トップページ > 環境レポート > 第2回 八王子市:“はちおうじの環境をみる・きく・考える”ためのきっかけの場づくりとして(八王子環境フェスティバルの開催)
2014.07.31
当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー、第2回は、八王子市で毎年6月の環境月間に開催している『八王子環境フェスティバル』の概要や経緯について紹介します。あいにく荒天で中止となった2014年の環境フェスティバル。開催への想いも併せて、ご一読ください。
2014年6月7日(土)、前夜から降り始めた雨は強さを増していった。八王子市では、毎年環境月間に合わせて6月の第一土曜日に「八王子環境フェスティバル」を開催している。前身のイベントを含めて今年(2014年)で第21回目を迎えていた。
当日朝の状況について、八王子環境フェスティバル実行委員会の事務局を務める環境政策課専門幹の岩本正明さんは次のようにふりかえる。
「この日、朝6時の出勤予定だったのですが、あまりに雨風がすごいので、5時半から現場に出てきていました。ところが、八王子駅の南口前側はテントも立てられないほどのものすごい暴風雨。結局、テントを立てても風で吹き飛ばされると困るので、その場に置いておくことにしました。環境フェスティバルの会場は北口側と南口側とに大きくは分かれているのですが、南口側の展示は無理かもしれないと思うほどの大変な状況になっていました。それでも中止はまったく頭にありませんでした」
関東甲信では、降り続く大雨のため気象庁が土砂災害や河川の増水に警戒を呼びかけていた。特に八王子市では、大雨・洪水警報の発令とともに、増水による護岸の崩壊が原因となり市内2か所で避難勧告も出される深刻な事態となった。八王子市防災課によると、市内で最も多い降水量を記録したのは京王高尾山口駅の雨量計で、6日午後零時からの一日半で300mm以上になったという。
「決定的だったのが、避難勧告の発令でした。この日のために皆さん準備を進めてきていました。仕入物品などもありますし、相当の予算をつぎ込んでいますから、雨だけなら一部会場を縮小するとしても決行するつもりでした。ただ、避難勧告が出るに及び、この状況では来場者・出展者の安全確保も難しいと判断し、実行委員長と相談してやむなく中止を決めたのです。まさに苦渋の選択でした。開催するのも大変なエネルギーがいりますが、中止の決断はさらに困難なものでした」
それまで13週連続で晴れの週末が続いていたのに、まさか14週目にこれほどの荒天に見舞われることになるとは──そう肩を落とす岩本さんだ。
八王子環境フェスティバルは、八王子市内の企業(事業所や出張所等も可)、行政、学校、市民団体が参加して実行委員会を結成し、事務局を担う八王子市役所をはじめ、それぞれが人材や資金などを持ち寄る形で開催している、毎年恒例のイベントだ。
メインテーマには、『はちおうじの環境をみる・きく・考える』を掲げている。八王子に生活する一人ひとりが、市内で環境の取り組みをしているさまざまな主体の多角的な活動を体感するためのきっかけの場をつくることで、八王子の環境の大切さや素晴らしさを再認識してもらいたいという思いがある。
「186㎞2という広大な市域の環境をよくしていこうと言っても、行政だけでできることではありません。産官学民の力を結集することが不可欠ですから、そのきっかけづくりの場に、このフェスティバルがなってくれればという思いでやっています。フェスティバルでは、各主体が展示ブースを出展して、それぞれの活動をアピールしています。それぞれの内容はバラバラでいいと思います。来場者に、色々な角度から環境を知って、考えてもらう。そこから少しでも興味を持ってもらえればいいですし、市民が手軽にできる活動のきっかけになればいいと思うのです。ともかく、毎年6月には八王子駅前で環境フェスティバルが開催されるということを続けていくことが大事です。継続することが環境保全の力を生むと思ってやっています」
八王子環境フェスティバルのねらいについて、岩本さんはそう話す。
開催時間は朝10時から夕方5時まで。開始に先立って、北口・南口の両会場でオープニングセレモニーが催される。2013年は71の個人及び団体が出展して、全84ブースを設営した。延べ来場人数は53,000人にのぼり、各ブース出展の他にも、燃料電池機関車の乗車体験があったり、学生による生演奏や環境市民会議による地域特性豊かな出展、またご当地のゆるキャラが会場内を練り歩いたりするなど、一日楽しめる場を提供、盛況裏に閉会を迎えた。
フェスティバルの開催に向けて、毎年秋口の9~10月をめどに、実行委員会の第1回会合が開催される。実行委員会は単年で解散しているが、多くは継続的な参加を表明しているため、当年度のフェスティバル開催に向けたイメージ共有と同時に、前年度のフェスティバルの総括を兼ねるようにした。
かつては当日を迎えるまでに5~6回ほどの全体会を重ねていたが、皆さん多忙で、回数が多くなると出席率が低下するため、ポイントを絞って開催するようになり、キックオフ後の会合は、1月15日号の広報に載せる出展団体と協賛企業の公募時前、そして開催直前の計3回に絞り込んでいる。軽易な事項は、役員会で方針を検討して、事務局との調整で進めている。
「役員会は、実行委員会の中から互選で選んでいる委員長と3人の副委員長、監査役と事務局長─環境政策課長ですね─で構成しています。それと最近は、市民団体と大学生にも出席してもらっています。やはり学生さんの力ってすごいんですよね。発想もまったく違いますし、当日のボランティアも大勢の学生さんたちが入ってきています。ここ数年は学生から役員を1人選んでもらっていますが、オブサーバー参加も含めて2~3人で連れだって参加しています」
