トップページ > 環境レポート > 第32回 新島村:公共施設の照明LED化によって、村民のエコロジーの機運を高める(新島村LED化事業)
2017.02.14
「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第33回は、新島村の公共施設LED化事業について紹介します。
事業の内容は、公共施設の照明をLEDに交換するというもの。その背景やねらいについて、担当者より話を聞きました。ぜひご一読ください。
今回の事業を実施している新島村役場は、東京本土から約150kmの太平洋上に浮かぶ伊豆諸島の新島のほぼ中央に位置する。海上を南西に約4kmの式根島と合せて、村の人口は約3,000人と少ないが、島への来訪者は、新島(5万人弱)と式根島(2万4千人)の両島合計で約7万3千人になる(平成28年の統計)。
主要産業は、マリンスポーツや温泉などの観光業や、農業と水産業。海の恵みと伝統が生んだ「くさや」などの水産加工品も島の特産品になっている。また、島から産出する抗火石(コーガ石)は、火山のマグマが急冷されてできたガラス質・多孔質の鉱石で、水に浮くほど軽量で、断熱性・防音性が高く、しかも加工しやすいという、建築・土木材料にとって優れた性質を持つ。その特性から、古くは江戸時代から重宝されてきた。同じような性質の自然石は、イタリアの一部地方でしか産出されない、珍しい建材だ。
ちょうど前回掲載した渋谷区の中心には、新島と縁の深いある石像が設置されている。ご存知の方も多いかもしれないが、渋谷駅南口の待ち合わせスポットにもなっている、「モヤイ像」だ。新島産の抗火石で作られたこの像は、島民が力を合わせる時に使われる「もやい」の風習から名付けられた。新島の東京都移管100年を記念し、1980年(昭和55年)に新島観光協会が渋谷区に設置したものだ。
今回は、そんな新島で取り組まれている環境事業について紹介する。
渋谷駅南口のモヤイ像
新島にあるモヤイ像(新島村提供)
新島のオール東京62市区町村共同事業の助成金事業は、主要な公共施設の照明をLED化して、島内の省エネに寄与するとともに、村内企業や団体、住民のモデルケースとなることで、村内のエコロジーの機運を醸成しようというものだ。26年度は新島村住民センター、27年度は役場庁舎を対象に、一部を除いてLED化を行った。28年度については子どもの利用が多い新島村勤労福祉会館のLED化を実施中である。
「残念ながら、庁舎の全照明を交換するには予算が足りず、非常用電源に接続している照明は交換ができませんでした。限られた予算の中で交換する場所を選定するのに時間がかかったのが大変なところでした」
そう説明するのは、新島村企画調整室の登(のぼり)さん。
今後、大規模修繕等が行われる施設については、全照明をLED化していく予定だという。
交換した役場のLED照明。
面積約24km2の新島は、島の周囲を黒潮暖流に囲まれ、気温の日較差・年較差が小さく、“常春の島”ともわれる。年間降雨量は3000mmほどと水資源にも恵まれ、島内は緑に覆われている。自然豊かな島しょ地域だからこそ、温暖化対策事業としては、緑化等を行うよりも、事業開始当時に村内でも徐々に導入が始まっていた施設内照明のLED化の方が効果的と、事業が設計された。
現在、新島村ではNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業である「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」に協力しています。同事業は、離島である新島村の電力系統を実証フィールドにして、風力発電を中心とした再生可能エネルギーを電力系統に出力する際の変動対応について検証し、再生可能エネルギーを最大限受け入れるための系統システムの実証試験を行っています。
風力発電は、尽きることのない風のエネルギーを活用することから資源枯渇の心配がなく、有害物質を出さない地球環境にやさしいエネルギーであり、化石燃料に代わるエネルギー源の一つとして期待されています。ただ、“風任せ”の発電方式では、気象条件等による出力の変動が大きく、将来、大量に電力系統に連系された場合、電力の安定供給に悪影響を及ぼす可能性があります。
こうした技術的課題やその解決策を明らかにして、「風任せの発電」から出力を予測・制御・運用することが可能な変動電源に改善することで、再生可能エネルギーの連系拡大を目指しています。
同事業の実施に当たり、島内に風力発電施設や太陽光発電機等が設置されています。
NEDOの実証実験事業で若郷地区に建った風力発電施設。
「これら再生可能エネルギーの設備が建ったことで、村内の環境に対する意識の変化が徐々に起こって、再生可能エネルギーの普及やエコ活動の推進に向けた機運が高まっています。オール東京62市区町村共同事業の助成金を活用させていただいて、まずは村が率先して村営施設の省エネ化を進めることで、村全体にもLED照明などの環境に配慮した省エネルギー機器等の普及が進んでいってほしいと大いに期待しています。」
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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