第13号 生きもの優先の個人宅の庭づくりに学ぶ
エコプラザ西東京(西東京市)

手入れに追われない庭づくり
梅雨入り間近のどんよりとした分厚い雲に覆われた6月7日(日)、生きものが集まる個人宅の庭を見学する講座がエコプラザ西東京主催で行われました。「学ぼう!生きものが集まる庭・ベランダづくり~住宅街のなかの自然共生サイト「O’s Garden」見学会」と題し、市内在住・在勤・在学の中学生以上を対象とし、午前と午後の2部制で8名が参加しました。はじめに、西東京市の南端に位置する向台コミュニティセンターで説明がありました。
見学場所となる「O’s Garden(オーズガーデン)」は、様々な生きものが生息できる空間として、国が認定した西東京市内にある個人の庭です。家主の小田部家信さん(62)は1980年頃からビオトープづくりをはじめ、2021年から本格的に「野生生物にやさしい庭づくり」を試み、絶滅危惧種が40年以上継続繫殖している庭としてテレビ番組や雑誌などのメディアに取り上げられています。

小田部さんが目指すのは、“好き”な植物に囲まれた手入れに追われない庭づくりです。成長が遅く、剪定が楽な種類の植物を選び、加えて、庭の管理を野生生物にゆだねます。例えば、繁殖させているオンブバッタは、地表では絶滅危惧種のエサになり、葉や花の食害となるものはオオカマキリに食べてもらい、増えすぎたナミアゲハの幼虫は、巣箱を使用しているシジュウカラに食べてもらうといった食物連鎖です。きっかけは人間ではありますが、自然と小さな生態系が機能し始め、ある生きものは別の生きものを目的に訪問するようになります。
生物多様性を豊かにするために、蝶が集まる別名バタフライブッシュとも呼ばれる「ブッドレア」を植えたり、鳥のための巣箱やエサ台を設置するなど、昆虫や野鳥を呼び寄せる仕掛けを施しています。


池の管理も「ほったらかし池」と呼び、水生動植物の力を借りて水質が悪化しない仕組みを作り出しています。例えば、落ち葉対策にヨコエビ、緑藻類対策にヒメタニシ、アオミドロ対策にミナミヌマエビ、富栄養化対策にアサザやセキショウモなど、水中環境を良好にする動植物を池のメンバーに据えています。
生きものを集める方法として比較的取り入れやすいのが、スイレン鉢と植物のセットです。水があれば、鳥、トンボ、アメンボ、蜜が豊富な花があれば、蝶、蜂が訪れます。狭い場所でも、生きものが求めている要素を配置すると多様性がぐっと高まります。

いざ向台コミュニティセンターから徒歩でO’s Garden(オーズガーデン)に向かうと、除草剤も農薬も使っていないのに、葉の虫食いや雑草の無秩序な繁茂もない美しい庭に、参加者一同、興味津々でした。庭の面積は約60坪ながら、6つの池や南国生まれの植栽が点在し、参加者は疑問があると小田部さんに質問を投げかけていました。

原点はカエル
O’s Garden(オーズガーデン)は、小田部さんの小学生の頃からの生きもの好きが高じて、生物多様性に富んだ庭となりました。1980年頃に90リットルの池を購入し、弟とカエルが産卵できる環境を作りました。実家を出て18年の間、小田部さんが戻るたびに、その池から溢れ出ている卵の数に驚いたといいます。家族の同意も得ながら、2022年から新たに500リットルの池を増設し、カエルファーストな庭づくりが本格的に始まりました。
カエルは湿気のあるじめじめした場所を好むため、意図的に石やレンガで隙間を作ったり、植物で日陰を作ったり、外敵から隠れる場所を用意しています。



小田部さんは「失った過去の自然を取り戻すのではなく、人間の適度な介入があり、好きな草木に囲まれて、好きな生きものが見られる庭」を大切にしていると話します。そういった意味では植物や生きものが好きな人であれば、ちょっとした工夫を取り入れることで、手間なく楽しいガーデンライフが叶いそうです。
国内で初めて、個人宅が認定
最後は敷地内のログハウスで、庭づくりのヒントを伺ったり、参加者アンケートを記入したりしました。
植物に興味があった参加者は「気になっていた庭を見れてうれしい。自分の庭でも昆虫や生きものがくるようにしたい」と話しました。
別の参加者は「生きものや植物が互いに環境を保っていることを学べてよかった。生物多様性のことを子どもに嚙み砕いて話したい」と満足気でした。

西東京市みどり環境部環境政策課の溝口雅彦さんからは見学会の目的について説明がありました。
西東京市では2024(令和6)年3月に第3次環境基本計画を策定し、同じく「西東京市生物多様性地域戦略」を定めています。見学会は、同戦略に示された具体的な取組(生物多様性に関する情報発信と環境学習・教育の推進)の一環として開かれました。
自然共生サイト(注1)は、企業や自治体などが管理する場所がほとんどの中、オーズガーデンは国内で初めて、個人宅で認定を受けた事例です。溝口さんは「緑の多い住宅地は、市内の大きな公園や緑地をつなぐ、生態系ネットワークの副拠点として重要な場所です。見学会が楽しい庭づくりの参考になれば」と期待を寄せました。
ここからは、見学会を主催した「エコプラザ西東京」に迫るよ!

地域密着型の環境施設
エコプラザ西東京は2008(平成20)年にオープンした環境学習の拠点施設です。施設の貸出、環境学習教材や図書の貸出のほか、講座・イベントを季節ごとに開いています。
最も集客があるのは、春と秋に開催する「リユース祭り」です。1人5点までリユース品を無料提供し、300名以上が訪れた日があるといいます。自然分野に目を向けると、2015(平成27)年から野鳥観察会を年2回開催し、身近な野鳥の名前や知識を学ぶ機会として好評を得ています。
他にも、敷地内には西東京市シルバー人材センターが運営する「リサイクル家具展示コーナー」を併設し、不要になったダイニングテーブルや椅子、食器棚などの家具を回収・修理し、常時約200点を低価格で販売しています。
環境学習活動に興味があれば、「エコプラザ西東京協力員」に登録し、エコプラザ西東京が主催する講座などの運営に携わることができます。興味がある講座に参加する、次の年は運営側で参加するなど活動の幅を広げていくと、新たな発見や出会いがあるかもしれません。

エコプラザ西東京
開 設
2008(平成20)年
住 所
東京都西東京市泉町三丁目12番35号
開館時間
9:00~21:30
休館日
年末年始、毎月第3月曜日(第3月曜日が祝日の場合は第3火曜日)
入館料
無料
アクセス
西武池袋線保谷駅より徒歩15分
バスをご利用の際は「保谷庁舎」下車徒歩3分、または「荒井竹」下車徒歩4分
※オーズガーデンは個人宅のため、住所は非公開。
◆ 注釈
(注1)自然共生サイトとは、生物多様性の保全が図られている区域を国が認定するもので、全国で合計569か所(令和7年度第3回)が認定されている。

