第5号 北区水辺の会
池の水ぜんぶ抜く!?かいぼり体験

池の大掃除!かいぼりとは?
晴れたり曇ったり、天気の安定しない10月4日、埼玉県川口市と接する東京都北区の荒川沿い、「北区・子どもの水辺」に多くの人が集まってきました。テレビ番組「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」で一躍有名となった「かいぼり」が、国土交通省、北区、北区水辺の会の協力で半日×4日間にわたって行われる初日です。
かいぼりとは、池や沼の水を一時的にすべて抜き、底の泥や土砂を取り除いて天日干しすることです。伝統的な管理手法で、農業用のため池の健全な維持が本来の目的ですが、近年は、池の生態系や水質を改善するため、都市部の池や公園などでも実施されています。
早速、池に入る人は、ウェーダーと呼ばれる胸まで防水になっている胴長に着替え、タモ網を片手に水辺に向かいます。

かいぼりの場所は、北区・子どもの水辺の自然観察区域の中でも、荒川に面してY字型のおもちゃのパチンコのような形をした池(ワンド)です。初日は水を抜く前に、仕掛けた定置網に生き物を追い込み、魚の救出と魚類調査を実施します。

| 1日目 | 定置網への魚の追い込み |
| 魚類調査 | |
| 水門開放(水を抜く) | |
| 2~4日目 | 池の底にたまった泥のかきだし |
魚の追い込みは池の奥から荒川に向かって、列になって水の中の生き物を誘導していきます。池の水を止めている水門の手前に定置網を設置し、ここに向かってみんなで少しずつ進んでいきます


事前申込者は約30名でしたが、池のほとりのギャラリーも含めると、50~60名が見守りました。
魚の追い込みのあとは、池の水を抜くため、堰を切ります。水をせき止めていた板を開くと、ザザーっと水が荒川に向かって流れていきます。このときの水位の高低差は40~50センチでしたが、見学者は写真を撮ったり、動画を回したり、なかなか見られない光景に周囲にはギャラリーがたくさん集まっていました。水の勢いと一緒に、空のペットボトル、野球の硬球など浮くゴミが流れてきました。時には洗剤の容器や釣り針が見つかることもあるといいます。

2か所ある水門を開いて、明日まで水が抜けるのを待ちます。
どんな生き物が見つかった?
子どもたちはどきどき・わくわく、どんな生き物を救出したか、結果が気になります。定置網を引き揚げて、トロ舟(バケツ)に放つと、70センチを超える巨大なコイが姿を見せ、大歓声が上がりました。


見つかった魚は11種類、約40個体でした。以下の通り。
| 在来の魚 | 外来の魚 | 甲殻類や爬虫類 |
| マハゼ | ブラックバス(オオクチバス) | ミシシッピアカミミガメ(外来種) |
| モツゴ | ブルーギル | テナガエビ |
| スズキ | カダヤシ | カニ |
| ヌマチチブ | ||
| ギンブナ | ||
| ヘラブナ | ||
| コイ | ||
| アベハゼ |


繁殖力の強い外来種が幅をきかせているのは、水の中だけではありません。2020年から南アメリカ原産で特定外来生物に指定されている抽水植物「ナガエツルノゲイトウ」が姿を現し、水際を中心に大繁殖しています。ナガエツルノゲイトウは、根や茎の小さな断片からでも再生する、まるで漫画やアニメで復活を繰り返すキャラクターのようです。令和元年の東日本台風の時、荒川からの流入によって植物断片が運ばれてきた可能性が高いといいます。

ナガエツルノゲイトウの繁殖を防ぐため、定期的に駆除しているほか、試験区を設け、焼き払いや防草シートでの防除を試みて対策を研究中です。以前から植生や外来植物群の分布を調査する中央大学理工学部の学生も調査に加わっています。
魚の追い込み時も参加者は水面に浮かぶ断片をかき集め、ごみ袋はずっしりとした重さになりました。
参加者は北区の広報を見て、生き物が好きな子どもと一緒に訪れた親子が多くいました。残念ながら小学生には池が深く、かいぼりは体験できませんでしたが、池の水が抜けたあとの浅瀬で生き物探しに熱中していました。「楽しかった」「明日も来たい」と泥だらけの姿に笑顔で話していました。
魚の追い込みに参加した目黒区在住の中学生の父親は「自然体験を子どもにさせたくて、月1回ほど出かけています。友だちも一緒に来れて、終始明るい表情をしていました」と話します。
果てしない、泥のかきだし
水位の下がったあくる日から池の底にたまった底泥をかきだしていきます。T字型の整備用具トンボを手に、不安定な足元の中、泥を荒川本川の方へかき出します。

