第12号 銀座のミツバチに会いに行く!都会の緑との関係性
中央区立環境情報センター「エコノバ」

20年を迎えた銀座での養蜂
陽光が差したり、陰ったり、薄曇りの5月31日(日)、外国人や余暇を楽しむ人でにぎわう銀座の街で、ビルの上で育つミツバチの見学会が、小学生以上を対象に行われました。
「緑の街でミツバチと暮らそう~銀座のミツバチを見てみよう~」と題して、中央区立環境情報センター「エコノバ」が主催し、同センターを起点に、養蜂箱のある紙パルプ会館、屋上庭園のある銀座三越のテラスファームを徒歩で巡ります。
東京メトロ銀座線の京橋駅直結の地上24階建て「東京スクエアガーデン」6階に位置する同センターに、子ども4名、大人9名、計13名の参加者が集まりました。ピカピカのビル群が林立する日本の一等地の一体どこにミツバチが暮らしているのか、普段は入れないミツバチの生活環境を近くで見学できる絶好の機会です。
銀座の養蜂は2006年に産声を上げ、「銀座ミツバチプロジェクト」(以下、銀ぱち)として全国にもその名が知られるほど有名になりました。参加者の認知度も高く、本物の銀座のミツバチを見てみたいと話す方が多くいました。倍率は過去最高の9倍となり、関心の高さが伺えます。
講師は10年ほど前から協力する一般社団法人みつばち協会代表理事の高安和夫さんです。高安さんは銀ぱち発足当初から関わり、全国の養蜂の調査・研究を専門にされています。同じく同協会常務理事の高安さやかさんと、草花への造詣が深いまちなか植物観察家で区民の北村晶子さんが脇を固めます。

はじめに、座学で銀座の市街地の緑やミツバチの生態を学びます。
中央区では20年ほど前から緑の活動に力を入れ、コンクリートジャングルに見える場所でも随所に街路樹や植栽があります。地球温暖化やヒートアイランド現象の影響もあり、屋上庭園は銀座三越、松屋銀座、GINZA SIXなどの一般に開かれた商業施設などに設置され、憩いの場となっています。
区内の屋上緑地は2004(平成16)年度に36,957平方メートルだったのが、2017(平成29)年度には83,304平方メートルと、約2.25倍に広がっています。(出典:平成29年度中央区の実態調査第5回概要版)

働きバチはオスかメスか?ミツバチの生態
それでは、ミツバチのごはんは何でしょうか。
ミツバチにとって、ミツは人間でいう炭水化物のような存在で、花粉はタンパク質、脂質、ミネラルに該当し、ミツバチはミツだけでなく花粉も集めます。
行動範囲は巣箱から半径約2kmで、銀座周辺では、皇居、浜離宮恩賜庭園、日比谷公園などがエサの調達場所です。サクラ、トキノキ、エンジュ、ユリノキなど、花の種類によってはちみつの味わいが異なります。
ミツバチは一つの巣に1万~5万匹いて、群れで生活しているのですが、ここでクイズです。
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働きバチはオスかメスか?
- オス
- メス
- 両方
クリックして回答を見る
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正解2 メス
働きバチは全員がメスで、もっとも数が多く、巣と餌場を1日20往復する働き者です。オスは無精卵から生まれ、全体の1割ほど。ほかの群れの女王バチと交尾し、交尾が終わると死んでしまいます。
働きバチは、3週間ほどで羽化して早々に仕事をはじめ、巣の中の掃除、幼虫へのエサやり、巣の補修、見張り、飛ぶ練習などを経験し、そのあとようやくミツや花粉を集める係となります。ジョブローテーションの仕組みですが、適正に合わせて選べるわけではなく、日齢に応じて担当していきます。
巣に1匹の女王バチは、一日に1,000~2,000個の卵を産み、2~3年生きます。働きバチの寿命が1か月から半年(冬期)と考えると、かなりの長寿命です。

ミツバチの種類は、日本ミツバチと西洋ミツバチがいますが、銀座の巣箱で飼っているのは西洋ミツバチです。日本ミツバチは野生化しているハチで、東京都では上野や浅草で生息が確認されています。一方、西洋ミツバチは明治頃にはちみつ生産や作物の受粉用に海外から入ってきました。
ミツバチがいても驚いたり、振り払ったりせず、見守っていれば、襲ってくることはまずないといいます。ミツバチは動く黒いものに寄っていくため、濃い色の服装を避けるのがベストです。
参加者は事前案内により淡い色の服装で準備万端です。いよいよミツバチが入居する紙パルプ会館に向かいます。
まちの緑があってこそのミツバチの生活
紙パルプ会館に向かう道中、ミツバチたちの栄養源である道路沿いの緑に目を向けました。
普段見過ごしてしまう街路樹のセイヨウトチノキ、シナノキ、垣根のシャリンバイは、ミツバチが好きな花を咲かせます。他にもオオシマザクラ、ウコンザクラ、ガクアジサイなど、知っているようで知らない草木の正式名称を知り、博識になった気分です。
まちなか植物観察家の北村さんは「何気なく見ている草木ですが、名前や性質を知ると散歩が楽しくなりますよ」と街路樹や植栽の花の名前を教えてくれました。

