トップページ > 環境レポート > 第20回 調布市:環境学習推進事業として主に6つの事業を展開
2016.01.22
当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第20回は、調布市が実施する環境学習事業について紹介します。
調布市では、環境学習推進事業として主に6つの事業を展開しています。事業を通じて、市民・事業者・行政のパートナーシップによる調布市の自然環境の保全及び回復が目的です。事業の概要とそのねらいについて話を聞きましたので、ぜひご一読ください。
調布市では、環境保全と自然との共生の意識向上のため、「調布こどもエコクラブ」「調布環境モニター」「神代農場公開講座」などの環境学習推進事業を展開している。事業を担当する環境政策課環境保全係の田辺隆文さんと下妻大輔さんは、事業の目的について次のように話す。
「市民向けの環境学習の推進のために取り組んでいます。具体的には、体験することで学び・理解していただき・環境を守るための行動につなげることや意識を持っていただけるように,事業に取り組んでいます。例えば、ここで学んだことをもとに、川を汚しちゃいけないなと思ったら排水のことにも気を遣って生活してくれるようになっていただけたらと思っています」
各事業とも、年に6~7回程度の体験活動等を通じて、調布の自然に触れ、自然環境の保全や共生について考えていく。対象を絞っている事業は、子ども向けに参加を呼び掛けている調布こどもエコクラブと、親子向け公開講座。これら以外は広く市民全般に呼びかけている。
環境モニター事業は、調布市民を中心に呼びかけて、市内の主に自然環境の定点観測をしながら、その経年変化を観察・記録していくことを目的とした事業だ。観察対象は、草花などの自然環境。毎回の活動では講師の解説を聞きながら、観察した植物などの種類を記録するという形で進行する。平成27年度の環境モニター事業の登録者数は、20人ほどで、そのうちの半分は平成26年度から継続して参加しているという。
「対象は18歳以上です。参加者の多くは50・60歳代の方が多いですが、20・30歳代の方も参加しています。モニターということで、“モニタリングをする”というフレーズがキーワードになります。調布市には多摩川という資源がありますので、季節も考慮して、同じ場所で継続的に、それも1年だけでなく2年・3年と長期にわたって観察していくことを目的にしています」
田辺さんがそう説明する。
調布環境モニター事業の課題は、より的確で効果的な調査の実施とデータの活用だと下妻さんは言う。
「環境モニター事業でも、基礎データの収集につながるような調査として取り組んでいきたいと考えています。生物多様性地域戦略を策定している自治体もありますが、調布市では環境モニターで集めたデータをその基礎データとして活用し、広く市民などに情報発信していければと考えています」
環境モニター(第2回)の観察の様子。
環境モニター(第3回)の観察の様子。
調布こどもエコクラブは、市が事務局になって運営する事業。こどもエコクラブ事業については、平成7年に環境省の事業として始まり、その後、公益財団法人日本環境協会が引き継いで実施しているが、調布こどもエコクラブは、全国のこどもエコクラブの一つに位置づけられる。
小学1年生から中学3年生までの子どもたちを対象に、4月はじめの市報で年間登録の募集をしている。平成27年度は54人が登録。毎年度7回程度の活動を実施している。各回の活動概要は、下表のとおり。
活動内容 | 日時 | 場所 |
---|---|---|
第1回 野川公園散、植物・生きもの観察 (水辺ガサガサ) | 5月31日(土)10:10~11:55 | 野川公園 |
第2回 調布で採れる野菜の解説と収穫体験 | 6月29日(日)10:00~12:00 | 調布ケ丘地域福祉センターおよび近隣の農地 |
第3回 水辺ガサガサ(生きもの調査体験) | 7月12日(土)10:00~12:00 | 野川(調布市立第七中学校付近) |
第4回 源流体験 | 8月18日(月) | 山梨県小菅村 |
第5回 石調べストーンペインティング | 10月18日(土)10:00~12:00 | 多摩川自然情報館近くの多摩川河川敷 |
第6回 デイキャンプ (炭焼き体験、クラフト体験) | 11月29日(土)10:00~11:30 | 調布市深大寺自然広場(かに山キャンプ場) |
第7回 バードウォッチング体験 | 1月11日(土)9:00~11:00 | 多摩川・京王相模原線鉄橋下附近 |
「平成26年度の7回の活動の中で、特に反響が大きかったのが、第2回「調布で採れる野菜の解説と収穫体験」でした。活動当日は、農家の方などのご協力をいただき、収穫体験の他に、調布で採れる野菜の種類や農業についてクイズ形式で紹介しました。子どもたちにとっては、実際の収穫体験とともに、身近な地域でどのような野菜が作られていて、普段食べている野菜がどのように成長しているのか、また、農業が自然環境や里山の保全に関わっていることを知る良い機会になったのかなと思います。活動中の子どもたちを見ていても、楽しく学習している様子が印象的でした」
田辺さんが参加者たちの様子も交えて、そう説明する。
7回のうち、バスで調布外に遠征しているのが、夏休みの第4回だ。平成26年度は多摩川上流域の山梨県小菅村で源流体験、平成27年度は多摩川下流域で、川崎市にある施設・大師河原水防センター周辺の干潟で生き物の観察を実施しました。下妻さんは、第4回の活動について次のように説明する。
「通常の活動は半日ですが、夏休み期間中に実施するということもあり、このバスツアーの時は1日かけて活動します。調布市は、多摩川の中流域に位置しますので、同じ多摩川でも上流域や下流域の生態系の違いを見てもらうということを目的として、現地の方に解説いただき、生きもの観察します。捕れる魚の種類も、例えば、下流域ではカニがいるなど、同じ多摩川でもこんなに違うんだ、ということを体験していただければ良いと思います」