水を抜く理由は、よく言われる外来種の駆除もありますが、何もしないでいると、池の底に粘土の粒子よりも細かいシルト状の泥が堆積して、嫌気状態のヘドロとなり悪臭や水質汚濁の原因になり、良好な生態系を維持できなくなるからです。
ワンドには、東京湾の潮の満ち引きの影響で一日二回、水の出入りがあり、台風などの影響も受けます。このような環境は、池の底に「ヘドロ」が発生しやすく、生き物や生態系に悪影響を与えます。そのため、市民が安全に自然の大切さを学べる場所として作られたワンドでは、2007年から毎年、池の泥のかきだしが行われています。この作業をすることで、底の土に酸素を運び、水草が生えやすい環境も作ります。

泥をかきだしたあとは、水門は開けっ放しにし、2~3月に閉めて再び魚が繁殖できる場所にします。本当におつかれさまでした!
ここからは、地元住民の荒川への想いに迫るよ!

あの頃の荒川を再生したい!北区水辺の会
豊かな自然を将来にわたって子ども達に残していくことを目的に、北区水辺の会を2001年に設立した太田桐正吾さんにお話を伺いました。
太田桐さんは1943年に生まれ、物心ついたときは終戦直後(1945年)でした。その頃から荒川周辺で、魚を捕まえたり、アヒルやニワトリのエサを調達したり、川の水を飲み水にしていたといいます。1955年頃から高度経済成長期に突入すると、繊維工業が盛んになり、瞬く間に川の様相が一変しました。
「水面には泡が積もり、魚は白い腹を空に向けて苦しがっている。川で遊び、生活していたあの頃を思うと、生きているうちに何とかしたい」と濁り切った川を眺め、若き日の太田桐さんは漠然と思っていたそうです。
1996年に「荒川将来像計画」が策定され、あわせて河川管理者・北区・地元住民の将来像に関する協議機関として「北区荒川市民会議」が設置されました。このとき、太田桐さんは知人から声をかけられ、会議の場で荒川の過去と現在を話し、本格的に川の再生に取り組んでいくこととなりました。
1998年、野球場の再配置により、護岸に沿った水辺再生のスペースを確保する「自然地再生計画」が市民会議で合意されました。市民会議の有志などで、生態や植生の調査を続けたのち、地元区民の提案で、大小2つの池からなる「北区・子どもの水辺」が2005年に完成しました。
25年以上の活動を振り返ると、周囲の協力で続けてこられたといいます。当時の区長と対面する機会を得たり、国土交通省が管轄する荒川下流河川事務所、北区、小学校、市民団体などを巻き込み、協議会の体制を作ることで関係人口を増やしていきました。2007年には、国土交通省が活動を支援する「水辺の楽校」に「北区・子どもの水辺」が登録され、水辺の維持管理の強力なサポーターができたともいえます。

北区水辺の会には、魚の生態に詳しい方、子どもの自然観察の見守り役など、様々な方が参加しています。かいぼりは年1回ですが、小学生を対象とした環境学習、魚類調査、植生調査など水辺の四季折々の景色を楽しむことができます。会員は絶賛募集中ですので、気になる方は一度、活動に参加してみてはいかがでしょうか。
発足年月日
2001年7月
会員数
約30名
活動場所
北区・子どもの水辺(東京都北区赤羽3-29地先(新荒川大橋野球場脇))
活動時間
定例活動日は毎月第2日曜日と第3土曜日。不定期を含めると年100回ほど。
活動内容
ゴミ拾い、魚類調査、かいぼり、植物調査、水質調査、小学校の環境学習の手伝い
アクセス
東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線「赤羽岩淵駅」より徒歩で約10分

