かれん と シーナの『エコ質問箱』質問25

ねえねえ、昨日井の頭公園に行ったんだって? どうだった?

それが大変なのよ! なんと、池の水がなくなって、池底が見えていたの!

あれ、かれんは知らずに行ったの?

え、シーナは知っていたの? なんで水がないんだろうって、びっくりしたわ。

井の頭公園って、去年の5月に開園100周年を迎えたんだよ。
100年の間に、水質が悪化したり外来種が増えたりといろんな問題が生じていたから、100周年に向けて池の生態系再生をめざして池の水を抜く「かいぼり」をはじめたんだ。結構話題になっていたけどなあ。
池の水を抜くのも今回で3回目になるんだって聞いたよ。

私は全然知らなかったわ。パパがいっしょに行こうっていうからボートに乗るのを楽しみにしていたんだけど、行ってみてびっくりよ!! 水がなくっちゃボートには乗れないわよね。

それは残念だったね。で、どうだったの?

ボートには乗れなかったけど、池底に下りて、歩いたの! 池の中に入って歩けるなんて思いもよらなかったな。
水を抜いたのに意外とドロドロで、膝下くらいまで泥の中に埋まっちゃって、長靴が脱げちゃったけど、おもしろかったの! 小さな子でお尻をついて泥だらけになっちゃった子もいたけど、むしろ泥だらけになって喜んでいたなあ。

水を抜いた池底を探検! 泥に埋まった長靴が脱げて、泥だらけになる子も見られた。

それはよかった! 女の子だと泥んこが苦手という子も多いと思うんだけど、さすがだね。

それって、ほめてる??

ほめてるよ、もちろん!! でもさ、かいぼりは何のためにしているのか知っている?

え~と、なんか説明された気もするけど、なんだったっけなあ…。

さっきも簡単に話したけど、かいぼりする前の井の頭池は、水が汚れてアオコなどの植物プランクトンが増えてきていたんだって。アオコが増えると水が濁って、魚などの生き物にとって暮らしにくくなるんだ。しかも、ブラックバスなどの外来種が増えてきて、モツゴやエビ類などの在来種を捕まえて食べてしまったんだ。
かいぼりをすることで、水の汚れを改善するとともに、水の抜けた池底に打ちあげられた外来種の魚やザリガニ、カメなどを池から取り除いて、かつての井の頭公園の姿を取り戻そうっていうのが目的らしいよ。

ああ、そういえば水をきれいにするんだって説明してもらったわ。外来種や在来種なんかについてはあまり詳しく説明してなかったと思うけど、外国から来た生き物のことでしょ?

ちょっと違うんだなあ。池に住むが魚が歩いてきたり飛んできたりするわけじゃないでじゃない。
外来種っていうのは、人間によって別の場所から持ち込まれた生きもののことなんだよ。飼育しきれなくなって池に放された魚やカメも多いみたいだよ。
もとの環境にいた在来種を捕まえて食べたりすることで、池の調和が崩れてしまったんだ。外国産の生きものだけじゃなくて、国内の他の場所から連れてきた生きものも、放たれた先の生態系をかく乱するので、国内由来の外来種といって、放流などしないでと呼びかけているんだって。

へえ、そうなんだ。国内なのに、外来種なんだね…。

まあ、池底ツアーは、理屈を伝えるよりも、普段は踏み入れることができない池の底を歩いて、池や池の環境に関心持ってもらいたいというのが主な目的にしているらしいよね。

よく知っているのね。

えへ、実は、かれんが行く前に、ぼくも池底ツアーに参加したことがあるんだ。ネタばらしをすると、池の水がなくなっているのが不思議だったから、いろいろと調べてみたんだ。

なあんだ! でもよく調べたわね。
じゃあ、この後はどうなるの? 汚れた水を抜いたあと、きれいな水を入れれば、池はきれいになるのかな?

う~ん、そう単純ではないみたいなんだ。水を入れ替えるだけじゃあ効果は一時的で、すぐにまた汚れちゃうんだって。

じゃあ、どうすればいいの?

池の水の汚れの原因は、窒素やリンなどが増えすぎて起こる富栄養化によって植物プランクトンが増えることでひどくなっているんだけど、池を干上がらせて、池の底の土を乾燥させると、ヘドロになって酸欠状態だった土の中に酸素が届いて、水に溶け出しにくい状態になるんだって。乾燥した土は、窒素やリンが豊富に含まれているから、さらい出して庭木や花畑などにまくと、肥料として最適なんだって。

え、でもだいぶぬかるんでいたわよ。水が少ない場所もあったけど、ヒビ割れるほど乾燥するにはほど遠い状況だったわ。

なんでだと思う?

え~、わからないなあ。なんでなの?

もともと、井の頭池は豊富な湧水が水源になっていたんだ。今でも池底から湧水が湧き出していて、神田川に毎日汲み出しているから、カラカラになるほど干し上げるのは難しいらしいんだ。

そういえば、池底で水の流れているのを見たわ。あれ、湧水だったのね。
ところで、かいぼりの効果ってあったの?

うん、今回、平成25年度に一部の池で実施したかいぼり(2014年1~3月)、平成27年度に全域で実施したかいぼり(2015年11月~2016年3月)に続く3回目のかいぼりだったんだけど、水質も生態系も改善の兆しがみられているらしいよ。
はじめてのかいぼり(25年度)では圧倒的に外来魚が多かったのに対して、今回のかいぼりでは在来魚がかなり増えていたんだ。特にブラックバス(オオクチバス)については、平成27年度のかいぼり後は見つかっていないし、ブルーギルも大幅に減っているらしいんだ。
それから、イノカシラフラスコモという絶滅危惧種の水草がかいぼりの後に、池底で発芽しているのが見つかったらしいんだ。実に、59年ぶりの再発見だったんだよ。

59年ぶりに復活した水草のイノカシラフラスコモ。水質汚濁や外来種の移入等によって姿を消していたが、かいぼりによって外来魚等を排除し、池底を天日にさらしたことにより、池の透明度が向上し、長い眠りから覚めたイノカシラフラスコモの埋土種子が発芽した。

59年も、どこに隠れていたの!?

埋土種子といって、土の中に閉じ込められていた休眠中の種が、土底に光と空気が届いたことで刺激を受けて、目を覚ましたんだ。これもかいぼりの効果なんだよ。他にもいろんな植物の種が目を覚まして、発芽しているんだよ。

これからも毎年かいぼりをするのかしら?

毎年ではないけど、数年に一度はかいぼりをして、水質の改善と生態系のさらなる再生をめざしていくんだって。

公園に来た人たちも、池の水がなくなっているのを目の当たりにして、なんが起きているんだと、池の環境に注目するきっかけにしてくれるといいわね。

さて、ではここで問題だよ。
井の頭公園の水源は湧水だけど、かつては今よりはるかに多くの湧水量があったんだ。
その量、1日当たりどれくらいだったか、わかるかな?

なかなかピンと来ないかもしれないけど、当時、井の頭池の水は、約6日で入れ替わっていたんだって。
この豊富な水が、神田川として流れ、江戸時代には江戸市中に神田上水を引いて生活用水に使われていたんだ。