かれん と シーナの『エコ質問箱』質問26

シーナ、キノコ採りってしたことある?

あるよ! それがどうかした?

パパがキノコを採りに行くっていうのよ。
私、キノコはあまり好きじゃないんだけどな…。

え!? あんなにおいしいのに? 喰わず嫌いなんじゃないの?
森のキノコを採りに行くんだろ、採ってすぐ、網で焼いたりするとすごくおいしいんだよ。
森で採ったキノコは、スーパーで買ってきたのとは全然違うから、食べてごらんよ。

そうかしら…。あまり気乗りしないんだけどな。

もったいないなあ。ぼくもいっしょに行ってもいい?

いいわよ。私の分もあげようか。

どうしても食べたくないんならもらうけど、おいしいよ!

う~ん…。

ところで、どんなキノコを採りに行くの?

この間、森の中で丸太を並べたんだけど、そろそろシイタケが生えてきているんじゃないかっていうのよ。

ああ、ほだ木に菌種を植え付けたんだね。
ぼくが採るのは野生のキノコだよ。

ほだ木っていうの?
交互に組み上げるのが結構大変だったなあ。

風通しをよくするためだね。
シイタケ栽培には、直射日光が当たらないけど、雨は降り注いで、風通しや水はけのいいところが適しているんだよ。

ふーん、そうなんだ。
キノコのこと、もっと教えてくれる?

いいよ! 何でも聞いてよ。

あのね、キノコを植えるときに、「森を守るための活動なんだよ」って言ってたの。
どういうことか、わかる?

キノコを育てるために木を切るからだよ。

え、でも、木を切っちゃったら、森がなくなっちゃうんじゃない?

かれんは木を切ることが、悪いことだと思うの?

私は切ったことはないけど、ちょっとかわいそうな気もするわね。
特に何十年もかけて生長した木は、そっと残しておいてあげたいわ。

じゃあさ、森は切らないで放っておいた方がいいと思う?

違うの? 森がなくなっているのは人間が木を切っているからって聞いたことがあるわよ。
東京も昔は自然豊かだったけど、どんどん宅地化されて森がなくなっちゃったんでしょ。

うん、その通りなんだけど、でも、一概に森の木を切らない方がいいってわけでもないんだ。

だって、木は切っちゃったらなくなっちゃうじゃない。

でも、木がなくなれば、葉っぱで遮られていた光が地面にまで射しこんできて、新しい生命が芽生えてくるんだよ。
森全体を一斉に切って、宅地などにしちゃったら森がなくなっちゃうけど、森の中で木が切られたり倒されたりすることは、森にとっても大事なことなんだよ。

ふ~ん、そうなんだ。

ぼくたちドングリの木も、里山の雑木林に生えている木で、昔は30~40年おきに切られていたから、明るい雑木林として維持されてきたんだ。
でも最近は、木が切られなくなって、薮のようになっているところもいっぱいあるんだよ。
そうなると、生き物にとっても暮らしにくくなってしまうんだよ。
木が混み合いすぎて、鬱蒼とした森って見たことない?
ひょろひょろした木は健康そうに見える?

あ、そうか…。

地面に光が射しこまなくなると、草も生えなくなっちゃうんだ。
森林保全とか環境保護なんていうと、なんだか難しいことをしなくちゃならないように思うかもしれないけど、山とともに暮らしてきた人の営みって、案外バランスが取れていてよかったんだと思うよ。

でも、それがシイタケ栽培とどうつながるの?

シイタケを栽培するためのほだ木は、森の中の木を切って作るだろう。
木は倒されちゃうけど、シイタケの原木として活用されるし、切り株からは新しい芽が出てきて、森が再生されるんだ。
でも、切らないままでいると、大きくなりすぎて、森の中は暗くなるし、木自体も年を取り過ぎて元気がなくなっていくんだよ。

だから、切った方が森の保全につながるってことなのね。

それと、キノコは森の掃除屋とも言われるんだよ。

掃除屋さん? どういうこと?

ほだ木を組む時に「重かった」って言ったでしょ。
でも、何年か経つとスカスカになって、軽くなるんだよ。

キノコのせいなの?

キノコのおかげだよ。
森の中には、倒れた木や折れた枝もあるし、秋から冬にかけて、毎年たくさんの落ち葉が地面を覆っているけど、春になるといつのまにか、目立たなくなっているじゃない。
キノコを始めとする森の掃除屋さんが片付けてくれるんだよ。

キノコって、動物じゃないわよね。
ホウキを持って掃くわけじゃないし、そもそも動けないんじゃないの?

もちろん、ホウキを使うわけじゃないし、動いたりもしないけど、菌糸を伸ばして広がっていくし、胞子を飛ばして、森の中のいろんなところに生えてきて、倒れた木や落枝、落ち葉などを分解しているんだ。

あ! “分解”っていうことは、「物質循環」のことでしょ。
生産者と消費者と分解者だっけ? 理科で勉強したことがあるわ。

そう。キノコは分解者なんだ。
分解者のおかげで、落ち葉や枝が分解されて、再び植物が栄養として使えることになる。
動物の死体も同じで、分解者がいなかったら、朽ちていかないまま森の中に残っていくことになるんだ。

キノコも大事な役割を担っているのね。

じゃあ、そんなかれんにクイズを出してあげようかな!
日本でシイタケの人工栽培が始まったのって、いつ頃だったと思う?

え~、難しいなあ。ヒントをくれない?

ヒントじゃないけど、キノコの人工栽培としては、シイタケがもっとも古くから行われていたんだって。

ぜんぜんわかんないよ~! みなさんはわかりますか?

ただ、シイタケを干すとうまみが増すことは古くから知られていたらしくて、乾物にして食べられるようになったのは、9世紀に中国の食文化が入ってきた頃だったと言われている。
保存も効くし、栄養も増す、優れた知恵だよね。