徒歩10分ほどで、紙パルプ会館に到着しました。
オフィスビルである紙パルプ会館の役員から養蜂の誘いを受けたことをきっかけに、銀座初の取組みがここから始まりました。
養蜂前提の建物ではないため、11階屋上は、ビルのインフラ設備が立ち並び、その一画に巣箱が設置されています。網付き帽子を借り、足元に注意して進むと、透明な波板パネルを隔て2~4段組になった巣箱が5箱ありました。巣箱下部の出入口には70~80匹のミツバチが固まって、ブンブンと羽音を立てていますが、高安さん曰く今日はおとなしい日のようです。それでも小学生の女の子は「怖い」と言って、巣箱の見える位置まで近づけなくなっていました。

巣が手狭になると分鋒(ぶんぽう)といって別の場所に引っ越してしまうため、箱を縦に増やし居住スペースを増やします。花によって変わりますが、春から夏にかけて1箱で50キログラムほどのはちみつが収穫でき、昨年度は5か所ある銀座の養蜂場所で合計2.6トンもの収量がありました。
巣箱の近くには、スイレンが植わったバケツや他の植物や苔が育つプランターが置かれていました。これはミツバチのための水場(みずば)です。ミツバチは暑い時期は特に水を吸って、巣箱の入り口で水を吐いて気化熱で巣の中を涼しくするので、重要な場所です。

ドキドキのミツバチとの対面を果たした後は、1階降りた10階のテラスBee Gardenでしばし休憩です。四季折々に様々な花を咲かせる小さな屋上庭園で、ミツバチの蜜源となる植物を中心に、リンゴ、ミカン、オリーブ、ラベンダーなどが植えられています。葉の香りをあれこれ嗅いでは「いい匂い」と参加者同士で話し、まさに天然の香水ショップのようでした。

見学も終盤戦、最後は銀座三越の屋上庭園に向かいました。
屋上庭園「銀座テラス」は銀座三越が2010年に増床リニューアルした際、一般開放するテラスガーデンとその一角にテラスファームを9階に新設しました。テラスファームは、都会の子どもに食べものをつくることの大切さや自然との共生を感じてもらうことを目的に、中央区立京橋築地小学校の4年生を毎年迎え、サツマイモの苗植えや落花生の種まき、収穫などの農業体験を行なっています。

現在は農業体験前とのことで、畑にあるのは花やハーブ類でした。マリーゴールド、ニチニチソウ、キンギョソウなど春の花が花壇を彩っています。
どの匂いが好きだったか、小学生の女の子に尋ねると「ローズゼラニウム!」と答えてくれました。葉をこするとバラのような華やかな香りがするのが特徴で、香料の原料としても利用されている植物です。
参加者の中には昨年落選して、念願の見学会だった方もいました。「ミツバチの生態が学べ、怖がらなくていいとわかった」と笑顔を浮かべていました。他にも、これからは生活の中で緑に意識を向けたいと感想があり、ミツバチと自然の関係性も学べたようです。
ここからは、東京の一等地に拠点を構える中央区立環境情報センター「エコノバ」に迫るよ!実は大都会でも環境講座をやっているんだって!

大都会の中の環境施設
中央区立環境情報センター「エコノバ」は2013(平成25)年、地球温暖化などの環境問題に対する取組を広く発信するとともに、環境活動の場として利用することができる施設として開設しました。環境に関する講座や講演会などのほか、環境活動登録団体(注1)による企画展示や活動発表会などさまざまなイベントが行われています。
環境活動に利用できる研修室は会議室として使用も可能で、平日は企業の方の利用も多くあります。体験型のワークショップを中心とした講座を子ども向け、大人向けあわせて年間80~90回開催しています。子ども向けの講座ではランタンづくりや石けんづくりが、大人向けでの講座では金継ぎや苔テラリウムが人気です。
講座やイベントに参加しやすくなる会員制度を利用するのもおすすめです。18歳以上は「中央エコメンバー」に登録するだけで、優先枠があったり、案内が送られてきたり、いいことづくしです。小学生は「中央エコキッズ(注2)」の会員になると、特別講座の案内や景品がもらえるチャンスがあります。
ビルの1フロアの一画とコンパクトな敷地でありながら、常設のコンテンツも充実しています。デジタルなものでは、地球上で起きている現象や環境変化を映し出す地球儀の「SPHERE(スフィア/触れる地球)」、森林の大切さをタッチパネルで学べる「『中央区の森』を育てよう」などがあります。アナログなおもちゃもあり、低年齢の子どもが遊べるようにもなっています。


一見すると、都会のど真ん中で自然のことは学べないと想像するかもしれませんが、ちょっとした工夫や見方で自分を自然の方に近づけることができます。道端の植栽、鳥の鳴き声、ビルの中での環境講座など、目を凝らして見つめると、限られているからこそ一段と輝いて見えるかもしれません。

中央区立環境情報センター「エコノバ」
開 設
2013(平成25)年
住 所
東京都中央区京橋三丁目1番1号 東京スクエアガーデン6階 京橋環境ステーション内
開館時間
9:00~21:00
休館日
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料
無料
アクセス
東京メトロ銀座線「京橋駅」3番出口直結
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」7番出口より徒歩2分 など多数
◆ 注釈
(注1)環境活動登録団体とは、環境情報センター内の研修室や交流室、展示スペースを使用することができる登録制度です。中央区内で活動している団体に限られ、現在は41団体。(2026年5月末時点)
(注2)中央エコキッズは、こどもエコクラブに登録している団体の1つです。2026年5月末時点、168名。

