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2017.10.19

第88回「マウンテンバイクを通して自分たちがかかわる地域を大事に残し、未来につなげたい(西多摩マウンテンバイク友の会)」

ボランティア活動のはじまりは、マウンテンバイクで走る場所がなくなるという危機感だった

 マウンテンバイクというのは、1980年代に登場した自転車の形の一つで、山道や荒地を走行するための強度と操作性を備えたものである。オリンピック種目になっているクロスカントリー【2】やワールドカップ世界戦が開催されるダウンヒル【3】などいくつかの種目が競技として行われている。
 友の会のメンバーが好むのはおもにトレールライドといって、丘陵や山道をマウンテンバイクで走り、自然との一体感を楽しむものである。カナダやニュージーランドなど、海外ではレジャーとして定着し、マウンテンバイクが走行できるトレールや専用のコースが整備されているところもある。
 残念ながら日本では、一部の愛好家がマナーを守らず危険な走行をしたり地権者の許可なく道を変えたりして問題になり、バイクや自転車を閉め出す動きにつながっている。
 「ぼくらがボランティア活動をはじめて7、8年になりますが、それまでは自分たちで勝手にやっていた歴史があります。勝手に橋を架けたり水の通り道をつけたり。歩きやすくなるし、よかれと思ってやっていたんです。でも、それはやってはだめだった。どうしてそれに気づいたかというと、せっかくきれいにしたのに、ある日突然、立ち入り禁止になってしまうのです」と中沢さんは自身の体験を話してくださった。
 こうした体験から、マウンテンバイクで走れる場所がなくなってしまうという危機感を抱くようになった中沢さんは、日ごろから親しんでいた狭山丘陵にある都立野山北・六道山公園の管理所におもむき、「マウンテンバイクに何か問題はありせんか? もし問題があれば、解決にむけてなにか協力させてください」と相談したのだという。
 それまではクレームが入っても、行政も土地の管理者も相談する相手が見えていなかったことが問題だった。自身が窓口になることで、地権者や行政の考えをマウンテンバイク利用者に伝え、また、自分たちがやっていきたいことを地域の人に伝えようと考えたのだ。
 野山北・六道山公園でボランティア活動をはじめた中沢さんは、その後マウンテンバイク愛好家を組織して「西多摩マウンテンバイク友の会」を立ち上げ、本格的にボランティア活動を行うことにした。そこには、マウンテンバイクを通して自分たちが関わる地域を大事に残し、未来につなげたいという思いがあった。
 現在、友の会の会員は約270名(2016年総会当時)、昨年のボランティア活動は80回、延べ1000人以上が参加している。
 こうして、ボランティア活動を通して、マウンテンバイカーとして地域の中で顔の見える存在になった友の会は、いまでは菅生地区の里山再生のほか、「郷土の恵みの森構想」の一環としての深沢地区の景観整備、瑞穂町の「みずほきらめき回廊」計画での平地林の整備、羽村草花丘陵自然公園の整備、野山北・六道山公園での外来植物駆除や自転車マナーアップキャンペーン、各種イベントなど活動の輪を広げている。

あきる野市深沢地区の道路整備に参加した西多摩マウンテンバイク友の会のメンバーと、深沢町内会のみなさん

あきる野市深沢地区の道路整備に参加した西多摩マウンテンバイク友の会のメンバーと、深沢町内会のみなさん

道路脇の雑草を刈り取る友の会のメンバー。「マウンテンバイクありきじゃない。この地域の自然が、山が好きだから来ています。それに人の役に立つのはうれしいです」と口をそろえる。

道路脇の雑草を刈り取る友の会のメンバー。「マウンテンバイクありきじゃない。この地域の自然が、山が好きだから来ています。それに人の役に立つのはうれしいです」と口をそろえる。

深沢地区では「山抱きの大カシ」につながる散策路も定期的に整備している。高齢化と人手不足が深刻なこの地域では、友の会のメンバーがかかわることで、散策路が維持できるようになった。

深沢地区では「山抱きの大カシ」につながる散策路も定期的に整備している。高齢化と人手不足が深刻なこの地域では、友の会のメンバーがかかわることで、散策路が維持できるようになった。

あきる野市指定天然記念物「山抱きの大カシ(ウラジロガシ)」。幹まわり約6.5m、高さ約20m。石灰岩の上に大きく根を張っている。

あきる野市指定天然記念物「山抱きの大カシ(ウラジロガシ)」。幹まわり約6.5m、高さ約20m。石灰岩の上に大きく根を張っている。


 さらに、友の会の活動を参考に、奥武蔵、町田、箕面、福岡、鳥取、上越などでも会ができて、地域や山主さんの了解を得てコースを整備し、人をよぶ活動が始まっている。  「海外のこういうフィールドって、例えば、カナダなどではすごくわかりやすくなっているんですね。山の入り口にはマップがあって、『ここはマウンテンバイクでも入れます』、『ここはマウンテンバイクの専用コースです』、『ここは皆でシェアしてください』などコースの利用設定が表示されています。コースの中でも、『ここはむずかしいコースだから気をつけて』などと注意事項があって、明確です。なおかつ、『○月○日に道のごみ拾いをします』、『道のメンテナンスの日は○月○日です』などと作業予定のスケジュールも書いてあるんですよ。これらの活動を地元のショップやメーカーがサポートしているのです。そんな環境を日本でも実現したいですね」  地域の人たちの理解が進み、いつかカナダなどのように専用のトレールとコースを整備して人を呼べるようになればいい、人が来て地域がにぎわうようになればいいと、中沢さんは次の構想をあたためているようだった。

西多摩マウンテンバイク友の会 会長の中沢清さん。「ボランティアで道の整備をするようになると、愛着がわいて自転車の乗り方もていねいになるのか、会員はみんな走りが上手になりました」と話してくださった。

西多摩マウンテンバイク友の会 会長の中沢清さん。「ボランティアで道の整備をするようになると、愛着がわいて自転車の乗り方もていねいになるのか、会員はみんな走りが上手になりました」と話してくださった。

 山のマナーとルールを守ることは絶対の条件である。そのうえでマウンテンバイクをレジャーとして楽しめたらいい。地元の人と関係をつくりながら、マウンテンバイカーが走ることで、山に関心を寄せる人が増えるのはいいことだ。いままではだれもが無関心だった。それが日本の山をこれほど荒らしてしまった原因の一つだろう。友の会の活動が、里山の価値を認めて整備を推し進める方向につながるよう応援したい。

注釈

【2】クロスカントリー
 スキー場などに設けられた専用の周回コースを回って速さを競う種目。
【3】ダウンヒル
 山の上から下までだれが一番速く走れるかを競う種目で、人工の専用コースを使って行う。

関連リンク

  • 西多摩マウンテンバイク友の会:http://nishitama-mtb.jp/外部リンク
  • 活動紹介(第1回)「恵み豊かな森を守り、育む ~森林レンジャーあきる野の活動~」http://all62.jp/ecoreport/01/01.html
  • 活動紹介(第34回)「子どもたちとともに歩んできた20年の月日 ~子どもたち自身の実践活動を手助けする、あきる野市・菅生(すがお)の『自然の学校』の取り組み」: http://all62.jp/ecoreport/34/01.html

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