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第47回「花を植え・管理しながら、街をつくり・育てていくことにかかわるきっかけを得る ~ガーデニングによる地域コミュニティづくり(GREEN UP&ヒルズガーデニングクラブ)」

空に希望を。地上にみどりを。地下に喜びを。 ~森ビルのヴァーティカル・ガーデンシティ構想

六本木ヒルズの全景
六本木ヒルズの全景

 地上部54階、高さ238メートルの六本木ヒルズ森タワー。2003年に開業した六本木ヒルズの中核施設として、東京のランドマークになっているこのタワーだけが六本木ヒルズと勘違いしている人もいるかもしれないが、実は総敷地面積12haのなかに14棟の建物が立ち並ぶエリア全体を総称するのが「六本木ヒルズ」。もともと木造家屋が密集していた六本木六丁目エリアを再開発して生まれ変わった“街”こそが、六本木ヒルズだ。
 一方、六本木ヒルズの開業に先立つ17年前の1986年に、民間企業による初めての大規模再開発として竣工したのが、赤坂一丁目から六本木一丁目にまたがって位置する「アークヒルズ」だ。こちらも、住宅密集地の再開発によって、高層のオフィスビルから集合住宅、ホテル、コンサートホールなど数多くの施設が建ち並ぶ“街”として誕生している。
 平面的に建ち並ぶ戸建の家屋を縦に積み上げていくことで高層ビルに集約できれば、その分の空き地ができる。そのスペースにきちんと道路をつくって、広場や緑地を整備しようというのが、森ビルのめざす「ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)」構想。高層化によって空中に階を積み上げ、空いた地上のスペースには緑を植える。地震に強い地下も有効活用していくことで、地表面はより緑豊かな環境を生み出すことができる。六本木ヒルズもアークヒルズもそんなコンセプトに基づいて設計・施工され、育まれてきた“街”なのだ。

 こうしてつくりあげられた街の中の緑地空間である屋上庭園や街路沿いの花壇を舞台に、多くの人たちの参加を得ながら展開しているのが、今回紹介する「GREEN UP」および「ヒルズガーデニングクラブ」。公共空間における緑地整備に参加しながら、関わる人たちのコミュニティ活動を作り出していこうというのがそのめざすところだ。

六本木ヒルズの在勤・在住者を対象としたコミュニティ活動 ~GREEN UP

 「今朝は皆さんに、チューリップの苗を植えてもらいます。花壇ごとにポットをいくつか置いたので、全体のバランスを見ながら植える場所を決めて、穴をあけてください。そこに、一つ一つ愛情を込めて花苗を植えこんでいきます! 坂の上の方から順番に、坂を下って植えていきましょう。植える本数はお好みで。時間のある限り植えてください。植えるときは、一列に並べるよりも、花壇の幅を生かして多少でっぱりやへこみがあるようにした方が立体感が出てきます。配置によって皆さんのセンスが問われますからね!」
 2月のとある平日、肌寒い早朝の六本木けやき坂通り。通勤前の一仕事に汗しようと集まってきた10数名のメンバーは、皆さんすべて、六本木ヒルズの在勤・在住者。すでに何度も参加している常連さんたちばかりで、皆、顔見知り。作業の合間にも話が弾む。

