かれん と シーナの『エコ質問箱』質問03
2016.04.28
国内で唯一、府中市だけに自生するムサシノキスゲってどんな花?

近頃だいぶ暖かくなってきたね。桜の花も盛りを過ぎて、新緑が芽生えだしたよ。

本当に気持ちのいい季節ね。

ぼくのふるさとの雑木林では、今の時期、山野草が芽吹きはじめて、かわいい草花も咲き出しているんだ。

どんな花が咲いているの?
今度、いっしょに行きましょう。連れて行ってよ。

いいよ。今回は、そんな雑木林に咲く草花について紹介しようか。
実は、府中市にある浅間山(せんげんやま)というところに、日本全国でそこだけにしか自生していない「ムサシノキスゲ」というユリ科の植物があるんだ。

え、それは珍しい! 東京にしかないなんて、なんだか不思議だわ。


4月末~5月下旬にかけて花を咲かせるムサシノキスゲの群落(府中市提供)。

浅間山は、武蔵野平地には珍しいこんもりとした標高80メートルほどの丘で、多摩川の対岸にある多摩丘陵と同じように、多摩川の昔の流れによって周囲が削り取られたんだけど、その浸食から免れて残った山だと言われているんだ。
今は都立公園として保全されているのだけど、その浅間山でも一時期、ムサシノキスゲも絶滅の危機にあったらしいんだ。
でも、ボランティアの皆さんの力で復活したんだって。

どういうこと? くわしく教えて。

雑木林の草花は、里山を人々が利用してきたことで保全されてきたんだ。定期的に木を切り、薪にしたり、シイタケのほだ木にしたり、落ち葉をはき集めて堆肥にしたりすることで、林の中は光が射し込む明るい環境になっていたんだ。それによって、生育にたくさんの光を必要とする植物が生長しやすい環境ができていたんだ。

あ、聞いたことあるわ。薪の代わりに電気やガスが使われるような生活に変わって、里山に人の手が入らなくなったことで荒れてきたんじゃなかったかしら。

そういうこと。木を切らなくなって、草木が生え放題になると、林の中はうっそうとして光が射し込まなくなる。そうすると、光が少なくても生長できる種類の植物に代わっていって、ムサシノキスゲなどの里山特有の草花は絶滅していったんだ。

難しい問題があるのね。

浅間山でも一時期荒れて、ムサシノキスゲも見られなくなってしまったんだ。そこで、ボランティアの人たちが立ち上がり、間伐したり下草刈りをしたりと里山保全の作業をしたことで、ムサシノキスゲも復活してきたらしいんだ。
今や、ムサシノキスゲをはじめ、キンラン・ギンランやヤマユリなどの植物、野鳥や昆虫など自然の宝庫として、地域の人たちの憩いの場になっているんだって。
ぼくもこの間行ってみたけど、とてもいい雰囲気の森だよ。


公園の林床は明るく整備されている。
ところどころに、ムサシノキスゲの看板(写真左)や、武蔵府中郷土かるためぐりの石碑
(写真右は、「(む)むさしのきすげは五月のかおり」)などが設置されている。

いのちって不思議だわ!
さっそく今度の休みに、浅間山公園へムサシノキスゲを見に行かない?

ムサシノキスゲは4月末から5月下旬にかけて花を咲かせ見ごろを迎えるんだ。
毎年、浅間山公園では5月第一第二の土・日曜日に「キスゲフェスティバル」が開催されていて、自然保護団体の人たちが浅間山の自然について紹介してくれるというから、それに合わせていくのはどうかな。

わかった! 約束よ。
Question

では、最後に浅間山についての問題です。次のうち、正しいのはどれだかわかりますか?
A1 浅間山は、前山・中山・堂山の3つの小さな峰からなる丘で、その名は最高地点の堂山山頂にまつられている浅間神社に由来するんですって。
A2 浅間山の一番高いところは、堂山の標高79.6mで、まわりとの高低差は30メートルほどですが、眺望がよく、関東の富士見百景にも選定されているわ。
A3 浅間山を中心とした一帯は、かつて南北朝時代の正平7年(1352)に、足利尊氏と新田義興・義宗兄弟の軍が両朝の命運をかけて戦った古戦場として、都の旧跡に指定されているんですよ。

解説

実は、3つとも全部正解なんだ。
まさに見どころたっぷりの浅間山公園、みんなもぜひ一度訪ねてみてね!