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2017.10.06

第40回福生市:市民との協働で進める温暖化対策や環境への取り組み(ふっさ「エコくらし」の事例より)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第40回は、福生市が12月の地球温暖化防止月間に合わせて実施している、家庭のCO2削減啓発事業について紹介します。
 同事業では、公民館を会場に開催した地球温暖化防止セミナー「家庭でできる省エネのコツ」、市役所ロビーで実施した地球温暖化防止キャンペーン、これらのイベントに合わせて作成・発行した省エネ啓発パンフレットの『ふっさ「エコくらし」』の配布などを柱事業として行ってきました。事業の特徴は、市民団体「ふっさ環境市民会議」との「協働」とのこと。同事業の概要及びねらいについてお聞きしましたので、ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2017年9月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

市民団体との協働で作成・発行された省エネ啓発パンフレット『ふっさ「エコくらし」』

 福生市では地球温暖化対策の一環として、12月の地球温暖化防止月間に合わせた普及啓発事業を実施している。事業を進めるに当たって、省エネ啓発パンフレット『ふっさ「エコくらし」』を昨年(平成28年)12月に作成・発行した。コンセプトは、“始めよう! 楽しくかしこい家庭の省エネ”、副題として「日々のくらしを見直し CO2削減」と掲げている。
 パンフレットでは、家庭の節電・省エネのための3つの方法として、

  • 「減らす」(家電製品の無駄な使用を控えたり、消費電力が小さくなる使い方をしたりすることで、消費電力を減らすこと)
  • 「ずらす」(朝のうちに掃除機をかけたり、消費電力の大きい家電製品の同時使用を避けたりするなど、電気使用量の多い時間帯を避けること)
  • 「切り替える」(省エネ型製品の買い替えや太陽光発電をはじめとした自然エネルギーの利用など、他の方法に切り替えること)

 を提示し、2つ折りにした内側にはリビングルームやキッチン、水まわりなど、具体的な生活の場面に応じて取り組める3つの方法のアイデアについて紹介している。
 印刷部数は、3000部。市役所をはじめ、図書館や公民館、体育館、地域会館、児童館など市内公共施設約20施設に置いている他、12月の地球温暖化防止キャンペーンや6月のふっさ環境フェスティバルなど環境関連イベントなどでも配布。公共施設で在庫を切らさないように補充する分も含めて年間1000部ほどの配布を見込んでいる。
 パンフレットの作成に当たっては、市民団体「ふっさ環境市民会議」が企画・作成で大きな力を発揮した。
 「福生市の地球温暖化防止対策としては、家庭のCO2削減が大きな課題になっています。国レベルでも、東京都内でも同じですが、実際にオール東京62市区町村共同事業で毎年出されている温室効果ガス排出量(推計値)の算出結果を見ても、どこの市区町村でも家庭のCO2がなかなか減っていきません。これはやはり、市民一人一人が意識を持っていかないといけないということで、家庭のCO2削減を呼びかけるためのツールとして作成しました」
 福生市生活環境部環境課課長補佐の名取明美さんと、環境係の青木陽子さんがそう説明をする。

