トップページ > 環境レポート > 第34回 中野区:子どもから大人まで楽しめる展示や実演を通じて、省エネ行動を紹介(なかのエコフェア2016)
2017.03.24
「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第34回は、区主催で毎年11月に開催している「なかのエコフェア」について取り上げます。「なかのエコフェア」という名前で実施するようになって8年目となった2016年は、区民団体や事業者、区の担当部署を含む16団体が省エネや環境にやさしい製品の紹介などをメインに出展しています。
事業の概要とねらいについて、担当者の話を聞きました。ぜひ、ご一読ください。
JR中野駅を降りると、北口に大きくそびえる白いビルが目に入る。催事場などに使われる中野サンプラザだ。そのすぐ隣に建つ9階建ての建物が、中野区役所の本庁舎。改札口を出て徒歩3分ほどとアクセスも抜群だ。
2016年11月12日(土)、ここ区役所正面玄関前広場で「なかのエコフェア2016」が開催された。来場者数は約1,600人。天気にも恵まれ、盛況な一日となった。
「なかのエコフェアは、毎年11月中旬に開催しているイベントです。“スマートエコシティなかの”をスローガンに、環境負荷の少ない低炭素社会の実現をめざして、区民や事業者の環境配慮行動の推進に向けた普及啓発を目的としています。出展各団体が、子どもから大人まで楽しめる展示や実演を通じて、省エネ行動への意識や具体的取り組みについて紹介しています。中でも子どもたちに人気だったのが、実物の清掃車を搬入して実施したごみの積み込みデモンストレーションでした。11時からと14時からの2回、実演がされました。運転席に乗り込んで撮影もしていただけたので、子どもたちを中心に行列ができていました。ステージイベントでも毎年恒例となった環境戦隊ステレンジャーのショーが子どもたちに人気でしたし、各ブースをまわって回答するクイズラリーでは、参加賞の一つとしてクチナシの苗木を配布して、こちらは特に高齢者の方々に喜んでいただけたようです」
そう話すのは、中野区環境部地球温暖化対策担当の丸山友理さんと梅田絵里子さん。
中野区環境部は、地球温暖化対策担当に加えて、ごみゼロ推進担当と生活環境担当の3担当制となっている。このうち、文字通り地球温暖化対策を専任しているのが、丸山さんと梅田さんたちが所属する地球温暖化対策担当。地球温暖化対策担当では、エコフェアの開催の他、「なかのエコポイント」の運用や、家庭向けの環境学習教材「なかのエコチャレンジ」の作成・配布、夏休みこどもエコ講座、地球温暖化防止講座、カーボン・オフセット事業の計画・運用などを担当している。
中野区役所正面玄関前広場で開催した「なかのエコフェア2016」。会場入り口より望む。
会場入り口には、清掃車の実物を搬入して、ごみの積み込みデモンストレーションを実施。運転席に乗り込んで撮影もできたため、子どもたちを中心に長い行列ができる盛況を呈した。
ステージイベントの環境戦隊ステレンジャーショー。もったいない編と環境エクササイズ編の2つのショーが時間を分けて実施された。
平成21年度から開催している「なかのエコフェア」は、昨年度までの会場だった中野サンプラザ前から区役所正面玄関前に会場を移しました。スペース的には少し狭くなったのですが、その分、逆に集約されて、全体を見渡せるようになったという利点もありました。サンプラザ前の会場ではどこからでも入場できましたが、その分、エコフェアを目的に来た方々以外の来場はしにくくなっていたのかもしれません。今回は入り口が一つになって、クイズラリー用紙やチラシを配布する職員を配置して呼び込みをしたこともあって、通りすがりの人にも入ってもらいやすくなったように感じています。来年度以降も区役所前での開催を予定しています」
会場を変更したこともあって、春先から出展ブース数の確認や会場レイアウトの検討を重ねていった。6月にはこれまで出展してきた区民団体・事業者を中心に出展の意向調査を行うとともに、新たに出展してもらう事業者等の新規開拓の声掛けもしていった。7月には出展内容に関する企画書を提出してもらい、10月半ばに区役所内の会議室で全体会合を開催、各出展内容のプレゼン及び当日の注意事項を説明して、当日に臨んだ。
会場レイアウトは、下図のように、会場内を取り囲むように合計16のブースが並んだ。前年までは各ブースが背中合わせになって縦に並んでいたが、ブース間の移動も導線がとりやすくなったといえる。
出展団体には、それぞれ展示や実演など工夫を凝らした出展をしてもらい、全体企画としてクイズラリーを企画し、各ブースを巡ってもらうように工夫した。
例えば、NPO法人中野・環境市民の会では、前年に実施した「グリーンコンシューマー全国一斉店舗調査」の結果から、充電式電池の販売店舗の割合を3択式のクイズにしている(①「95%」、②「48%」、③「22%」より選択)。また、区北部の公園で90年代から自然観察会をしている「森の学級」は、日米親交としてワシントンに贈った桜の木の返礼として贈られた木の名前を問うクイズだった。①「ヒマラヤスギ」、②「ヤナギ」、③「ハナミズキ」の3択だが、さて、わかるだろうか。同会がフィールドにしている公園内にもその由来の丘があるという。
中野区消費者団体連絡会では、世界中の海に漂うプラスチックごみの現状についてのパネル展示を展開したが、展示内容に合わせて「細かくなったプラスチック」の名称を聞く問題を出題した。「マイクロホン」か「プランクトン」か「マイクロプラスチック」か、答えはいかに。さらに、東京都水道局中野営業所のブースは「水deエコ」がテーマだったが、水道水の使用で1m3当たりに出るCO2排出量を当てるのがクイズの問題になった(①「約20kg」、②「約2kg」、③「約0.2kg」)。
