トップページ > 環境レポート > 第17回 昭島市:市民の力を借りて、花と緑あふれる街づくりをめざす(花の応援事業)
2015.10.13
当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第17回は、昭島市で20年以上続く、「花の応援事業」について紹介します。
第3回で紹介した、瑞穂町の花植え事業と同じように、毎年春・秋の年2回、駅前をはじめとする市内各所に花を植え付けて、市内全域を花と緑のあふれるまちに彩るというこの事業。事業概要と担当者として苦労や喜びなどをお聞きしました。ぜひご一読ください。
昭島市は、都心から約35km西に位置する多摩地域の市。面積約17km2、総人口は約11万人。隣接する自治体は、東側に立川市、北側は福生市、南側に八王子市及び日野市。市域の南部を多摩川が、北部を玉川上水が流れており、市域全体が多摩川方面に向かって北西から南東へと緩やかな傾斜を描く。
市域を上下に二分するようにJR青梅線が通り、市内には東から西立川駅、東中神駅、中神駅、昭島駅、拝島駅の5駅がある。
これらの駅を玄関口に、市民はもちろん市外の訪問者などを迎え入れるため、駅前ロータリーの花壇をはじめ、公共施設や市道沿いの街路などを中心に、春と秋の年2回、花を植えて街を彩ろうというのが、同市の「花の応援事業」だ。事業を担当する、環境課水と緑の係・城田斉さんに話を聞いた。
「花を植えている中には、JR青梅線の昭島駅、中神駅、東中神駅の3駅の駅前花壇とその周辺に置いたプランターがあります。かつては拝島駅の駅自由通路にもプランターを設置していましたが、日が当たらない場所で水やりもなかなか毎日は行えないため手入れが十分できず、2年前に撤去しました。駅だけでなく、市役所正面玄関前の花壇をはじめとして、保健福祉センターや市民図書館、環境コミュニケーションセンターなどの各公共施設でも花壇やプランターに花を植えています。昭和記念公園の線路を挟んだ向かい側にある市立昭和公園に併設された市民球場の横にも大きな花壇がありますし、公園内にもプランターをいくつか置いています。この他、市道(江戸街道)沿いの街路の植栽ますに植えたり、市民グループの方々に花苗をお配りして各地域のポケットパーク【1】に植えてもらったりしています」
ポケットパークは、市内に10か所ほどある。近所の人たちが植えているため、植えたあとも気にかけてくれて、手入れも行き届く。ポケットパークだけでなく、市立公園の花壇などに植えるグループもある。
花の応援事業は、記録をさかのぼると平成6年度から実施されてきたことがわかっている。植え付け本数は、年によって若干の変動はあるものの、春・秋ごとに約1万2千株を超える数にのぼる。
市役所前の花壇に植えられて、来訪者の目を楽しませている花々。市内各所に1万2千株ほどが植えられている。
庁舎の脇には、プランターに植えた花もある。
駅前ロータリーや公共施設、市道などの花壇・プランターに植え付けている花苗は、登録人数30人ほどの緑のボランティアの協力によって、古い枯れた花の撤去と新しい苗の植え付けを行っているほか、小学2年生が授業の一環として体験したり、中学校のボランティア部の活動の一環として実施したりするところもある。
「小学生による花の植え付けでは、昭島警察の方にもご協力いただき、植え付け作業の後に子どもたちを集めて、防犯の話などをしてもらいます。例えば、『いかのおすし』【2】という防犯標語の話を、お巡りさんが子どもたちにしてくれるのですが、これがよい話なんですよね。花を植えて“生き物を大切にする”ことについて話した後で、今度は自分の身を守ることの大切さについてお話しいただくわけです。大人のボランティアさんとやる時には、ちょっと年配の方が多いものですから、今度は、振り込み詐欺に注意しなさいと、いろいろな話をしてくださいます」
小学生たちによる植え付け作業は、毎回、2時限分の授業時間の中で実施している。役所の方で事前に古い花株を片付けておき、ポット苗を用意して、植え付け作業を体験してもらう。
小学校2年生の花の植え付け体験作業。毎年春・秋2回の恒例となっている。
植え付け作業の後、昭島警察のお巡りさんが防犯・防災の話なども交えて子どもたちに話をする。
中学校のボランティア部による花の植え付け作業の様子。昭島駅近くの保健福祉センターの前にある花壇にて。
一方、緑のボランティアの活動では、新しい花苗の植え付けだけでなく、古い枯れた花株の撤去から協力してもらう。前の週に抜き取ったあと、1週間後に花苗を植え付ける。