地球温暖化防止月間に合わせて作成された、『ふっさ「エコくらし」──日々のくらしを見直し CO2削減』(平成28年12月発行) ※クリックで拡大表示します

環境基本計画改定のための市民会議を母体にしてできた市民団体、「ふっさ環境市民会議」

 「ふっさ環境市民会議」は、平成28年3月に福生市が策定した環境基本計画第2期中期実施計画に向けて、市が呼びかけ、立ち上げた環境基本計画等改定市民会議を前身にする市民団体だ。
 改定市民会議では、平成27年3月に市民提言を取りまとめており、市では、これを踏まえて、平成28年度から32年度までの5年間に行政として取り組むべき施策・事業を整理して、第2期中期実施計画を策定した。改定市民会議としては、提言の取りまとめによってその役割を全うしたことになるが、その後も引き続き、実施計画の推進に向けた活動を継続するため、市民団体「ふっさ環境市民会議」を立ち上げた。
 「改定市民委員の皆さんは、提言ができた後も、“行政に対して、市民からの提言を出すだけでなく、自分たちも計画を推し進めていくメンバーの一人ひとりとして活動していきたい”という明確な意思をお持ちでした。28年度からの5年間の計画として始まった第2期中期実施計画に合わせて、「ふっさ環境市民会議」という団体を自発的に立ち上げて、計画を後押ししていくような活動を自分たちもやっていこうと言っていただいています。環境課でも、オール東京62共同事業の予算を活用して、協働で事業を進めています」
 提言には、第2期中期実施計画に向けた、3つの「新・戦略プロジェクト」が提示された。その1つとしてあげられたのが、「家庭のCO2削減プロジェクト」。これを踏まえて、実施計画にも、家庭のCO2排出削減を目標として、市民一人当たりのCO2排出量の目標値が設定された。その達成のために実施しているのが、『ふっさ「エコくらし」』の発行などを通じた地球温暖化防止啓発事業なので、「ふっさ環境市民会議」と協働して進めていくのも自然な流れと言える。

「福生市環境基本計画 第2期中期実施計画」(平成28年3月)の表紙

「福生市環境基本計画 第2期中期実施計画」(平成28年3月)の表紙 ※クリックで拡大表示します

家庭のCO2削減の取り組みは、第2期中期実施計画において、パートナーシップ事業の一つとして位置づけられている。

家庭のCO2削減の取り組みは、第2期中期実施計画において、パートナーシップ事業の一つとして位置づけられている。 ※クリックで拡大表示します

環境学習講座で実施したワークショップから出た市民の声や気づきをパンフレットに生かして作成

平成29年度環境学習講座のチラシ。前年度のワークショップが好評だったため、今年も2日目にワークショップの時間をとっている。講師は「ふっさ環境市民会議」の代表が務める。

平成29年度環境学習講座のチラシ。前年度のワークショップが好評だったため、今年も2日目にワークショップの時間をとっている。講師は「ふっさ環境市民会議」の代表が務める。※クリックで拡大表示します

 「冒頭申し上げたように、家庭のCO2削減が必要だとの問題意識があって、そのためには、市民一人ひとりに訴えかけていくための普及啓発のパンフレットが必要だということになりました。年度当初から話し合いを始めて、12月の地球温暖化防止月間に合わせてまとめたのが、『ふっさ「エコくらし」』です」
 講座の企画では、市民の思いや気づきをパンフレットの中に取り込むための仕掛けが提案された。
 福生市では、平成25年度から毎年10月に環境学習講座を実施しているが、平成28年度の講座テーマを「楽しくかしこく、家庭の省エネ」として、講座に参加した市民とともに、どうしたら省エネ・節電ができるか話し合うワークショップを企画して、話し合いの中から出てきた参加者一人ひとりの素朴な思いや気づきをパンフレットに生かしていこうというアイデアだ。
 「ふっさ環境市民会議の代表の方は、“市民だからこそできることがある”と常々おっしゃっています。そうした点について知恵を出し合う場にしたいということで、今回初めてワークショップ形式を取り入れた講座にしました。行政としてやるべきことやできる部分がある一方で、市民の強みを生かしてできることについて多くの人たちと共有し、考えていきたいという発想です。これは、私たち行政職員としても非常に嬉しいことです。どうしても行政だけではできない部分もありますから、そこは一緒に手を携えて問題解決をしていければと思っています」

 講座が終わった後、講座で出た意見をまとめたり、既存のパンフレットなども参考にしたりしながら、福生バージョンとしてまとめていった。市でも広報の職員の協力を調整したり、参考資料の出典確認の手続きをしたりと役割分担をしながら、普及啓発パンフレット『ふっさ「エコくらし」』が完成した。

