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2017.08.18

第72回「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成に向けて ──世界につながる地域の取組み

竹本 和彦(たけもと かずひこ)

竹本 和彦(たけもと かずひこ)

 国連大学サステイナビリティ高等研究所 所長、(一社)海外環境協力センター 理事長。
 1974年環境庁(当時)入庁。環境管理局長や地球環境審議官として気候変動、生物多様性、越境大気汚染といった地球環境問題に関する国家戦略など、持続可能な社会実現に向けた政策立案に取り組む。2014年1月より現職。
 OECD環境政策委員会副議長、第18回国連持続可能開発委員会(CSD18)共同議長(2010年)、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD /COP10)の議長代行(2010年)などを歴任。
 現在、東京大学客員教授(IR3S)及びSDSN Japan事務局長を兼務。工学博士(東京大学)。

1. はじめに

 「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals: SDGs)は、2015年9月に国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」において、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核として決定されたものです。本目標は、経済・社会・環境の三側面を統合していくことを目指しており、17のゴールから構成されています(図1参照)。これらゴールの中には、気候変動や生物多様性、エネルギー及び安全な水の確保など環境保全に密接に関連した目標も含まれており、貧困や健康問題、平和など社会全体にかかわる課題の解決とも合わせて取り組むべきものとして位置付けられています。
 現在国際社会は、2030年における世界の持続可能な社会実現を目指し、その達成に向けた取組みに着手しています。
 我が国においても、2016年5月に内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚で構成される「SDGs推進本部」が設置され、同年12月「SDGs実施指針」が決定されました。現在全ての省庁の参加の下、SDGs達成に向けた行動が開始されています。
 本稿においては、最近様々な局面において取り上げられているSDGsについて、その策定の背景と地域における環境保全の取組みを推進していく上での意義について解説します。

【図1】持続可能な開発目標(SDGs)

【図1】持続可能な開発目標(SDGs)

2. SDGs策定の背景

 持続可能な開発(Sustainable Development)に関する議論は、1972年ストックホルムにおいて開催された「国連地球人間環境会議」に端を発するといえます。当時は環境と開発が相対峙するものとして、先進国と途上国との典型的な対立構造の中で激しい議論が展開されました。その後「環境と開発に関する特別委員会」(いわゆる「ブルントラント委員会」)【1】が設立され、世界の最先端の叡智を集約した成果として「ブルントラント委員会報告書」(1987年)がまとめられましたが、この中で持続可能な開発についての定義付けが行われました。
 1992年には「リオ・サミット」(「地球サミット」とも呼ばれています)が開催され、国際社会の中でも開発と環境に関する議論が成熟してきました。2012年の「国連環境開発会議」(いわゆる「リオ+20」)では、これまでの途上国の開発に焦点を当てた「ミレニアム開発目標」(MDGs)(2001年-2015年)を引き継ぐ新たな目標としてSDGs策定へのプロセスが合意されました。その後2年半の交渉を経て、2015年の「国連サミット」においてSDGsとして結論付けられました。
 このSDGsの策定に当たっては、次の3つの特筆すべき点があります。すなわち、[1]MDGsが積み残した課題について引き続き対処していくこと、[2]気候変動や生物多様性などに見られるように配慮を欠いた人間活動によって地球環境の受容能力が限界に到達又は近づいてきていることへの危機感が共有されたこと、そして[3]世界を変革していくには社会を構成する全ての主体(ステークホルダー)の積極的参画が不可欠であり、目標設定段階からこれら幅広いステークホルダーを巻き込んだことが注目されています(図2参照)。

【図2】SDGs策定の背景

【図2】SDGs策定の背景

【1】 環境と開発に関する特別委員会(ブルントラント委員会)
 委員長を務めたノルウェーのブルントラント元首相に因んで命名。


3. 都市とSDGs

 東京のような大都市は、エネルギーや情報、交通、社会、経済など様々なシステムから構成されており、システム間の連携や統合が強く求められている空間であることから、都市の直面する多様な課題への解決に当たっては、SDGs全体を視野に入れた統合的なアプローチが有益です。またSDGsにおいても、ゴール11(持続可能な都市)として都市に特化した目標が設定されています。
 東京都や都内の各市区町村は、市民生活に最も密着した行政組織であり、地域の歴史、文化や社会経済などの実態を踏まえた現実的で実効性の高い政策を実施していく立場にあり、国の各省庁と地域住民や産業界の間に立ち、多様な主体との連携を最大限活用することにより、グローバルとローカルな課題の双方に取り組む上で最適な位置にあるといえます。こうしたことを受けて、政府(内閣府)においても、SDGs達成の取組みを地域行政にどのように反映していくべきかについての検討を開始しています。また国際化を目指す自治体や地域の企業は、SDGsが「世界の共通言語」としての橋渡し役を果たし得ることから、地域におけるSDGs達成への取組みが世界の持続可能な社会実現に向け、大いに貢献できることが期待されています。(図3参照)

【図3】世界につながる地域の取組み

【図3】世界につながる地域の取組み

まとめ

 「持続可能な開発目標」(SDGs)達成に向けた取組みは、その端緒に着いたばかりですが、私たちの身近な課題解決に向けた活動の全ては、SDGsの目標に何らかの形でつながっています。皆様におかれては今後SDGsに関する報道などに接する機会もあるかと思われますが、その際には地域の取組みがSDGsというキーワードを通して世界に繋がっていることを認識いただき、日々の行動につなげていただければ幸いです。


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