71団体・84ブースという出展規模だから、開催前の約半年は、かなりタイトなスケジュールになる。早めに仕掛けるようにしてはいても、直前はドタバタになるという。
フェスティバルの目的や基本的な姿勢は変えることなく実施していきたいという岩本さんだが、年ごとのテーマを設けていくことも検討してきたという。
「毎回テーマを設けることは実行委員会でも議論になりました。ただ、多種多様な企業や市民団体が参加しているので、なかなかテーマを決めて開催するというのも難しいんですね。分野の違う活動をしている団体にとっては参加しづらくなってしまいます。一つ考えているのは、エリアごとに水や緑、温暖化などのテーマを分けたり、子ども向けのコーナーを作ったりすることです。会場もいくつかに分かれていますから、そうやって分類していくことで、テーマパーク的に楽しんでもらえるよう、来場者にわかりやすいサインを作っていければと思っています。今後、実行委員会の中で議論して決めていきたいと思います。それと、取り組みのテーマが多様なだけでなく、それぞれの出展内容も多彩です。何年も参加していただく団体さんも多いので、マンネリにならないようにとお願いしています。いつも言っているのは、“来場者を離さない、人が溜まるような場所にしてほしい”ということです」
各団体の出展内容も以前に比べるとだいぶ変わってきたと岩本さんはふりかえる。特に市民団体は、どうしても自分たちの活動の成果を中心に発表する傾向があり、パネルを作っても、文章が長かったり、写真を多く使用しているが、環境がしっかり捉えきれていなかったりと、年層の幅の広い来場者、特に小・中学校の皆さんには理解しにくい面も否めなかったという。環境保全に取り組んでいる真剣さやまじめさは伝わるものの、来場者にとっての魅力が表に出てこないと、足を止めてはもらえない。
「ただ最近は、まず来場者に木を切ってもらったり、物を作ってもらったりと体験をして、そこから木のかけがえのなさを訴えていくような展開を取るなど、それぞれ工夫しているのが見てとれます。毎年、役員は朝のオープニングセレモニーが終わると、会場内をまわって各ブースを見るようにしています。そうすると、ブースごとの善し悪しが見えてきますから、そんなことも含めて、次回はさらに来場者にとって魅力のある出展にしていただきたいと、働きかけています。出展ブースそれぞれが責任を持っている以上、来場者を自ら呼び込む魅力を持つことと、来た人を手放さないとか、そういった工夫をしていただきたいのです。そうしたそれぞれの取り組みが集まっていくことで、大きな力が発揮できます。今や58万人の八王子市民の1割が来場していますが、それが2割・3割と増えていくとともに、隣接する市町村からも多くの人たちを呼び込む、そんなフェスティバルにしていきたいのです」
毎回、開催直前の実行委員会で話をしているのが、ブース出展者も来場者の一人だから、時間を取って自分たちのブース以外を回ってほしいということ。よいところ、改善すべきところを忌憚なく意見してほしいし、よいアイデアがあったら盗んで取り入れてほしい。それが次回以降につながるという。
全出展者を含めれば、スタッフ・関係者だけでも総勢600~700人ほどになるから、それだけの人数が動くことで、人が人を呼んで大きな賑わいにつながる。そんなねらいも期待している。
実行委員会の事務局長を務める、八王子市環境政策課課長の佐藤宏さん。
八王子環境フェスティバルが現在のような実行委員会形式で開催するようになったのは、1999年に遡る。以来、毎年開催してきて、2013年に節目の第15回を迎えた。事務局長を務める八王子市環境政策課課長の佐藤宏さんから、フェスティバルの経緯と今後について、次のようなメッセージをいただけた。
「八王子環境フェスティバルは、『川に親しむ市民の集い』として、1991年に行われた環境月間行事がその源となります。市民の環境に対する意識の啓発事業の一環として、1998年までは八王子市が中心に行ってきました。1999年からは、市民・事業者が社会のあらゆる面において、自主的かつ積極的に環境への負荷を低減しようとする取り組みが進んだことから、市民・事業者・行政からなる実行委員会形式で再スタートしました。これは、環境基本法が制定されたことで、市民・事業者に広く環境保全について、関心と理解を深めてもらうとともに、積極的に環境保全活動を行う意欲を高めてもらうことを目的に、市は6月を「環境月間」と定め、6月に開催しているものです。また、2006年にはメインテーマを『はちおうじの環境をみる・きく・考える』と定め、会場もこれまでの市役所前の浅川河川敷から、八王子駅を中心とした商店街のエリアに会場を移したことから、出展者や参加者が大幅に拡大し、環境啓発の取り組みを広くアピールすることができました。2013年は実行委員会として15回目、通算でも20回目という節目の開催を迎えることとなり、53,000人という、過去最大の来場者を迎え、更なる飛躍を期待する中、フェスティバルを終えることができました。ところが本年(2014年)は、記録的な豪雨となり、大雨洪水警報が発令され、また当日早朝に市内一部地域で避難勧告が出されるなど、来場者・出展者の安全確保が困難であるとの判断から、止む無く中止といたしました。本年の悔しさを胸に、2015年に向け、既に事務局は動き出していますが、これまでの精神を受け継ぎながら、時代や市民のニーズにしっかり応えられるイベントを作りあげていきたいと考えています」
八王子環境フェスティバル実施経緯 ※クリックでPDFが開きます
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