環境マネジメントシステムの市民監査が協働の背景の一つにある

 平成28年度の家庭のCO2削減啓発事業では、普及啓発パンフレット『ふっさ「エコくらし」』の発行・配布を柱事業の一つとして、他にも2つの事業が実施された。
 『ふっさ「エコくらし」』は、地球温暖化防止を呼び掛ける普及啓発ツールとして、12月の地球温暖化防止月間に間に合わせて作成・発行したものだが、これを活用して、12月14日(水)には市役所のロビーで、地球温暖化防止キャンペーンのパネル展も実施している。
 同キャンペーンは、「ふっさ環境市民会議」のメンバーがまとめたパネル展示の他、環境クイズの企画、できたてほやほやの『ふっさ「エコくらし」』の配布などを通じて、関心を持ってもらえるように工夫しながら来庁者に呼びかけた。

市役所ロビーで実施した、地球温暖化防止キャンペーンで来庁者に説明する「ふっさ環境市民会議」のメンバー。

市役所ロビーで実施した、地球温暖化防止キャンペーンで来庁者に説明する「ふっさ環境市民会議」のメンバー。

地球温暖化防止キャンペーンのパネル展示を前にする「ふっさ環境市民会議」のメンバーたち。

地球温暖化防止キャンペーンのパネル展示を前にする「ふっさ環境市民会議」のメンバーたち。

 もう一つの事業が、これに先立つ12月3日(土)に福生市公民館白梅分館で開催した、地球温暖化防止セミナー「家庭でできる省エネのコツ」。講師は、クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)の講師派遣制度を活用したが、そもそも講師派遣を受けるという案も会のメンバーが持ち込んだものだった。申し込み手続きも、会のメンバーが申請して、市としても相談に乗ったり、協力の仕方について話し合ったりしたが、企画の内容等は「ふっさ環境市民会議」主導で進めていく形の協働事業となった。

地球温暖化防止セミナー「家庭でできる省エネのコツ」(平成28年12月3日開催)のチラシと、セミナー当日の様子。
地球温暖化防止セミナー「家庭でできる省エネのコツ」(平成28年12月3日開催)のチラシと、セミナー当日の様子。

地球温暖化防止セミナー「家庭でできる省エネのコツ」(平成28年12月3日開催)のチラシと、セミナー当日の様子。

 核になる人たちとの関係性ができてきた背景の一つに、福生市の環境マネジメントシステム運用があったと、名取さんは言う。
 「福生市では、平成26年度から『F-e(Fussa environmental management system)』という環境マネジメントシステムを運用していますが、これは平成20年度から6年間運用してきた環境自治体会議の『LAS-E(Local Authority's Standard in Environment)』を土台として、業務や事業における効率的かつ効果的な環境負荷低減の取り組みを推進する、福生市独自の環境マネジメントシステムとして構築したものです。LAS-Eからの特徴の一つとして、市民が監査に関わる仕組みがあげられます。総勢20名ほどの監査チームのうち半分ほどを市民監査員が占めて、市の環境マネジメントシステムがきちんと運用され、PDCAサイクルが適切に機能しているか、監査してもらっています。その事務局を環境課が務めてきた縁で、市民監査員の方々とのかかわりも深くなっていきました。先にお話しした環境学習講座など市民ならではの取り組みを進めたいと提案があり、講座の講師も引き受けてくださっています」
 この市民監査チームのメンバーが、環境基本計画改定の際には改定市民会議の委員として参加し、現在は市民団体「ふっさ環境市民会議」の中心メンバーとして関わっている。

事業ごとにパートナーとなる団体がいて、市民だからこそできるところで協働してくれる

 家庭のCO2削減プロジェクトでは、今年度(平成29年度)も12月に地球温暖化防止セミナーの開催を計画している。
 一方、これとは別に、10月にも「ふっさ環境市民会議」との協働事業によるセミナーの開催を計画している。
 「10月28日(土)に『「環境と共生」のまちづくりセミナー』というセミナーを開催します。福生の自然と遺産・文化を活かし、楽しさを育む環境にやさしいまちづくりについて考えようと呼びかけるものです。平成27年3月の市民提言では、『家庭のCO2削減プロジェクト』など3つのプロジェクトを提示していますが、その1つにあげられた『散策ルートマップづくりプロジェクト』の事業として取り組んでいます」
 プロジェクトの始動に当たって、プロジェクトメンバーだけでマップづくりを進めるのではなく、まずは関心のある人に呼びかけて、認識を共有する場をつくろうと企画した。先進的にマップづくりに取り組む埼玉県和光市のNPO法人から講師を招いて、セミナーで得た情報や話し合いをもとにマップづくりを進めていく計画だ。
 「和光市のNPO法人がマップづくりの良い活動をしているということも、会の皆さんが調べてきた情報です。自主的に連絡を取りあって、発表会を聞きに行って、講師として福生に来てもらいたいと交渉してきたのです。意欲的・主体的に、率先して動いてくださる方がたくさんいらっしゃって、良い協働のスタイルで事業が進められているのは、とてもありがたいことです」

