トップページ > 環境レポート > 第41回 北区:美化ボランティア制度を活用して区民主体の景観づくりの取り組みを支援(花いっぱいまちづくり事業)
2017.10.26
「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
第41回は、北区の花のあるまち推進事業について紹介します。同事業では、区民の美化ボランティア団体により区内を通るJRの駅周辺や、道路、公園、区民施設等で花苗等の植え替えなどの管理を行っています。
事業の概要及びねらいについて、担当者のお話を伺いました。ぜひ、ご一読ください。
※本記事の内容は、2017年10月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
東京都北区は、名前の通り、東京23区の北部に位置し、荒川を挟んで埼玉県と接している。都心にほど近く、区内にあるJRの駅数は都内最多の11駅。東京メトロや都営地下鉄、都電荒川線を含めて多くの交通が行きかい、区内のほとんどの住宅地は、駅から徒歩圏内と便利な立地にある。
地理的には、東北本線沿いに南北に連なる崖線を境にして、南西側は武蔵野台地の端に当たり、北東側は沖積平野が広がり、荒川、墨田川、石神井川、新河岸川の4河川が、豊かな水辺空間を形成している。
こうした自然景観は、飛鳥山や旧古河庭園などの名勝・旧跡や都電の走る風景などとともに、「北区らしさ」として多くの区民から親しまれている。
北区では、これらのすぐれた都市景観を区民共有の財産として保全していくため、平成6年に北区都市景観づくり条例を制定して自主的な景観行政を進めていった。その後、平成16年に景観法【1】が施行されたことを踏まえて、平成27年より同法に基づく新たな北区都市景観づくり条例を制定し景観行政団体【2】に移行し、景観計画に基づく新たな景観行政を進めている。
今回紹介する北区「花いっぱいまちづくり事業」は、北区基本計画事業の一つとして街中の美化・景観の向上を図ることを目的に実施しているもの。事業について、北区生活環境部環境課自然環境みどり係の峰岸聡係長に話を聞いた。
「花のあるまち推進事業は、北区美化ボランティア制度を活用して、区内の駅前広場や公園・児童遊園、道路などの公共施設を季節感ある草花でいっぱいにすることで、街中の美化・景観の向上を図る事業です。北区のイメージアップにつながるよう、春(5~6月)と秋(11月)の2回に分けて花苗を植えています。美化ボランティア団体の皆さんには、区から花苗や肥料、用具、腕章などを支給するほか、活動表示板を設置したり傷害保険の加入等の手続きを行ったりしています。この事業は、北区基本計画事業として実施する事業の1つでもあります」
北区では、平成11年に策定した北区基本構想において、“ともにつくり未来につなぐときめきのまち ─人と水とみどりの美しいふるさと北区”という将来像を描いている。この将来像を実現するため、10年を計画期間とする「北区基本計画」と3年を計画期間とする「北区中期計画」を策定して、総合的、計画的、効率的な行政運営を展開してきた。現在は、平成27年3月に策定した「北区基本計画2015」(計画期間は、平成27年度から平成36年度の10年間)に基づいて、大きく変化する社会情勢やライフスタイルに応じた施策の新たな方向性を示して、区民一人一人が地域への愛着を持つことができるように、“人が輝く、まちが輝く、未来が輝くふるさと北区”の実現に向けたさらなる取り組みを進めるとともに、次世代への着実な継承をめざしている。
同計画の4つの基本目標の一つに、基本目標3『安全で快適なうるおいのあるまちづくり』を位置付け、具体的な事業の一つに、「花いっぱいまちづくり事業」が定められている。所管は生活環境部と土木部。土木部が道路や公園等における美化ボランティアを担当するのに対して、生活環境部では駅前のプランター・花壇や親水公園、屋上ガーデンなどで実施する美化ボランティアとの協働で事業を進めている。
王子駅北口の北とぴあ通り沿いに設置されたプランター。放置自転車対策を兼ねて地元商店会が美化ボランティア団体として協定を締結し、緑の協力員や区職員も参加してプランターを設置した。