「今度、10月の終わりにまた秋の花を植え付けることになっています。春に植えた花が枯れてきますので、それを抜いていただいて、その1週間後にまた新しい花を植えてもらいます。登録人数は約30名ですが、他にシルバー人材センターの方が手伝ってくれますから、合わせると60人近くの方々に手伝ってもらっています。緑のボランティアの登録は、私が異動してくる2年半前までは、毎年の登録更新でしたが、今は、やめるときだけ連絡をくださいとお願いしていて、それ以外は自動更新にさせてもらっています。ご都合が悪くなったときに連絡をいただくのです。募集は随時、広報などで行い、毎年2~3人は新規の登録があります」
花壇やプランターは、市内全域で大きくは10か所ほどに分散しているから、植え付けなどの作業も日を分けて実施している。住んでいる地域によって東地区と西地区に分かれて、2グループが分担して植え付けをする。春の植え付け後、夏には1度、緑のボランティアに集まってもらって、雑草抜きの作業日を設けている。
「全体作業だけでなく、多くのボランティアの方たちが、自分の植えたところを気にかけて見にきてくれて、折に触れて個人的に草取りをしてくれます。『雑草抜いといたわよ』『袋に入れて置いてあるから、回収お願いね』と電話してくださるので、時間があるときに回収します」
緑のボランティアによる花の植え付け作業。公民館前(左)と昭島駅前(右)の花壇にて。
2年半前、現在の職場に異動してくる以前は、現業職として清掃センターに勤務しながらゴミ収集に携わる仕事を20数年間していたと城田さんは言う。
「個人的なことですが、今の職場に異動してきて、市民の方と顔見知りになったのが一番うれしいことでした。花の応援事業でも、緑のボランティアの皆さんに顔と名前を覚えてもらって、こちらも覚えて。たまたま休みの日に街でばったり会ったときにも声をかけてもらえたりします。前の職場では市民の方と直接触れ合う機会はありませんでしたから、とても楽しく仕事をさせてもらっています。ただ、仕事上はわからないことが多くて苦労しています」
仕事の内容が180度変わり、それまで緑化推進のことは意識したこともなかったから、日々勉強の毎日だ。花といえば、アサガオ、ヒマワリ、バラくらいしか知らなかった。植え付ける花苗の注文も、前任者が頼んでいたまま同じ品種を、数だけ変えて発注している。頻繁には水やりに行けない場所などには強い花を植えて、庁舎前の花壇など行きやすい場所には手入れが必要な品種を植えるのだ。春・秋の2回植えだから、それぞれ半年の間、花が咲いてきれいな状態を保てるように維持管理するのが最も苦労しているところだと城田さんは言う。
「昭島駅前とか保健福祉センターの前などは、障がい者の方の雇用を管理している会社に、花の手入れを委託していますが、あとは、もう職員が回って、草取りや水やりをしています。水やりは本当に大変です。市民球場前には水道があるのでスポーツ振興課から蛇口とホースを借りて水を撒いたりできますが、街路の植栽ますなどは、水を入れたポリタンクを車に積んで、時間があるときに回っています。晴天が続くと、『雨、降ってくれ!』と天に祈っています。水やりは本当に大変なのです」
日照りが続いて、花が枯れたりするとクレームの電話が入る。ただ、萎(しお)れた場合でも、すぐに水をやりに行くと、水を吸って次の日に元気になることもある。
「ですから、もし電話が入って、『あそこの花が枯れそうだよ!』とご連絡いただくと、すぐにそこの場所だけでも時間を作って、水やりに行きます。それで次の日に見に行くと、結構生き返っているんですよ。花ってすごいですよね」
一般市民からの反響も少なくない。通りすがりの人が、植え付け作業をしているときに、「きれいになるね」「ご苦労様」「歩くのが楽しみになるわ」などと声をかけてくれたり、花がいっぱい咲いているのを見て喜んでくれたりする。
「植える花も増やして、もっともっと花いっぱいのまちにしたいのはやまやまですが、それ以前の問題として維持管理のことを考えると、まず今植えているところを年間通してちゃんと管理していけない限りは、簡単には増やせないのかな、と思っています」
今後、より効率的・効果的な維持管理をしていきながら、花と緑あふれる昭島づくりを進めていきたいと話す城田さんだ。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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