「環境と共生」のまちづくりセミナー

【日時】10月28日(土)午前10時~正午
【場所】もくせい会館3階
【対象】市内在住・在勤・在学の方
【定員】30人程度
【主催】ふっさ環境市民会議(事務局:環境課環境係)
【講師】NPO法人「和光・緑と湧き水の会」理事・理学博士 高橋 勝緒氏
【申込み】10月27日(金)までに環境係 電話042-551-1718へ

 オール東京62市区町村共同事業の助成金を充てて実施する事業は、他にも、緑のカーテンや花いっぱい運動、環境フェスティバルなどがある。どれも継続的に実施してきた事業で、それぞれの事業ごとにパートナー団体があって、協働で事業を進めている。そうした中、今回紹介した家庭のCO2削減啓発事業が、平成28年度に新たに立ち上がったわけだ。
 パートナー団体は、例えば、花いっぱい運動では、平成2年設立の「ふっさ花とみどりの会」と長年協働してきた。平成29年度で第15回目の開催となったふっさ環境フェスティバルは毎年6月の環境月間に多摩川中央公園の野外会場で開催しているが、実施に当たっては実行委員会を組織して、例年11月頃から7月の反省会まで会議を重ねて、協働開催している。
 協働事業として進めるため、夜の会議や土日のイベントなど、職員にとっては大変な面も少なくはないが、その分やりがいはあると名取さん、青木さんは話す。
 「市民と協働でやっていこうというスタンスですが、『協働』という言葉がない時代から、市民と共に進めていく姿勢を重視してきました。行政だけが街をつくるのでも良くしていくのでもない、市民と一緒につくっていくんだという視点が、その頃からあったと思っていますし、それを今でも引き継いでやっているのだと思います。協働推進課という部署があり、職員の中でも“協働って何なんだ”というところから学び、今は市民と一緒に良い街をつくっていくという考えがしっかりと根づいていると思います」

 行政でないとできないこと、行政だからできることがある一方で、市民だからできることもたくさんある。互いに良い面を生かして、補い合っていくことが協働事業を進めていく上で大事なポイントになる。そうした発想を持って協働してくれる市民もたくさんいるのが、福生市にとって大きな力になっているという。

7月20日に東京都からの呼びかけで実施した、打ち水イベント「福生打ち水日和」。水は都下水道局の再生水を活用し、ひしゃくやのぼり旗、はっぴなども都からの提供があった。当日は、職員も浴衣を着て、市長とともに一斉に打ち水をした。「ふっさ環境市民会議」のメンバーも知り合いに声をかけて集まり、打ち水を盛り上げに一役買った。
7月20日に東京都からの呼びかけで実施した、打ち水イベント「福生打ち水日和」。水は都下水道局の再生水を活用し、ひしゃくやのぼり旗、はっぴなども都からの提供があった。当日は、職員も浴衣を着て、市長とともに一斉に打ち水をした。「ふっさ環境市民会議」のメンバーも知り合いに声をかけて集まり、打ち水を盛り上げに一役買った。

7月20日に東京都からの呼びかけで実施した、打ち水イベント「福生打ち水日和」。水は都下水道局の再生水を活用し、ひしゃくやのぼり旗、はっぴなども都からの提供があった。当日は、職員も浴衣を着て、市長とともに一斉に打ち水をした。「ふっさ環境市民会議」のメンバーも知り合いに声をかけて集まり、打ち水を盛り上げに一役買った。

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