平成26年度第2回「調布で採れる野菜の解説と収穫体験」の様子。
平成26年度第3回「水辺ガサガサ(生きもの調査体験)」の様子。
平成26年度第4回「源流体験」にて、滝に打たれる子どもたち(山梨県小菅村にて)。
平成27年度第4回「多摩川下流干潟体験バスツアー」の干潟でのカニ捕りの様子。
調布市深大寺南町にある都立農業高校の神代農場には、崖線の緑や湧水など良好な自然環境が維持されている。学校自体は府中市に立地するものの、農場が調布市内にあることから、市では同校と平成17年から保全と保護のための協議を重ね、平成20年8月に「教育、文化に関すること」「自然環境の保全、保護に関すること」「環境に対する市民及び都民の啓発活動に関すること」などの事項について連携して事業を行うという基本合意のもと、協定を結び、以降、毎年秋から冬にかけて「神代農場公開講座」が開講されるようになった。
「定員は15人を目安に設定していますが、毎回定員を超える人が参加を希望する人気の講座です。会場は各回とも都立農業高校の神代農場にて実施しています」
平成26年度の第2回「竹籠の作成」は、農場内に自生するオカメザサを使って籠を編み込んだ。
「材料のササは学校側が用意してくださいます。各参加者が必要な分の材料を取って、カゴのベースを作っていきます。できたベースをムシロに固定しながら、その周りに他の材料を巻き込むようにして底の部分を作成し、さらにベースの部分に新たな材料を編み込むようにして籠の側面を作っていきます。そんなふうに説明しながら少しずつ作っていって、実際に手を動かしながら完成させていきます」
活動内容 | 開催日時 |
---|---|
第1回 講義(武蔵野・奥多摩の自然について) | 10月18日(土)9:00~12:00 |
第2回 竹籠の作成 | 11月1日(土)9:00~12:00 |
第3回 講義「木炭の作成」と竹炭材の準備、農場見学 | 11月15日(土)9:00~12:00 |
第4回 講義「ニジマスの燻製」、ニジマスの下ごしらえ、捕獲と塩漬け、竹の下準備 | 12月13日(土)9:00~12:00 |
第5回 講義「七草の寄せ植え」と春の七草寄せ植え体験、閉講式 | 12月20日(土)9:00~12:00 |
第2回講座「竹籠の作成」の作業の様子。
第2回講座で作成した竹籠。
農場内を見学する参加者たち。
平成26年度第5回講座で作った「春の七草寄せ植え」。
環境学習支援事業は、市民が学びたいことや、市民の環境活動の支援を目的に、講師派遣に必要な経費を支出する事業。過去には、バードウォッチングや都市河川で水辺に親しむ講座などを開講している。
「特に決まったプログラムを用意しているわけではなく、調布市の環境のことを考えてくださっている方々からの意見や要望を受けて、講師を選んで講座を開いています。平成27年度は、先ほどお話した環境モニターで活用できる生物調査をする際の的確で効果的な調査方法について学びたいという要望がありましたので、平成28年度以降に、調査結果を生かせるような調査を行うための講座を専門家の方を呼んで開催できるような内容も検討しているところです。講座については市報等にも掲載して参加者を募集していますので、専門的な知識をお持ちでない方でも、参加いただきたいと思います」
平成26年度の「都市河川で水辺に親しむ講座」で見学したワンドの全景。
スライドを見ながらワークショップ。
平成27年度の親子向け公開講座は、東京ガスライフバル調布狛江と共催し、親子エコ・クッキング講座を夏休みに実施した。全4回で親子参加の48組が参加。
「広報は、市報や調布市ホームページに掲載した他、夏休みのイベントをまとめたチラシを作って、市内の各小学校に配布しました。この講座は、調理中に配慮すると効果的なエコの工夫について教えてくれたり、調理で使用したガスや水道の消費量を測ったりと、身近な料理体験を通じて環境について考え・学べると人気も高く、毎回定員以上の申し込みがあるため、抽選によって参加者を決めています」
講座後のアンケートでは、今後実施してほしい講座について、「大好きな料理教室と一緒に環境問題を考えることができるこの様な講座をもっと頻繁に実施してほしい」「親子で参加できる実験や調理など体験型のもの」など、体験講座の更なる充実を希望する声があったという。
また、「ゴミ工場の見学」「ゴミの分別について」など、ゴミについての講座を希望する声もあがった。
平成26年度の「エコ・クッキング」講座の風景。
平成26年度の「エコ・クッキング」実習の風景
年4回発行している広報誌「ちょうふ環境にゅ~す」は、環境政策課の窓口の他、各公民館や各図書館、各福祉センターなどに配架している。調布の財産である緑と水の保全、また地球温暖化対策など市が実施している環境政策や、市民・事業者が取り組む環境保全活動を広く情報発信し、調布の環境保全への関心を高めるための記事等を掲載している。
「環境政策課の窓口など公共施設で配架や調布市ホームページに掲載していますが、更に多くの方々に読んでいただくことを検討しているところです。今後は市内の中学生等を対象にした広報紙等も発行していけたらと思っています」
現在、広報誌の記事は環境政策課で作成しているが、今後は他の部署にも記事作成を依頼して、より幅広い環境情報の発信ができるよう努めていきたいと話す下妻さんだ。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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