第14号 高さ100メートル!清掃工場の「煙突のぼり体験」
館クリーンセンター(八王子市)

ビルの25~30階に相当する煙突のぼりに挑戦!
雨上がりの重たい雲が流れて時折、青空が覗く夏模様の8月6日(木)、八王子市内の館ヶ丘団地の南側に位置する館クリーンセンターで「煙突のぼり体験」が行われました。市内小学生を対象とし、子ども10名、大人9名が参加しました。
このイベントは館クリーンセンターが開設された2022(令和4)年10月の翌年から毎年夏休みに開催しています。
参加者を募るとあっという間に定員が埋まります。普段の見学では入れない場所に特別に入れることが人気の理由で、昨年に続いて2度目の応募で参加された方もいました。
煙突の高さは100メートル。ビルの25~30階に相当します。尻込みしそうな大人を横目に、子どもたちはやる気十分です。煙突内部に足を踏み入れるとコンクリート打ちっぱなしの空間が広がり、外気温よりやや涼しく、ごみの臭いは全くしません。

中は外から見るよりも広々とし、排ガスが通る管(パイプ)が空に向かって2本のびています。2本なのは焼却炉が2つあるためです。管は熱くなると膨張し、冷めると縮み、その伸縮差は何と20センチ。断熱材に覆われ、触るとほんのり温かい状態でした。
排ガス管は円柱ですが、建物自体は四角く、螺旋階段と違って角にスペースがあることで登りやすく設計されていました。途中には踊り場があり、その都度、職員の方が煙突や館クリーンセンターの豆知識を教えてくれました。

焼却温度は850℃、排ガスの温度は160℃あり、煙突によって高温の気体を安全に外に放出しています。排ガスに含まれる有害物質は、煙突に運ばれる手前でバグフィルタと呼ばれる「ろ布(フィルタ)」を通過して除去されるため、外に出る気体は無害な水蒸気です。
ごみを燃やすときに発生する蒸気は、蒸気タービン発電機で発電することで、エネルギーを有効活用しています。最大4,440kWの発電能力があり、その電気は施設内や市役所などの11か所で利用し、さらに余った分は電力会社に売っています。年間2億円以上(令和7年度)の売電収入がありますが、ごみ処理にお金がかかるため、施設全体として利益は出ていないと聞き、参加者は驚いていました。

高さ76メートル地点まで来ると、さすがに水分補給しながらの休憩となりました。
ここでは、ごみを燃やした灰をリサイクルしている話がありました。以前は埋め立てていた灰をエコセメントとして資源化し、不燃ごみも徹底的に選別・資源化することで、八王子市では2018(平成30)年度から埋め立て処分量ゼロを継続しています。
頂上から見える景色と馳せる思い
大粒の汗と心地よい疲労感に包まれながら、ついに高さ100メートルの頂上に辿り着きました。四方の窓から多摩地域や神奈川県方面を望むと、子どもたちははしゃぎ、晴れやかな笑顔が溢れました。見学用に大きく設計された窓からの風景は、視界を遮るものがなく、一見の価値ありです。


登頂は苦労の甲斐あって喜びがひとしおですが、眺めている景色のあちこちからごみが集められていると考えると、感慨深いものがありました。ごみ出しという日常の先には、多くの人の手間や知恵によって環境が守られている、その事実を改めて認識する機会となりました。
子どもたちは「意外と疲れなかったけど、楽しかった」「もう一回登りたい」と無邪気な様子でした。
名残惜しさを感じつつ、地上に向けて苦労した階段を下ります。体感的に帰りはあっという間でしたが、階段を踏み外さないように慎重に歩を進めました。

登った段数は471段。市内の建造物の高さでは第2位とのことでした。(第1位は158メートルのサザンスカイタワー)
ごみクレーンに釘付け、工場見学会
煙突のぼり体験のあと、希望者は工場見学会にも参加しました。館クリーンセンターの役割やごみ処理の流れを映像やゲーム、本物のクレーンなどを見て学べるガイド付きの見学会です。最初に大画面のスクリーンによるニュース風の映像で同センターのことを学び、屋内~屋外への見学コースを巡ります。
4階では、旧館清掃工場の模型や八王子市の航空写真を見ていく中でも、ひときわ参加者の視線が注がれたのが「ごみクレーン」です。収集車が集めたごみがさらに1か所に集められ、そのごみをクレーンが持ち上げて袋を破いて細かくする工程をガラス越しに目の前で見ることができます。

