トップページ > エコアカデミー一覧 > 第18回 クールシェア・ウォームシェアのすすめ
2013.02.21
堀内 正弘(ほりうち まさひろ)
1954年7月東京生まれ。東京芸術大学、東京大学大学院、イエール大学大学院、東京農業大学大学院修了。建築家、コミュニケーションプランナー、多摩美術大学教授、NPO法人土とみどりを守る会代表理事。
環境負荷を低減させ、心豊かに暮らせる都市環境を実現するために、都市計画、市民活動などの多様な経験を活かし、さまざまな実践活動に取り組む。
クールシェア、ウォームシェアの提唱者。
夏のクールシェア、冬のウォームシェアは、産業部門に比べると遅れている家庭での省エネルギーを推進するための提案です。「冷暖房器具の設定温度の最適化」に加え、個人で使う冷暖房器具の使用をひかえ、みんなで楽しく、気持ちよく暑さ寒さを乗り切ることで、さまざまな「プラスの価値」も生み出そうというアイデアです。ご家庭や地域でのコミュニケーションのきっかけになり、地域の活性化や一人暮らしの方へのお声がけにもつながります。
夏の日中(14時頃)の消費電力
夏の暑い日の電力消費がピークとなる時間帯では、家庭で消費される電気の半分以上がエアコンによるもので、その多くがひとりで使われているものです。
そこで、ひとりで使っているエアコンを止め、涼しい場所をみんなで分かち合うことで、地域全体としてのエネルギー消費を減らそう、というのがクールシェアです。
ピーク時間帯だけでも家庭での電力消費を減らすことができれば、発電所の設置数を減らし、計画停電を回避することができます。
地域別エネルギー消費量年間変動
冬は、暖房を使う期間が長いので、夏以上に多くのエネルギーを家庭で消費しています。そこで、クールシェアのアイデアを活かした冬の省エネとして「ウォームシェア」を提案し、通年を通した展開を呼びかけています。
ウォームシェアの基本はクールシェアといっしょですが、違いは、冬は「ピーク時間帯」があまり無いことで、夜間も含む長い時間が対象となります。また、猛暑日は限定されるのに対し、寒い地域については対象となる期間が長くなります。
個人が使う暖房エネルギー消費の割合が高いので、例えば、ひとり暮らしの会社員はすぐに帰宅しないで、飲み屋をハシゴしてゆっくりすれば、自宅の暖房の使用時間を短くできます。暖房費を節約しそのお金でビールを飲めば、付き合いも拡がり、街も元気になります。
また、ご家庭でお風呂に使われるエネルギーの割合が高いので、ウォームシェアは、温泉や銭湯の活用を推奨します。湯上がりに皆でゆっくりとした時間を過ごせば、一石何鳥にもなります。
クールシェア・ウォームシェアは、家庭での実践からまちでの展開まで、さまざまなケースを提案していますが、いちばん反響が大きいのがまちでの展開です。暑い時、寒いときには出不精になりますが、あえてまちに出るという逆転の発想の意外性と、客足が遠のく時間帯の商店の活性化につなげようというメリットが合致した結果だと考えられます。
クールシェアは猛暑時の熱中症対策にも有効だということで、自治体が進める「まちなか避暑」にもつながりました。
図書館や美術館などの公共施設、ショッピングセンターの休憩所といった、ほかのひとに気兼ねなく、ゆっくりと涼めるところが多くあるので、「クールシェアスポット」として、登録を推進しています。
商業施設では、さまざまな「クールシェア特典」「ウォームシェア特典」のアイデアが生み出されています。入館料割引や粗品のプレゼント、飲食店ではドリンクのサービスや割引、食後のデザートの提供など、ショールームでのお茶やおしぼりのサービス、そして美容院でのクールシャンプーのサービスなど、ユニークなアイデアもあります。
企業のショールームなど、冷暖房が効いている空間がありますが、目的がないと入りづらいです。クールシェアスポット、ウォームシェアスポットとして登録されたところなら、「家の冷房、暖房を止めてきました」と声をかけると、スタッフは営業の話はしないで、座れる場所に案内してくれます。企業にとって直接の利益にはなりませんが、地球温暖化防止に配慮している企業だというメッセージが伝わることでしょう。
クールシェアは、東日本大震災直後の多摩美術大学のゼミで、「東京に居ながらにして何ができるか?」という問いを投げかけたところ生みだされたアイデアです。当初は計画停電の回避が目的でしたが、地元の商店街や企業の協力を得てモデル展開することで、現在の流れの基本ができあがりました。その後は、デザイナーやクリエーターによるCSR活動として展開しています。2012年度には環境省の施策にも取り入れられたことで、活動が全国に拡がりました。
そもそもは地域での取り組みとして始まったクールシェア・ウォームシェアなので、全国展開になっても市区町村レベルでの取り組みが活発です。いち早くクールシェアに取り組んだ埼玉県熊谷市は「日本青年会議所アワードジャパン2012グランプリ」を受賞しました。岩手県紫波郡矢巾町では、町の職員有志によるユニークなウォームシェアの取り組みを推進しています。
「省エネ」というと、何でも節約しなければという誤解、そしてちょっと暗いイメージがあります。クールシェア・ウォームシェアは、「楽しくなければ参加しないね、」という気づきから、皆で楽しみながら危機を乗り越え、エネルギーシフトを推進することを提案します。
お近くにある、クールシェアやウォームシェアに適した場所は、「シェアマップ」を使うことで、パソコンやスマートフォンでお手軽に検索することができます。
シェアマップへの登録は無料で、場所のオーナーによる登録のほか、利用者が推薦して登録することもできます。登録の方法、規定などについてはこちらをご覧下さい。
それぞれの地域での取り組みで生み出されたクールシェア、ウォームシェアのノウハウをシェアマップで共有します。そして、次のステップとしては、地域間の連携によるクールシェア、ウォームシェアの展開を目指したいと考えています。
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