トップページ > 環境レポート > 第5回 立川市:地域に根ざした環境フェアの開催をめざして(たちかわし環境フェア)
2014.10.15
当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
第5回は、立川市で毎年春に開催している「たちかわし環境フェア」について紹介します。
前年秋に、それまで毎年4月に合同開催してきた『春の楽市』の開催中止が決定したことで、(秋に)時期を変えて開催するか、緑化まつりなどと合同の開催をめざすか、単独開催に切り替えるか…大きな転機が求められた今年度の環境フェアです。
そうした開催経緯とともに、環境フェアの概要と目標について紹介します。ぜひご一読ください。
立川市で毎年春先に開催されてきた「たちかわし環境フェア」。主たる目的は“こどもたちに体験を通して環境について考えてもらうきっかけをつくる”ことで、近年のスローガンは、ここ数年間、『こどもの未来へエコライフ』を掲げている。
今年度(2014年度)、目的とスローガンはこれまでのものを継承しつつも、やり方をがらりと変える大きな転機が訪れた。
「昨年度までの環境フェアは、国営昭和記念公園を会場に毎年4月に開催された『春の楽市』【1】の中の一部門として実施していました。春と秋に年2回開催してきた楽市は、市民主導の参加型総合イベントとして、立川市民に親しまれ、育まれてきたものです。ところが昨年の秋口になって、春の楽市の開催中止の噂が漏れ聞こえてきて、その後正式に中止が決まったと楽市実行委員会から連絡がありました。年2回開催でさまざまな課題が指摘されてきた中、立川の魅力を広く発信する事業として初心に戻って再構築しようと、今年度(2014年度)から年1回秋の開催として原点回帰することになったわけです。春の楽市は、およそ2万9千人の来場者が訪れる大きなイベントでしたから、共同開催の環境フェアにも大きな集客が望めました。その春の楽市が中止になるということで、今後の環境フェアをどうしようかと、不安を抱えながらのスタートとなった、2014年度の実行委員会でした」
そう説明するのは立川市環境下水道部環境対策課環境推進係の倉田雄一さんと係長の仁尾弘一さん。市内の市民団体や事業所、市の関係部課が参加する環境フェア実行委員会では、同係が事務局を担当している。
一本化された秋の楽市での開催は、春先の環境月間に近い時期に開催したいという意見があって、早い段階に選択肢から外れた。一方、これまで合同で開催していた緑化まつりは、早々に4月27日の単独開催を決めていた。緑化まつりとの合同開催をめざすか、環境フェアも単独開催に踏み切るか、それともまったく別の途を選ぶか。実行委員会でもさまざまな意見が出ていた。
「せっかくやるイベントなので、なるべく多くの方にご来場いただきたいという思いはありました。ただ、春の楽市で開催していた昨年度までの環境フェアでは、大幅な集客を行うことができていた反面、春の楽市自体は環境のイベントではないため、イベント全体を通じて“環境”というメッセージを浸透させていくのが難しいという課題もあったのです」
そうした中で浮上してきたのが、旧市役所跡地に開館した「子ども未来センター」での開催案だった。
2013年度の環境フェア(昭和記念公園を会場にした春の楽市で開催)
2010年5月、立川駅の南側(立川市錦町)にあった立川市役所は、駅北側にあった立川基地跡地(立川市泉町)に移設された。新庁舎は立川駅から徒歩25分ほど。通常は、路線バスか多摩都市モノレール線を乗り継いで行く。
一方、昭和43年にできた旧庁舎も建物自体はまだ十分に使える状態だったため、リノベーションされ、「子ども未来センター」として2012年12月にオープンした。活用方法等について、市民参加などで検討された結果、子育て・教育・市民活動・文化芸術活動を支援するとともに、イベント実施などによって地域のにぎわいを生み出すことを目的とする。その中の一つに、「立川まんがぱーく」というマンガを集めた図書館のような空間がある。マンガやアニメ、フィギュアなどのサブカルチャーに懐が深い中央線沿線の地域性を生かして地域の拠点にしようと提案されたものだ。まんがぱーくでは、毎月、施設前の広場で「まんがぱーく大市」というフリーマーケットや古書まんがの販売、ライブや大道芸などの催しを開催していた。
