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2014.11.11

第39回高架貨物鉄道の廃線を公園化した「ハイライン」:アメリカ、ニューヨーク市

人口減少や少子化等に伴い、学校や公民館・図書館など、廃校等に追い込まれる施設の利活用に頭を悩ます自治体が増えています。その解決の一つの糸口として、今回の記事では、「ハイライン」――廃線になって放置されていた高架貨物鉄道を空中公園化したニューヨーク市でのユニークな取り組み――を紹介します。一度は取り壊しの決まっていた廃線が、多くの人々が訪れ楽しむ場所として蘇り、さらに、大都会のオアシスとして多種多様な植栽を提供し、地域の人々が自然を身近に感じ環境意識を育むという、まったく新たな役割を持った場所として生まれ変わっています。

1.ハイラインの位置と魅力

<位置>

ニューヨーク市マンハッタンの西側のガンズヴォートストリートから34丁目まで。2005年に第一期工事が完成オープンしたのを皮切りに、2011年に第二期、今年2014年9月に最後の第三期工事が完成して、待ちに待たれた全線(全長約2.3km)がオープンしています。

<眺望>

地上9メートル(建物のほぼ3階)の高さから望むハドソン川やマンハッタンのスカイライン、さらに様々な建物の間を縫って建設されているハイラインは、大都会ならではの景色を眺めながら、ゆったりと緑の中を散策する楽しさを教えてくれます。

ハドソンリバーを見ながら散歩

ハドソンリバーを見ながら散歩

高層ビルのなかを縫うように通るハイライン

高層ビルのなかを縫うように通るハイライン


<イべント>

多くの人々をひきつけるのは、眺望だけではありません。一年を通じて企画されている実に様々な参加型イベントも楽しみになっています。チャリティの食事会あり、ファッションショーあり、ヨガレッスンから音楽会、トークショー、ハロウィンイベント、ウォーキングツアーと、子どもから若者、大人まで、あらゆる世代が、ハイラインを自分の居場所として楽しめるよう工夫されています。

スープの日イベント、ファッションショー

スープの日イベント、ファッションショー

スープの日イベント、ファッションショー

ヨガクラス

コンサート

ヨガクラス、コンサート

<植栽>

ハイラインはそもそもが「公園」です。植栽設計は特に重視されました。線路が廃線となって放置されたままになっていた25年の間に生い茂った自生植物はなるべくそのまま残し、さらに、著名な造園家に依頼して、美しい緑の景観を設計してもらっています。一年を通じて数百種の美しい花々を咲かせ人々を飽きさせない植栽は、専門のガーデナーと多くのボランティアの献身的な努力によって維持されています。また、草木の紹介にも力を注ぎ、フレンズ・オブ・ザ・ハイラインの公式サイトでは、毎週Plant of the Week (今週の植物)というブログを発表し、写真と共に、ハイライン内の植物を紹介するほか、蜂や鳥などの生物の働きも丁寧にブログで解説します。

緑の遊歩道と咲き乱れる花々
緑の遊歩道と咲き乱れる花々

緑の遊歩道と咲き乱れる花々


植栽を守るガーデナー
植栽を守るガーデナーと多くのボランティアたち

植栽を守る多くのボランティアたち


<環境配慮>

ハイラインの豊かな緑は、世界一長い緑の屋根(グリーンルーフ)として、一般的なグリーンルーフと同様の環境効果を街にもたらしています。雨水の流出を最大80%まで抑えることができ、道路や建物のコンクリート面による照り返し等からの「ヒートアイランド」現象を緩和し、さらに、日蔭を作り、鳥や虫の生息地を確保し、酸素を供給します。また植栽を支える土壌は、雨水の排水が適切になされると同時に、植物への水やりを節約できるよう、保水効果もある複数の層で作られています(平均45センチの深さの表土、その下に粗い粘土層、次いで排水はできても土壌が流出しないよう繊維製のフィルターが敷かれ、さらにその下に保水効果があるよう砂利を敷き詰めたマットが置かれている)。そして何よりも、身近な自然に触れる機会が地域住民の環境意識を高めています。

緑の屋根としてのハイライン

緑の屋根としてのハイライン

2.ハイラインの成り立ちと運営方法

<成り立ち>

今や年間数百万人が訪れるハイラインの保存活動は、ハイライン取り壊し説明会に出席した二人の近隣住民、ジョシュア・デービッドとロバート・ハモンドが、「ハイラインを残したい」と考えたことによって始まりました。1999年、ハイラインの保存と公共空間としての活用を推進するためのNPO、フレンズ・オブ・ザ・ハイラインが二人によって設立されています。当時のジュリアーニ市長がすでに撤去を決定していたことから、それを覆すことは容易なことではなかったと考えらましたが、二人の地道な活動に少しずつコミュニティの支援が集まります。さらに二人はハイラインの事業化は経済的にも決して不可能ではないという研究結果を発表し、ハイラインの設計コンペを呼びかけます。その後2004年に環境派で保存を推進するブルームバーク市長になると、事態は急転。ニューヨーク市は公園化の予算をつけ、フレンズ・オブ・ザ・ハイラインと協働でハイラインの設計チームのメンバーを選出、事業に着手、2005年に市はハイラインを鉄道会社CSXから買い取ります。それまでフレンズ・オブ・ザ・ハイラインが地道な寄付集めや広報活動を進めてきたことが実を結び、著名な俳優や投資家からも大口の寄付を得て、たった二人の青年の始めた活動が2006年、遂に動き始めます。ハイライン公園化の工事が始まったのです。

二人の創設者二人の創設者


<運営方法>

現在、ハイラインの所有者はニューヨーク市、所管は市の公園管理局です。運営責任はNPO団体、フレンズ・オブ・ザ・ハイラインにあり、当初2人だったこの団体も、今では有給スタッフが80名余。公園の建設費用は市が負担するものの、その他の運営コストはほぼすべてフレンズ・オブ・ザ・ハイラインの集める寄付(企業や個人)や事業収入(ツアー、イベント、グッズ販売、場所の時間貸しなど)によって賄われています。

<住民ボランティアの活躍>

草刈に集まったボランティアたち

草刈に集まったボランティアたち

ハイラインの運営に欠かせないのが住民ボランティアの存在です。公園の維持管理、案内、イベントのサポート等に数多くのボランティアが参加します。団体のHP上やSNSで告知し、必要な数のボランティを集めることに成功しています。また住民は、ボランティアとして参加することで、公園の運営に関わっているという意識が生まれ、それがハイラインの利用をさらに活発化させるという好循環も生み出しているようです。

ハイラインは、様々な年代の地域住民が心から活用したいと思う場所作りさえできれば、廃止、取壊しと考えられているものも、生き生きとした場所として蘇る可能性のあることを教えてくれます。まったく新しい視点で既存施設を捉え直すことから、老朽化や不要になった公共施設、空き家や空き店舗などの空間を、形を変えた「ハイライン」にするプロセスが始まるのかもしれません。

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