トップページ > 環境レポート > 第30回 日野市:節目の10年目に向けて、普段着のまま不断の取り組みとなることをめざす(ふだん着でCO2をへらそう宣言)
2016.11.18
「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第30回は、日野市の「ふだん着でCO2を減らそう宣言」。
当初、平成20年度から平成24年度までの5か年間の事業として、日野市内の世帯数・事業者数の約半分に当たる一般家庭35,000世帯及び事業所2,500団体を目標に掲げて始まった同事業は、その後も継続して、来年29年度に節目の10年目を迎えます。
市民や関係団体とともに「ふだん着でCO2をへらそう実行委員会」を組織して、“肩肘をはることなく、決して無理をせず”、“一人ひとりが毎日のくらしの中で、地道にこつこつと途絶えることなく継続していく”という、「普段」と「不断」の意味を込めた取り組みとして継続してきました。
活動紹介(第27回)でも紹介したこの事業のその後の展開について、担当者の話を聞きました。ぜひ、ご一読ください。
日野市のエコキャラクター・エコアラ®(左)とエコクマ®(右)も地域の祭りやイベントに参加して、事業のPR。 エコアラ®は、東京都日野市の多摩動物公園の生まれ。地球温暖化に心を痛め、エコレンジャーとなった。一方、地球温暖化で住んでいるところを追われ、東京都日野市にやってきたエコクマ®は、偶然出会ったエコアラ®の果敢なエコ活動に触発され、エコレンジャーとなった。頭の葉っぱは、エコアラ®から仲間の証にもらったものだ。
日野市の「ふだん着でCO2を減らそう宣言」は、平成20年度から24年度までの5か年事業として始まったもので、“肩肘をはることなく、決して無理をせず”、“一人ひとりが毎日のくらしの中で、地道にこつこつと途絶えることなく継続していく”という、「普段」と「不断」の意味を込めた取り組みとして、平仮名の「ふだん着」を当てている。活動紹介(第27回)でも取り上げたこの事業は、9年目を迎えた今年(平成28年度)も継続した取り組みとして実施されている。
「すでに当初目標とした日野市の世帯数・事業者数の約半分に当たる一般家庭3万5千世帯及び事業所2千5百団体を超える、それぞれ40,778世帯・2,553団体の宣言(累計)が28年3月31日現在の集計として集まっています。24年3月に策定した第3次日野市地球温暖化対策実行計画では、32年度を目標年度とした新たな目標として、一般世帯7万世帯と事業所3万5千団体を掲げています。来年度に節目の10年目を迎えますから、宣言後のステップアップやモニタリングの実施など行動の定着・拡大に向けた、次のステップの検討も予定しているところです」
そう話すのは、環境保全課の成澤綾子さん。前回話を伺ってから、一時環境部内の別の担当への異動があって2年間ほどこの仕事を離れて、ちょうど戻ってきたところだったという。新たな取り組みもいくつか始めているという、日野市環境保全課の「ふだん着でCO2を減らそう宣言」。今回はそうした辺りを中心に説明していただいた。
28年9月11日(日)、日野市市民の森ふれあいホールを会場に、第2回日野市環境かるた大会が開催された。学年ごとにカテゴリー分けした小学生のペア2人1組及び家族チーム(小学生とその保護者)、合計150組300名ほどの参加を得た。
「日野市環境かるたは、「ふだん着でCO2を減らそう宣言」事業の一環として、子どもたち世代の取り組みを進めることも視野に26年度に市内の小学生などから募集した標語をもとに制作したものです。絵札には日野市の環境キャラクターのエコクマ・エコアラを用いて、裏面には標語へのコメントも掲載しています。初回の去年は個人戦と3対3の団体戦でしたが、個人戦は決勝に進むにつれて、独りぼっちなせいもあって泣き出しちゃう子もいて、ちょっとかわいそうな状況でした。3人チームになると人数集めも大変だったらしいので、今年は間を取って2対2のペア戦にしています。募集後あっという間に満員御礼の状況で、枠を増やして実施するほどでした。参加者たちは確実に上達していて、去年の優勝チームの子たちも参加していましたけど、つわものがどんどん出てきていて、勝てないんですよ」
環境かるたは、昔ながらの遊びである“かるた”を通じて省エネ行動に親しんでもらうことを目的に作ったもの。勝敗ばかりにこだわるのではなく楽しく遊びながら標語の一つ一つの意味を考えて、一つでも実行できるようになってもらいたいと成澤さんは話す。