六本木けやき坂通りの花壇にチューリップの球根苗を植えるGREEN UPの参加者たち。

六本木けやき坂通りの花壇にチューリップの球根苗を植えるGREEN UPの参加者たち。

六本木けやき坂通りの花壇にチューリップの球根苗を植えるGREEN UPの参加者たち。


作業を終えて、参加者皆で集合写真。表情からも 楽しげな雰囲気が伝わってくる。
作業を終えて、参加者皆で集合写真。表情からも 楽しげな雰囲気が伝わってくる。

 参加者に声をかけるのは、「お花がかり有限責任事業組合」代表の竹谷仁志さん。2009年4月から六本木けやき坂通りの花壇の植栽設計と施工、メンテナンスを請け負っている。花壇に植える花は、主に東京近郊で生産される地産地消の種苗を使って、四季折々の花を入れ替えている。その植え付けやメンテナンス作業の一部を、六本木ヒルズ在勤・在住の人たちといっしょに行うのが、2012年4月に開始した「GREEN UP」だ。
 はじめたきっかけは、六本木ヒルズのコンセプトの一つのキーワードに当たる“オープンマインド”実現のための活動をつくることにあった。『六本木ヒルズはオープンマインドな街です』というもの。このオープンマインドを実現する手法の一つに『六本木ヒルズは参加する街です』というのがある。この街に住む人、働いている人のすべての人たちに六本木ヒルズのまちづくりへ参加してほしいというもの。ただ、そうはいっても、住民、オフィスワーカー、店舗スタッフの人たちからは、どうやってまちづくりに参加すればよいのかわからないという声も多かった。参加の仕方の一つの提案となったのが、GREEN UPだった。活動を通じて、六本木ヒルズのことを好きになってもらいたい、街に愛着を持ってもらいたいという思いがあった。花壇づくりはいわば手段で、目的は作業を通じた住民・勤労者たちの地域コミュニティをつくっていくことにあった。
 森ビルのコミュニティ活動の企画運営を担当するタウンマネジメント事業部の秋葉千恵さんは、GREEN UPの効果について次のように説明する。
 「花壇のメンテナンス作業は、知識がなくても割と気軽に参加できます。それに何よりも街路沿いの花壇ですから、ご自身で作業に参加していただいた後、毎日のように目にすることになります。メンテナンスで花がら摘み【1】や剪定をされた後、花がらが花壇に残っているのが気になると言って、ちょくちょく見に来てくれださるようになったり、花壇のゴミを拾ってくださる方がいたりします。それまで花壇があることさえ気づいていなかった方たちが、この活動を通じて“私の花壇”という感覚を持っていただけるようになっていて、それは大きな効果の一つだなと思っています」

 毎回の作業は、概ね月に1~2度、花の状態や管理業者のスケジュールの都合などを調整して不定期に開催している。通知方法は、一度参加してもらった人プラス希望のあった人にメールを配信している。それでも毎回、友達や知り合いを誘い合わせて数人ずつ新しい人が参加してきているような状況だ。

作業の前後に飛び交う挨拶が、心地よい一日のスタートをつくり出す

作業後、道端でのコーヒータイム。スタバの出張コーヒーサービスは、森ビルの提供。コーヒー片手に弾むおしゃべりを楽しみにしている人も少なくない。
作業後、道端でのコーヒータイム。スタバの出張コーヒーサービスは、森ビルの提供。コーヒー片手に弾むおしゃべりを楽しみにしている人も少なくない。

 取材に伺った日の作業でちょうど25回目となったGREEN UP。普段なら出会うことも接することのないような人たち同士のコミュニケーションが生まれることで、新しいつながりができてきているという。
 「これまで行ったことがなかった飲食店に行きはじめた方がいたり、プライベートでも仲良くしている方もいらっしゃいます。中にはお仕事の相談をするような仲間ができたという方もいらっしゃって、いろんな交流が生まれています。住民の方の中には、活動日の朝にお芋を蒸かして持ってきて皆さんに振る舞ってくださる方もいて、本当に人の肌感がすごく伝わるようなコミュニケーションが育ってきてくれています」
 今はそんなGREEN UPならではのコミュニティができているが、開始当初は、皆知らない者同士だったので、花壇の作業を始める前に2人でペアを作っての自己紹介ゲームの時間を設けた。それぞれ1分くらいで名前・所属と、「最近見たおもしろい映画」などのお題を設定して、自然と話が始まるような雰囲気づくりをしていたが、今はもう全然必要ないと笑う秋葉さんたちだ。
 毎回の作業の終わりには、エリア内に店舗を開くスターバックスの出張コーヒーサービスを頼んでのコーヒータイム。作業にはあまり参加できませんがと最後の15分くらいに何とか間に合わせて、コーヒーを飲みながらの談笑を楽しむ人もいる。そんなふうにこのコーヒータイムを楽しみにしてくれるのも歓迎だ。仕事の時間に合わせて途中で帰っていったり、途中から参加してきたりする人も少なくはないが、そんな人たちに向けて自然と「おはよう!」「いってらっしゃい」と挨拶が飛び交う。こうした声かけによって、一日が気分よく始まって、「元気に過ごせています!」と言ってくれる人もいるという。


注釈

【1】花がら摘み
「花がら」とは、花が咲き終わっても散らずに残っている枯れた花のこと。見た目がよくないだけでなく、病気などの原因となるため、花の根元のすぐ下で摘み取るかハサミで切り取る。

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