先ほど登った煙突のガスの排出元となる焼却炉とその熱を利用した蒸気タービン発電機も実際に見ることができます。機械の外側だけを眺めるので無機質な感じですが、蒸気タービン発電機はとても音が大きいため、防音の部屋になっています。
もう一つ、子どもが夢中になったのが、映像で出てくるごみをタッチして分別するゲームです。空き缶や長靴、アイロンなどの生活品を可燃ごみ・不燃ごみなどの選択肢から選びます。

続いて、屋外ではごみ収集車の洗浄スペースやメンテナンス場、駐車場を見て回りました。粗大ごみ用の荷台付トラックや高所作業車、ホイールローダーも見せてもらい、参加者は多くの写真を撮っていました。

すべてのコースを見学し終え、参加者からは「ごみの分別や資源化など、できることから実践していく契機になった」「24時間体制でお仕事しているとは知らなかった」「また見に行きたい」などの感想があり、学びの多い時間となったようでした。
煙突のぼり体験は申込が必須ですが、施設見学は開館中、個人なら自由に巡ることができるので、ふらっと訪れるのにもおすすめです(10人以上の団体は、2週間前までの予約が必要)。
ここからは、八王子市の可燃ごみの処理を担う「館クリーンセンター」の誕生と現在に迫るよ!

ごみの少なさ全国第1位の八王子市
館クリーンセンターは館清掃工場の老朽化のため、2022(令和4)年に新たに建設された可燃ごみの焼却処理施設です。同じ場所で解体・建設され、ごみ処理体制の整備のほか、焼却で発生する熱エネルギーを利用した発電設備を新たに備えました(蒸気タービン発電機)。
ごみ処理能力は、1日あたり160トン(80トン/日×2炉)あり、八王子市内の約26万世帯のうち、およそ4割強の世帯が1日に排出するごみ量に相当する処理能力を備えています。市内にある戸吹クリーンセンター(100トン/日×3炉)と合わせ、可燃ごみは2つの施設で処理されています。
環境教育・学習の拠点としても位置づけられており、年間見学者数は約16,000名に達します(令和7年度)。リアルと映像を組み合わせた見学スペースの充実とSNSでの情報拡散によって、子育て世代の来訪者が増えています。
一方、焼却施設でありながら生物多様性保全の機能も備えています。かつては未整備だった敷地を「自然観察の森」として整備し直し、植物・昆虫・野鳥などの観察会を定期的に開催しています。ごみ処理施設で資源循環を学び、生きものの生息地で自然循環を学んでもらう狙いです。
こうした取り組みから八王子市環境部資源循環施設管理課課長/館クリーンセンター所長の熊澤智さんは「近づかなくていいと思われていた場所から、楽しく学べる場所に清掃工場のイメージが大きく変わった」と話します。
同市では2022年に「ゼロカーボンシティ宣言」を表明し、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指して取り組んでいます。熱エネルギーでつくった電気の利用と、余った電気を電力会社に売却するなどしてエネルギーを活用することで、CO2削減量は7,009トンCO2(令和7年度)に上り、約2,800世帯が1年間に排出するCO2に相当します。ごみ処理だけでなく、地球温暖化防止にも貢献しています。
熊澤さんは「八王子市は4年連続で『ごみの少なさ』第1位(注1)を記録していますが、引き続き、ごみ減量や資源化の重要性を伝えていきたい」と話してくれました。

館クリーンセンター
開 設
2022(令和4)年
住 所
東京都八王子市館町2700番地
開館時間
9:00~17:00(3月1日から9月末)、9:00~16:00(10月1日から2月末)
休館日
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料
無料
アクセス
高尾駅南口から「館ヶ丘団地」行きのバスに乗車、「館ヶ丘団地」バス停で下車、徒歩約10分
◆ 注釈
(注1)4年連続ごみの少なさ第1位…人口50万人以上の都市部門で、1人1日あたりのごみ総排出量の少なさ全国第1位を獲得。2020(令和3)年度~2024(令和6)年度。