クイズラリーの参加賞のうち、クチナシの苗木は区で用意したが、そのほかにも出展した区民団体や事業者からの協賛品を募っており、清掃車の向かいに設置したゴールブースで自由に選んでもらったという。
ステージイベントでは、前述の環境戦隊ステレンジャーショーを2回実施した他、ごみ減量クイズとなかのエコポイント表彰式も行われた。
会場レイアウト図。会場内を取り囲むようにブースを並べた。
クイズラリーの参加賞コーナー。出展した区民団体や事業者からの協賛品の中から選べる。子どもたちの一番人気は、清掃車のミニカー。
※(クイズの答えは、順番に「48%」「ハナミズキ」「マイクロプラスチック」「約0.2kg」。このほか全15問が出題された)。
エコフェアのチラシを見ると、「なかのエコポイント 50ポイントもらえます!」とある。エコフェア当日にも、区地球温暖化対策担当のブースで事業のPRとなかのエコポイント参加登録、既登録者向けの50ポイントシールの配布の手続きをした。
「なかのエコポイントは、区内の家庭からのCO2排出量削減をめざして、平成23年度から区が実施している事業です。電気とガスの検針票を1年分集めて提出していただき、前年度比から削減量を算出して、それに応じたポイントを付与するという仕組みで、現在、当担当でも特に力を入れている事業です。前年比なので、最初はぐっと減らすことができても、その後さらに減らしていくのは難しくなります。そこで、毎月行動レポートを記入してもらうことで、月々150ポイント、1年間で最大1,800ポイントを付与して、継続的な取り組みをしてもらえるように呼びかけています」
貯まったポイントは、500ポイントごとに500円分の中野区内共通商品券やクオカードなどに交換できる。現在、区内の約1900世帯が登録しており、エコフェアのステージイベントでは成績上位者の表彰式が行われた。
なかのエコフェア2016のチラシ。
エコフェアのステージイベントとして実施したエコポイント成績上位者の表彰式。
電気・都市ガスの節電・省エネの取り組みに加えて、26年度からはエコマークを集めてエコポイントを貯めるメニューも開始した。購買時にエコマーク付きの商品を選らんでもらい、容器包装等に印刷されたエコマークを切り取って、1枚ずつ台紙に貼り付けていく。マーク1枚当たり5ポイントになり、小学校PTAや事業所など、取り組む団体も広がっている。ポイントは共通だから、個人で節電・省エネとともにエコマーク収集に取り組む人もいる。自治体として初めてエコマークを活用した取り組みを実施したということで、26年度にはエコマークアワードの特別賞を受賞した。
「なかのエコポイントに参加して、ポイントをもらおう!」のチラシ。裏面は切り取ったエコマークを貼り付ける台紙になっている。
なかのエコフェアで、地球温暖化対策のアピールとして実施している取り組みの一つに、カーボン・オフセットがある。開催に伴って排出されるCO2量を削減するとともに、どうしても排出してしまう分を森林整備などによるCO2吸収量によって埋め合わせる。
カーボン・オフセットの対象は、出展者の移動に係るエネルギー使用量、会場使用における電力使用量、そして印刷物の制作にかかるエネルギーの使用量。もちろん、単にオフセットするだけでなく、出展者には、移動時の自動車利用の抑制や節電、資機材の搬入・搬出時の効率化など、CO2排出量の削減努力を呼びかけてきた。
そうして算出された開催に伴うCO2排出量は、約1トン。福島県喜多方市の「喜多方市森林整備加速化プロジェクト」で創出されたJ-クレジットを購入し、CO2排出量を見える化することで、さらなるCO2排出量の削減をめざす。
区地球温暖化対策担当のブースでは、J-クレジットの購入先である福島県喜多方市の間伐材を展示したほか、間伐材を使ったクラフトキットをクイズラリーの参加賞の一つとして提供してもらった。あいにくスケジュールが合わず、今年度の喜多方市からの出展はかなわなかったが、今後は喜多方市の出展も依頼していきたいという。
喜多方市との縁は、区と地方都市が連携することにより相互の強みを生かし、弱みを補うことで課題の解決をめざし、豊かで持続可能な地域社会をつくるため、民間活力を利用したさまざまな連携事業を行うことを目的とした「なかの里・まち連携事業」の自治体のひとつとして連携を行っていることによる。
「なかの里・まち連携事業」は、喜多方市の他に茨城県常陸太田市、群馬県みなかみ町、千葉県館山市、山梨県甲州市と、観光交流、経済交流、環境交流を目的に連携している。中でも、環境交流を目的として森林資源を保有するみなかみ町と喜多方市とは「中野の森プロジェクト」として、現地の森林整備(植林や間伐支援)を行っている。みなかみ町では、牧場跡地に設けた「中野の森」(約15ヘクタール)で5年間にわたって年間約6千本の植林を行う協定を結んだ。5年間の森林整備によるCO2吸収量として136.5トンが群馬県から計画認証されている。一方、喜多方市とは、間伐した森林によるCO2吸収分のJ-クレジットを年間60トン分購入し、さらなる間伐を支援する。
なかのエコフェアの開催に伴うCO2排出も、区内のCO2排出量の一部としてオフセットされるとともに、温暖化対策としてのカーボン・オフセットの取り組みをアピールする役割を担っているというわけだ。
「なかのエコフェア2016」のカーボン・オフセット証明書
間伐材・クラフトキットの展示。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
オール東京62市区町村共同事業 Copyright(C)2007 公益財団法人特別区協議会( 03-5210-9068 ) All Right Reserved.