに出店:イベントがあれば出店して、地域の人たちと顔を合わせる機会をつくっている。

◎ローカル・エコノミック・ブループリント(地域経済の青写真)

 リ・エコノミーに基づく事業を立ち上げるプロジェクトのために、TTTは地元経済の状況を分析した、ローカル・エコノミック・ブループリントという報告書を発表しました。トットネスの住民が何にどれくらいのお金をつかっているのか、その支払ったお金は地元に還元されているのか、またトットネスの企業や商店はどこで資材や原材料を調達しているのかなど、金銭の流れを各種データから徹底的に解明し、それに基づいて人々に地域経済の活性方法を提言したのです。この説得力のある報告書を土台に、リ・エコノミーは展開されています。

リ・エコノミーのHPで紹介されている、報告書の内容の一部:

食べ物と飲み物:私たちがスーパーではなく、地元の店舗で、これまでよりも1割購入を増やせば、地域経済に200万ポンド加えることになります。

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 以上、トランジション・タウン・トットネスの活動を見てきました。TTTが目指しているのは、化石燃料依存型社会からのトランジションが、小さな活動が他の小さな活動と有機的につながることで、面的に町内全体を覆っていくことです。行政や企業が大規模に行うトランジションではなく、住民主体のトランジションは、小さく、時間がかかります。けれどもそのプロセスに多くの住民が楽しく参加することで、ライフスタイルそのものに確固とした変化をもたらし得ることを、TTTの活動は教えてくれているようです。

注釈

Info

参考資料