昨年度は、市内小学校全クラス及び市立図書館などに合計426セットを配布。大会用に事務局で保管する24部を残して一般販売した50部も完売し、28年度に第2刷を制作して、市内の幼稚園・保育園を中心に120部を配布した。
絵札に日野市の環境キャラクターのエコクマ・エコアラを用いて制作した「日野市環境かるた」。読み札の標語は市内小学生から募集した。
28年9月に開催した、第2回日野市環境かるた大会。150組300名ほどが参加して、第1回に増して熱い戦いが繰り広げられた。
もう一つ昨年度新たに始めた取り組みが、小中学校や幼稚園・保育園での出前授業。講師役は職員が務める。
初年度、小学校からの引き合いは4校にとどまったが、幼稚園・保育園では26園・延べ2,608人もの子どもたちを相手に実施した。エコクマ・エコアラの着ぐるみも登場し、紙芝居仕立ての「もったいない探し」で、電気の消し忘れや水の止め忘れ、食べ残しなどについて考えてもらった。
小学校では、6年生を対象に、地球温暖化のメカニズムや温暖化が及ぼす影響について紹介した後、グループワークで話し合いをする。
新規採用で環境保全課に配属された枝久保明宏さんは、実際に講師役として子どもたちの前に立って話をしている。
「もともと抱いていた市役所の仕事のイメージとは180°違うことを今やっているなということを実感します。ただ、子どもたちは、しっかりと話を聞いて理解してくれるのが分かって、そんな素直な反応がうれしいですね。子どもたち自身が考えるワークショップの時間も設けていて、そういう中でもしっかりした反応が見られて、すごくいい取り組みだなと思っています」
授業の後、子どもたち・保護者向けの2種類のアンケートを持ち帰ってもらう。授業のふりかえりとともに、家に帰って家族で話をしてもらうことを重視しているわけだ。それによって、家族の中にも広がっていくことを期待する。
「おもしろかったのは、出前授業のグループワークのときに、省エネってどういうことだろうねという問いかけに対して、環境かるたの標語を言う子が多かったことです。どこかで聞いたことがあるなあと思ったら、環境かるただったんですよ。子どもたちも、かるたに書いてあるよと言って、取り出してきたりして。そんなふうにすぐ思いつくくらい、普段から親しんでくれているんだなと実感した瞬間でした」
小学校での環境学習出前授業。市職員が教壇に立ち、地球温暖化のメカニズムや温暖化の影響について説明をしたあと、子どもたちによるグループディスカッションの時間も取った。
保育園での環境学習では、エコクマ・エコアラの着ぐるみも登場し、ダンスも披露。
27年度に実施した省エネ定着コンテストでは、環境フェア(11月開催)の中でパネル展示や表彰式を実施した。
既宣言者へのフォローアップ事業として27年度に初めて実施したのが、「省エネ定着コンテスト」。広報やホームページを通じて募集したモニター世帯に夏の期間(8~9月の2か月間)の電気・ガスの使用量の前年同月比の削減率や省エネ方法を競ってもらったコンテストだ。
削減率+アイデアの総合で「省エネチャンピオン」1名を選出したほか、削減率の高い「エネルギーダイエット賞」として電気部門・ガス部門それぞれ1名、またすでに削減努力をしていて前年度比の削減率はあがらなかったもののすぐれた省エネ行動・アイデアを示した人たちを中心に選定した「省エネアイデア賞」及び「家族賞」も各1名選出。これらの参加者には、毎年末頃に開催している日野市環境フェアの中で表彰した。
「前年度比の削減率を比較するため、初めて省エネ行動に取り組む方が大きく減らすことになります。ただ、それまですでに省エネ行動に取り組んできている方たちの継続した取り組みこそが大事になりますから、28年度は、コンテスト表彰者を中心に、省エネの取り組みについて取材して紹介するようなことを計画しています」
これまでの取り組みを継続しながら、さらに新たな視点を入れつつ進化している、日野市の「ふだん着でCO2をへらそう宣言」事業だ。
環境課で制作する啓発グッズの数々。ポロシャツは市職員から注文を取って販売している。
日野市環境学習施設「かわせみ館」に鎮座するエコアラとエコクマのぬいぐるみ。耐震基準を満たさないため来年度場所を移してのリニューアルオープンを予定している。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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