花のあるまち推進事業の舞台の一つになっている花壇が整備されている「音無親水公園」は、JR王子駅から徒歩1分、石神井川の旧流路に整備された公園だ。石神井川は、王子付近では「音無川」と呼ばれて、春のサクラ、初夏の新緑、秋の紅葉など四季の行楽の名所・景勝の地として江戸時代の浮世絵にも数多く描かれてきた。昭和30年代から始まった河川改修工事によって、現在は飛鳥山公園の下に開削されたトンネルを通る暗渠として流れているが、音無橋から北側に逸れる形で残された旧流路の地形を生かした細長い窪地に循環水を流し、散策路を整備した「音無親水公園」が開園した。
緑陰に囲まれた公園内には、かつてこの付近にあった王子七滝のひとつ「権現の滝」の再現や、明治40年に架けられ昭和33年の狩野川台風で流された舟串橋の復元など、数々の特色ある施設とさくら並木で彩られ、都市公園の模範として「日本の都市公園百選」の一つに選定された。
両岸を石垣に囲まれた親水公園から岸辺にあがると、すぐ脇には車が行きかう明治通りが通っている。片側3車線の大通り沿いの歩道からは木々にさえぎられて親水公園の様子を見ることはできないが、飲食店が建ち並ぶ手前に開けた緑地が見下ろせる場所があり、そこに整備された色鮮やかな花壇が、同事業の活動フィールドの一つになっている。
区民主体で花植えから水やりなどの維持管理作業を担い、地域に親しまれる緑地として整備している花壇だ。
旧流路の窪地を整備した音無親水公園。緑陰に囲まれた園内はすぐ脇を明治通りが通る都心の公園とは思えない落ち着いた雰囲気を醸している。
明治通りの歩道から望む花壇。
音無親水公園の花壇を整備する美化ボランティア。区職員もいっしょになって作業した。
すぐ脇には片道3車線の大通りが走り、正面にはJR京浜東北線の高架が間近に見える。飲食店が立ち並ぶ手前から開けた緑地が見下ろせる場所があり、眼下に色鮮やかな花壇が広がる。
音無親水公園から明治通りを挟んだ反対側に広がっているのが、江戸幕府八代将軍の徳川吉宗が約300年前の享保の改革で施策の一環としてサクラの名所に仕立て上げた名勝地・飛鳥山。その後、明治6年の太政官布達によって、上野・芝・浅草・深川とともに日本最初の公園に指定された。
駅前から歩いてすぐ、麓の公園入り口から飛鳥山山頂間に設置された昇降設備「アスカルゴ」(あすかパークレール)の山頂駅を降りると、来園者を歓迎するように広がる花壇が設置されている。この花壇の一部が花いっぱいまちづくり事業によって、美化ボランティアとの協働で整備されている。
飛鳥山公園の花壇。奥にアスカルゴの山頂駅看板が見えている。
あすかパークレール「アスカルゴ」より、眼下を望む。正面にJR京浜東北線の高架が横切る。その下をくぐる片側3車線の大通りが、明治通り。音無親水公園は、明治通りを挟んだ向かい側の旧流路に整備されている。
王子駅北口に聳える17階建て高層ビルは、北区の産業の発展と区民の文化水準の高揚を目的として建設された北区のシンボル「北とぴあ」。東京メトロ南北線5番出口に直結したエントランス(北とぴあサンクンガーデン花壇)や5階屋上ガーデンにも、美化ボランティアが維持管理する花壇が整備されている。
なお、環境課所管ではないが、JR王子駅北口から新幹線の高架に沿って「北とぴあ」に向かう商店街沿いには、土木部道路公園課との協定締結によって地元商店会が整備しているプランター花壇が並んでいる。北とぴあ通りの愛称で沿道の住民から親しまれているこの通りは、駅にほど近いこともあって、かつては自転車が雑然と置かれて、環境や景観上の課題となっていた。解決策として地域住民等に呼びかけて始まったのが、美化ボランティア活動だったという。放置自転車クリーンキャンペーンとも連携して、道路に沿ってプランターを設置。見違えるようにきれいになった。
北区のシンボル「北とぴあ」に直結する地下鉄出口に面して配置された花壇も美化ボランティアが整備する花だ。
北とぴあの5階に整備された屋上ガーデンに咲く花々。右写真は6階から望む屋上ガーデンの花壇。
春・秋に季節の花を植えて、街を彩る「花いっぱいまちづくり事業」。区政の基本姿勢である「区民とともに」の重点戦略の一つとして、「花*みどり」をキーワードに、住む人が愛着を感じ、訪れる人にもやすらぎやうるおいを与える魅力ある都市空間を区民と協働しながら整備する事業として推進している。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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