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2017.03.03

第66回ESDでつくる地域社会の未来

藤本亜子(ふじもと あこ)

藤本亜子(ふじもと あこ)

一般社団法人 環境パートナーシップ会議 プロデュース部 コーディネーター(地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)勤務)
岡山市出身。関西学院大学理工学部生命科学科勤務後、2012-2014年JICA青年海外協力隊(環境教育)として2年間、中米コスタリカで持続可能な開発のための教育:ESDに取り組む。2015年より、GEOC勤務。地域の環境団体やNGO、企業、行政等をつなぐこと(パートナーシップ)によって、課題解決に導く新しい力を生み出すことを目的に活動。主に環境省ESD事業担当。青年海外協力隊(環境教育)の研修講師も務める。

 ESDとはEducation for Sustainable Developmentの略で、「持続可能な開発のための教育」と訳されています。大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会の中で、地球が持続していくのは不可能ではないかと、多くの人が不安を持っています。そのような時代の中でESDは、「持続可能な未来や社会づくりのために行動出来る人の育成」を目的として、2005年から世界各国でスタートしました。

ESDが生まれたのはいつ?

「持続可能な開発」のもつ意味

 日本において「開発」は、自然破壊を伴う経済活動に関連して使われることが多く、持続可能な開発という言葉に違和感を生むこともあるようです。しかし、「持続可能な開発」が国際社会の共通目標となった背景には、「環境問題と同時に貧困問題も解決しなければならない」という含意があります。国連開発計画の定義では「持続可能な開発」を、「人々の生活の質的改善を、その生活の支持基盤となっている各生態系の収容能力の限界内で達成すること」と位置づけています。
 2015年9月「国連持続可能開発サミット」で「持続可能な開発目標:SDGs」が採択され、17の目標と169のターゲットが示されました。17の目標は、2016年からの15年間で持続可能な社会をつくるために最も重要な目標として決められ、ESDで目指す「持続可能な社会」の具体的な指標が、よりわかりやすくなりました。

持続可能な開発目標(SDGs)17の目標

持続可能な開発目標(SDGs)17の目標

誰のための「教育」なのか

 ESDは「Education:教育」でありますが、決して学校教育だけで完結するものではありません。
 持続可能な社会をつくるのは次世代の子どもだけではなく、今を生きている全ての人です。ESDは、子どもに限らず多世代が、未来をつくる一員として学びあい、考え、行動する力を育む活動です。実は、ESDは新しい概念ではありません。今までも国内外問わず、各地でESDの取り組みや、ESDの考えを取り入れた学習は様々な形で培われてきました。例えば、学校教育で捉えるESDであれば、地域学習・ふるさと学習・防災教育など、学校と地域が連携した学習活動があります。また、地域社会で捉えるESDであれば、町内会活動や公民館活動など地域活動を通じたつながりや学びの場を挙げることができます。大切なのは、それぞれの学びをそこで終わらせるのではなく、「学校」と「地域社会」の学びが互いに交流して、大人の学びと子どもの育成をつなげることです。このような「有機的なつながり」はESDの重要な考え方の1つです。

子ども達が伝統の藁畑工にチャレンジ(鳥取県)

子ども達が伝統の藁畑工にチャレンジ(鳥取県)

ESDの事例

 岡山県岡山市では、2005年4月に岡山ESD推進協議会を設立し、公民館や学校、市民団体、企業、メディア等多様な主体と連携したESDの取組を進めています。2014年のESDに関するユネスコ世界会議の後、それまでの課題と成果をまとめ、ユースの育成や国内外の良い取組の顕彰などを新たに加えた8つの重点分野からなる「2015-2019岡山ESDプロジェクト基本構想」を策定しました。取り組みの1つ、ESD学生インターンシップ制度は、岡山市が抱える地域課題の解決に取り組むNPOや公民館の取組みに学生が触れながら、様々な関係者の役割を理解し、地域コミュニティにおける実践につなげていくことを目的としています。また、防災、地域福祉、環境などの地域の課題を地域調査やワークショップを通じて学び、地域を良くする人の輪を広げる公民館活動や、学社連携【1】の地域学習も活発です。こういったプロジェクトの推進が認められ、「多様なセクターや関係者が参画したホール・シティー・アプローチが印象的な地域に根ざした取り組みである」と、2016年ユネスコ/日本ESD賞を受賞しました。

2015-2019岡山ESDプロジェクト基本構想

2015-2019岡山ESDプロジェクト基本構想

いま、なぜESDが大切か

 代表的な世界の環境問題「地球温暖化」1つをみても、自然環境だけを守りCO2を吸収する木を植林したとして、解決する問題ではありません。地球温暖化を引き起こすと言われる温室効果ガスの排出は、人間の生産活動に依るものが多く、解決するためには人の意識や生活の中のちょっとした習慣が変化していくことが大切です。また、実社会に起きている数多くの問題は「解のない問題」である場合も多いです。このような、複雑で解のない地域の問題に立ち向かい、時には人々の自己変容が求められることもある中で、異なる経験や専門性をもった人たちが知識や情報を共有しながらお互いに学びあい、協働しながら新しい答えを生み出していくプロセスは、非常に重要であると考えます。また、一見、大きな課題が見えない地域も、小さな持続不可能性は普通に存在します。課題が大きくなる前に、ESDに取り組むことが、持続可能な地域社会の未来をつくるために、今求められていることではないでしょうか。

大人の学びと子どもの育成をつなげるESDのプロセス

大人の学びと子どもの育成をつなげるESDのプロセス
※クリックで拡大表示します

これからのESD

 各地で取り組まれているESDの情報共有や他地域間交流・意見交換などは、今後国内でESDをより充実させるうえで重要だと考えます。2016年に、ESDに関わる多様な主体が、地域での取組を核としつつ、分野横断的に協働・連携してESDを推進するためのハブ機能を担うことを目的として、「ESD活動支援センター」が設立されました。こういった機能を活用していくことも地域のESDを活発にしていくかもしれません。ESDは、各地域で今まで培われてきた学びの場を、「持続可能な社会づくり」という共通の目標でつないでいったり、学びの交流により、さらに地域のつながりや学びを深化させていきます。様々な地域で取り組まれているESDをみていくと、このような途絶えなく続く地域に根差した学びの連動の先にこそ、持続可能な社会があるのではないかと感じています。


注釈

【1】学社連携
学校教育と社会教育がそれぞれ独自の教育機能を発揮し、相互に足りない部分を補完しながら、協力しようとするもの。


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