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2014.09.10

第37回全長420キロに及ぶサイクリングロードを持つ先進自転車都市:ドイツ、フライブルグ市

 夏の厳しい暑さが一段落して、涼しい風の気配を感じると、爽やかな空気の中、自転車に乗って走りたくなりませんか。そんな時に嬉しい自転車専用のサイクリングロードを市内全域に整備しているドイツのフライブルグ市。そこでは、先進的なエコ・モビリティ(移動)への取り組みが行われています。

 フライブルグ市(人口約22万人、面積150㎞2)はドイツ南西部に位置し、西にライン河、東にシュヴァルツヴァルト(黒い森)を抱える自然豊かな都市です。今でこそ環境首都として名高いフライブルグ市ですが、60年代にはマイカーの増大により市内中心部では交通渋滞や騒音、また大気汚染や酸性雨による樹木の枯死などが深刻化し、70年代には近郊での原発計画への反対運動が起こるなど、様々な環境問題に悩まされていました。さまざまな環境への取り組みはこれらを背景に始まったのです。

 「環境首都フライブルク」とよく紹介されるのは、ドイツで1989~1998年にかけて開催された「自然・環境保護の連邦首都」を選出するコンテストに、1992年に最高点を獲得し、「環境首都」として表彰されたことに由来しています。その後20年以上が経った今でも続くフライブルグ市の挑戦を紹介します。

自転車都市を目指して

 自動車による交通渋滞や二酸化炭素排出、騒音の問題を解決する手法として、フライブルグ市は早くから自転車に着目し、70年代には30キロしかなかった自転車専用路を、全長420キロにまで延伸してきました。そしてそれらのサイクリングロードをネットワーク化して結ぶことで、目的地まで早く到着できるようにデザインし、さらに、市内全域で9,000台分の駐輪場(市の中心部に5,000台分)を確保するなど、市民の自転車利用を奨励する各種取り組みが実施されました。また、道路脇の緑化に取り組むなど、さらに気持ちよく走行できる取り組みも行われています。

 その一方で、市民が自動車利用を控えたくなる施策も行われています。例えば、市の中心部への自動車乗り入れ規制、住宅街に設けられた自動車制限速度30㎞ゾーン、また、フライブルグをはじめドイツ各地で導入されている「環境ゾーン」規制。これは一定の排ガス基準を満たさない自動車の市街地への進入を規制するものですが、フライブルグ市では2010年から施行されています。

 このような取り組みの結果、フライブルグは現在毎日35,000人もの人々が、市の中心部に自転車で移動する「自転車都市」となっています。これらの人々が自動車で移動したことを考えれば、CO2排出量や騒音、交通渋滞など、どれほど多くの問題が自転車によって緩和されているかが想像できます。

快適な自転車専用道

快適な自転車専用道

快適な自転車専用道
フライブルグ市HP: http://www.freiburg.de/pb/,Lde/205243_227560_286744_231524_231552.html

フライブルグ市の「サイクリング計画2020」

「サイクリング計画2020」の内容は市のHPで詳細に説明されている

「サイクリング計画2020」の内容は市のHPで詳細に説明されている
http://www.freiburg.de/pb/,Lde/231552.html

 このようにすでに自転車先進都市であるフライブルグですが、2011年には「Cycling Concept 2020」という新たな計画を策定しました。この計画の目指すところは2つ。まずは、2020年までに市内の各種移動手段に占める自転車移動の割合を30%以上にすること。(自動車による移動が予定通り2020年に12%以下にまで減少すれば、2050年には、フライブルグ市は気候ニュートラル――温室効果ガスの排出を削減したりオフセットすることで、限りなくゼロにすること――を達成すると言われています。)そして二番目の目標は、安全性。自転車事故を減らすことです。

 このために以下のような施策が計画には盛り込まれています。
 ・快適性:サイクリングロードの更なる延伸、各種標識の設置。また路面の改善や冬場の除雪や屋根付き駐輪場の整備により、冬場の走行快適性を高める。新たに専用道を設ける際には、土壌や生態系など自然環境にも配慮する。
 ・安全性:より良いサイクリングロードや標識の設置により、自転車の年間事故数を半減する。

優先ルートの決定

工事中の自転車専用道路「優先ルート」

工事中の自転車専用道路「優先ルート」
フライブルグ市HP:
http://www.freiburg.de/pb/,Lde/656795.html

 「サイクリング計画2020」のなかの特筆すべき施策の一つが、建設予定の自転車専用道路を、優先順位の高い順から3種類(優先ルート、一次ルート、二次ルート)に分類して整備する取り組みです。

 今後建設される予定の自転車専用道路はすべて上記のいずれかに分類されます。その判断基準は、場所、周辺にある重要施設(大学、病院、企業、商業等)、自動車道との位置の関係性、自動車専用道ネットワークの中の位置、近隣町村との近接性などで、「優先ルート」と判断された場合は、資源が集中的に投入され、質の高い道路(道路幅3メートル、上質の路面等)が建設されます。

 現在13ルートが優先ルートと決まっており、パイロット事業として、3か所で工事が行われています。これまでは目的地に到達するのに、大きく迂回しなければならなかった場所に自転車道路を設けて、自動車よりも早く快適に到着できることを目指すなど、優先ルートへの期待が高まっています。

その他の取り組み

サイクリスト数と削減したCO2排出量が表示されている

サイクリスト数と削減したCO2排出量が表示されている
フライブルグ市HP: http://www.freiburg.de/pb/,Lde/336245.html

 フライブルグ市ではその他にも、以下のようなきめ細かな取り組みが行われて、人々の自転車走行をより快適、安全にすることを目指しています。

  • 安全性確保のために、一方通行の自動車専用道を増やす。
  • 道路沿いに、自転車事故の際の緊急通報装置を設置する。
  • 利用率の高い自転車道に、利用者数と、CO2排出削減量のデータパネルを設置して、人々の環境意識を醸成する。
  • 電気自転車の可能性を検証する。
  • 自転車の電子登録簿を整備する。
  • パークアンドライドよりも、「バイクアンドライド」を奨励する。  

    *都心部:の交通量を減らす方法として、パークアンドライド (park and ride)が有名です。それは、都心部の中まで車で乗り入れる代わりに、自宅から自家用車で最寄りの公共交通機関の駅まで行き、そこに車を駐車させた後、その公共交通機関を利用して都心の目的地まで向かうシステムをいいます。それが、ここではバイクアンドライド(bike and ride)、つまり、自宅から車ではなく「自転車」で、公共交通機関の駅まで行き、そこから公共交通機関を使って都心部に向かうことを指します。

  • 駐輪場を明記した自転車地図の製作。
  •  市の中心部の自転車道と駐輪場の地図

    市の中心部の自転車道と駐輪場の地図
    フライブルグ市HP: http://www.freiburg.de/pb/,Lde/231524.html

    以上、フライブルグ市の取り組みを概観してきましたが、自転車は大気汚染や温暖化、騒音、交通渋滞などの問題を解決するだけではなく、人々をより健康にし、人々の出会いを増やし、まちへの愛着を醸成する働きもあります。まちの活性化そのものにつながる移動手段として、自転車はどの都市においても今後ますます重要性が増してくるでしょう。 (終)


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