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第61回「公園を訪れ、公園での活動に参加する人たちを増やすために ~都立野山北・六道山公園(のやまきた・ろくどうやまこうえん)ボランティアの取り組み(特定非営利活動法人NPO birth)」

狭山丘陵に広がる都立公園最大の公園

 新青梅街道を西に下って武蔵村山市に入ると、北側の埼玉県側にこんもりとした緑が広がる。ここ都立野山北・六道山公園は武蔵村山市から瑞穂町にかけて広がる、都立公園として最大の広大な里山公園。未整備の公園予定地も含めた計画面積は260haで、うち200haが開園している。
 街道から案内看板に従って小さな路地に入っていく。石の鳥居がでんと構える神社の脇の細い道を分け入っていくと、森に囲まれた草原が目の前に開けて、辺りの雰囲気は一変する。奥の方に建つ茅葺屋根の古民家風家屋が、里山民家だ。奥には田んぼが何枚かつくられ、さらに奥には雑木林が広がる。

野山北・六道山公園に広がる里山風景。

野山北・六道山公園に広がる里山風景。

 昭和63年に開設した都立野山北・六道山公園は、平成18年4月から指定管理者制度を導入している。制度開始当初から、「西武・狭山丘陵パートナーズ」が指定管理者として公園の管理運営を行っている。5年ごとの更新で、平成23年度からは第2期目がスタートしている。この西武・狭山丘陵パートナーズは、西武造園株式会社、西武緑化管理株式会社、特定非営利活動法人地域自然情報ネットワーク、特定非営利活動法人NPO birthの4つの団体により構成される事業体だ。それぞれの得意分野を生かした役割分担によって、よりよい公園の管理運営をめざす。なかでも、公園ボランティアや利用者と直接かかわる仕事に携わるのが、NPO birthだ。フォレストマネジャーの松井一郎さんと、ボランティア・コーディネーターの礒脇桃子さんに話を聞いた。

ボランティアが整備をする森

 公園内に広がる森は、ボランティアの手で整備されている。ここ、都立野山北・六道山公園では、活発なボランティア活動が特徴の一つになっている。
 雑木林や竹林の手入れから、田んぼ・畑での農作業、ワラや竹、草などを使った工芸品づくり、かつての里山の伝統行事や伝統食、昔遊び、障子(しょうじ)貼りや煤払(すすはら)いなどの手入れ作業、また自然観察会や生物調査など、さまざまなボランティア活動が活発に取り組まれている。

 雑木林の管理作業に当たっては、都立公園という公共の場における活動として、保全とともに利用を意識した作業方針を取っている。
 「本当は今の時期、下草を全部刈りたいんです。春から夏にかけてのこの時期が一年でもっとも光の当たる季節ですから、草も盛んに光合成をして、地下茎にせっせと栄養を貯めていきます。その時期に草を刈ることで、草の生長や栄養の蓄積を抑止することができます。ですが、ここは都立公園なので、地面一面に花を咲かせる光景を見て、楽しんでいただくことも大事にしています。花が咲けば実が落ちますから、実が落ちて芽吹き出した草を秋に刈るようにしています」
 そう話すのは、NPO birthのフォレストマネジャーの松井一郎さん。
 今の時代、かつての里山という、人間が生活や農業のために利用していた自然としての雑木林や田んぼ──いわば野良──は、その役割を終えてしまっている。薪や炭などに代わって電気やガスなどをエネルギー源として使って、明るく便利で清潔な生活に移行している。その時代に合った雑木林の管理が必要になるわけで、ここでは草花をみせることも大切な機能の一つとして位置付けている。

春の野に咲く草花。ヒトリシズカの白い花。

春の野に咲く草花。カタクリの群生。

春の野に咲く草花。チゴユリの可憐な花。

春の野に咲く草花。左から、ヒトリシズカの白い花、カタクリの群生、チゴユリの可憐な花。

 ボランティア作業の中で、もう一つ重視しているのが安全面の確保。
 「都という公共の施設ですから、絶対に安全でなければいけません。春の4月、夏前の6月、それから秋の11月に、安全管理講習を毎年やっています。春は、初めてボランティアに来る人たちや継続の人たちそれぞれに、その年一年間の雑木林管理を含むボランティア活動で、安全に対して気を付けるべきことをお話しします。夏は夏の安全対策、一番は熱中症と、ハチなどの危険動植物について、そして冬には木を伐りますから、木を伐り倒す上での注意事項や刃物の取り扱い方などについての講習会を実施しています。何年も継続しているボランティアさんも、毎年毎年繰り返していって、体で覚えていくことが大事です」

 伐倒も含めて、ここでは動力付きの工具は一切使っていない。チェーンソーはもちろん、刈り払い機も使わない。すべて、ノコギリやナタ、鎌、剪定バサミといった手道具を使った作業に徹している。これらの道具は、すべて公園側が用意して、貸与する。登録ボランティアは、それぞれ番号で管理された自分専用の道具を使っていて、作業後には毎回きちんと手入れをして決められた場所に保管している。
 「木の生長は数十年の年月がかかるでしょう。一方、人間がボランティアとして関われる期間は、長くてせいぜい10年です。ですから、作業を担う人間の側が世代をつないでいくことが大事なんです。木の生長を見ると同時に、技術の継承をして、担い手の引継ぎをしていくわけなの。私はね、子育て世代にこそ、子どもを連れて森に入ってきてほしいと思うのです」

キンラン・ギンラン【1】の分布の変化(GISデータより)。計画的な管理作業によって、キンラン・ギンランの分布は、平成17年度以前に比べて、平成21年には手を入れている箇所(黄緑色部分)で着実に増えていることがわかる。
キンラン・ギンラン【1】の分布の変化(GISデータより)。計画的な管理作業によって、キンラン・ギンランの分布は、平成17年度以前に比べて、平成21年には手を入れている箇所(黄緑色部分)で着実に増えていることがわかる。※クリックで拡大表示します

フォレストマネジャーの松井一郎さん。ボランティアからは「先生」と尊称され、信頼を置かれている。
フォレストマネジャーの松井一郎さん。ボランティアからは「先生」と尊称され、信頼を置かれている。

注釈

【1】キンラン・ギンラン
 日本の野生ランの仲間。キンラン属の多年草で、かつては雑木林や里山の林床などで広く見られたが、雑木林の下草刈りがされなくなって生育環境が悪化したことから、絶滅危惧種としてレッドリストに掲載されるようになった。

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