この「まんがぱーく大市」と連携して環境フェアを開催しようというのが、「子ども未来センター」での開催案だった。まんがぱーく大市は、2013年6月に第1回を開催して以来、月1~2回のペースで1年間ほど継続してきたから、徐々に市民からも認知されてきて、集客が望めると期待された。
2013年11月27日、環境フェアの実行委員長及び事務局が子ども未来センターを訪ねて打ち合わせ、2014年6月1日に予定していた第15回まんがぱーく大市で環境フェアとの合同開催が決まった。まんがぱーく大市でフリーマーケット会場になっている広場のうち半分と、屋内にも一部出展して、環境フェアの会場とするという計画だ。
旧市役所跡地にできた「子ども未来センター」が2014年度環境フェアの会場になった。
年が変わって1月22日の準備会で2014年度の環境フェアの方向性を確認し、市内の市民団体や事業所など15団体による2014年度の実行委員会が立ち上がった。6月の実施当日まで3回の実行委員会を重ね、準備が進んだ。当日の出展は、実行委員15団体を含む18団体・23ブース。来場者は約5,000人にのぼった。
開催に当たっては、市及び子ども未来センターのホームページや市の広報誌での告知の他、コミュニティFM「エフエムたちかわ」を通じた呼びかけや、チラシを作って近隣の小学校3校にも配布した。
「当日は、天気もよく、気温は30℃を超え6月とは思えないほど暑い日になりました。出展者には、来場者に滞留してもらえるような内容のブースづくりのお願いを呼びかけ、それに応えて各団体でも体験型の内容を工夫してくれていました。例えば、お手玉を使った昔遊びをする団体があったり、どんぐりのブローチやシュロの葉の熱帯魚づくりなど自然素材の工作教室を企画した団体、バイオマス製品の普及啓発をめざす団体がバイオマスフィルムを使ったポンチョづくりや絵付けの体験教室を実施したり、多摩川で水辺の体験活動をしている団体による多摩川の石に絵を描く体験講座があったりとにぎわいました。また、全体企画として、各出展団体が協働して作り上げる企画をいくつか設けて、イベント全体の盛り上げへとつなげる工夫もしました」
協働企画の一つは、バイオマスフィルムでつくったポンチョを被って、市民団体のメンバーが手作りした竹の水鉄砲を使った水鉄砲合戦。広場の真ん中にブルーシートを敷いて、水を掛け合って涼を楽しんだ。30℃を超える暑さの中、子どもたちは大いに盛り上がり、大成功だったという。
また、環境対策課ブースで渡したうちわの骨組みを持って、環境フェアゾーンにある他のブースをまわり、和紙を貼り付けたり、彩色したりして、自分だけのマイうちわを作り上げる「マイうちわづくり」も全体プログラムの一つ。会場全体に足を運んでもらうための作戦だった。
総合案内も兼ねた環境対策課ブース(左)では緑のカーテンコンテストの作品展示やマイうちわづくりのスタート地点としての役割を担った。ごみ対策課のブース(左)では生ごみ処理機の展示や完熟たい肥・エコバッグの配布などを実施した。
全体企画として、バイオマスフィルムを使ったポンチョを被った竹の水鉄砲合戦を開催(左)。右写真は、マイうちわづくりの様子。
環境フェア実行委員会では、開催後の7月30日に振り返りと今後の方向性を議論するためのまとめの会を開催し、各団体の出展概要と感想、反省点や改善点、今回の開催方法についての意見を取りまとめて報告書にした。
「まんがぱーく大市との連携開催は初めての試みでしたが、より地域に根ざしたイベントになったと言えます。これまでの会場になっていた昭和記念公園は知名度も高く、アクセスもよい立地で、市外からも多くの人が訪れていましたが、今回はほとんどが市内からの参加でした。近隣の小学校3校に集中的に呼び掛けたことも功を奏して、子どもや親子の参加も目立ちました。これまで以上に、“子どもたちに体験を通して環境について考えてもらうきっかけをつくる”という環境フェアの主目的に適うものになったといえます。当面は、今年度の反省と課題を生かして回を重ねていくことで合意が取れています」
一方で、昭和記念公園を会場にした春の楽市からまんがぱーく大市での開催によって規模が小さくなるため、それまで出展していた企業の中には2014年度の参加を見送りたいというところもあったという。
次年度の環境フェアは、とりあえず方向性が定まり、開催に向けた準備を早い段階から始動できる。次年度は、市内の事業者への声掛けも強化していきたい、そう話す仁尾さんと倉田さんだ。
立川市環境対策課環境推進係の倉田雄一さん
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