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2018.01.25

第42回狛江市:狛江駅北口に残された0.476haの緑地を市民とともに保全・活用(狛江弁財天池特別緑地保全地区の保護と啓発活動)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第42回は、狛江市の特別緑地保全地区の保護と啓発活動について紹介します。
 狛江駅北口からすぐのところに広がる、「狛江弁財天池特別緑地保全地区」。良好な自然環境が残され、通勤者をはじめ、市民にとって四季折々の自然を楽しむことのできる貴重な緑地として親しまれている。
 同緑地の保全及び啓発活動について、担当者より話を聞きました。ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2017年12月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

狛江駅北口に広がる自然豊かな緑地保全地区

 小田急線小田原線狛江駅の改札を出て、北口ロータリーから左手を見ると、こんもりとした緑地が目に入る。近寄ると、柵の内側、手前に竹が林立し、奥にはきれいに整備された雑木林が広がり、木々の間からは池面も見えている。柵にかかった木製看板には、「狛江弁財天池特別緑地保全地区」と大書されている。
 柵伝いに迂回すると、木々の間を歩けるように散策路も整備されている。柵に囲まれているのは、元陸軍大将荒木貞夫邸のあった面積約4760m2(0.476ha)の緑地で、普段は閉鎖管理地区として施錠され、立ち入ることができない。ただし、毎月第2日曜日を定例の開放日として、市民はもとより市外の人にも公開・開放されている。緑地内には野鳥や昆虫も多く、池を中心に多様な植生が自然に近い状態で繁っていて、四季折々の自然を楽しむことができる。

 隣接する曹洞宗寺院の雲松山泉龍寺の境内及び弁財天池を合わせた約2.1haが東京都の緑地保全地区に指定されたのは昭和62(1987)年のこと。その後、東京都が荒木邸敷地を買収して整備に着手するまでには10年近い年月を要したが、平成11(1999)年の春から3年間をかけて整備された緑地は、平成14(2002)年4月から、市と協定を結んだ狛江弁財天池特別緑地保全地区市民の会(以下「市民の会」)が保全・管理作業と定期的な開放を行ってきた。ここ、狛江弁財天池特別緑地保全地区は、「私たちがつくる水と緑のまち」を基本構想に掲げる狛江市の象徴として、市と市民が後世に伝えていこうとしている地区だ。
 狛江市環境政策課水と緑の係の木下元貴さんと同課環境係の関山舞さんに、緑地保全地区の保全及び啓発活動の取り組みについて、話を聞いた。

「狛江弁財天池特別緑地保全地区」と大書され、閉鎖管理地区の柵にかかる木製の看板。左手には竹が林立する。

「狛江弁財天池特別緑地保全地区」と大書され、閉鎖管理地区の柵にかかる木製の看板。左手には竹が林立する。

閉鎖管理地区の柵外には、木々の間を歩けるように散策路も整備され、通勤・通学や散策路などとして利用されている。

閉鎖管理地区の柵外には、木々の間を歩けるように散策路も整備され、通勤・通学や散策路などとして利用されている。

狛江弁財天池特別緑地保全地区は、閉鎖管理地区に隣接する弁財天池(写真)と曹洞宗寺院の雲松山泉龍寺を含む2.1haを指定している。
狛江弁財天池特別緑地保全地区は、閉鎖管理地区に隣接する弁財天池(写真)と曹洞宗寺院の雲松山泉龍寺を含む2.1haを指定している。

狛江弁財天池特別緑地保全地区は、閉鎖管理地区に隣接する弁財天池(写真)と曹洞宗寺院の雲松山泉龍寺を含む2.1haを指定している。

駅前に残された緑地は、そこに息づく生物がまわりの環境要因と結びついて、一つのシステムとして成り立っていることを知る、またとない機会を提供

 閉鎖管理地区の緑地面積は前述のとおり、4760m2。それほど広大ではないものの、樹木は80種類を数え、竹林を除く総本数は300本を超える。
 毎月の定例公開日は、10時から門を開けているという。赤色のベストを着用した会員は、朝9時半に集合して準備を開始する。門を入ってすぐの広場には展示パネルを組み立てて、会員が撮りためてきた緑地内の動植物の四季折々の写真を掲示する。訪れた人たちが、緑地の自然と生物に興味を持てるようにと紹介するものだ。開放日にタイミングよく咲いていたり、見つけたりできる生きものには、「今が見頃」などの表示も付けて、来訪者をいざなう。
 準備が整い、来場者が入ってくると、会員とともに緑地内を歩いてその時々で見られる自然を観察・ガイドする「勉強会」が開催される。講師を務めるのも会員だ。
 市民の会が2013年2月にまとめた冊子『森と泉の狛江 ~狛江弁財天池特別緑地保全地区(管理区域)』によると、門の右手に生えているカヤや緑地中央部にそびえるヒマラヤスギなどの常緑の高木をはじめ、門を入った突き当りで春先に紫色の花を咲かせるモクレン、門突き当りの右手方向で樹高5mを超しながらも自然の樹形を保つキンモクセイは、秋になると芳香を漂わせる黄色の小さな花をつけるという。人工的に掘られた「ひょうたん池」の南側にはシラカシやスダジイのうっそうとした常緑広葉樹の森が広がり、東端にはこの辺りには珍しいウワムズザクラがあって、春になると房状の白い花を咲かせる。池の周りには赤い新芽が美しいアカメガシワが散在し、新緑の明るい緑や秋に燃えるような紅葉が水面に映えるイロハモミジは池の北側を中心に25本もあるという。
 植物だけではない。季節を問わずにぎやかなヒヨドリはもちろん、メジロやコゲラ、エナガも見られるし、池にはカワセミも飛来してきている。夏から秋にかけて道端の木陰をよく見ると、枝先などにイトトンボが休んでいるのを見つけることができる。新緑のころには、ケヤキやアカメガシワの若葉を探すと、ナナフシの幼生が見つかるという。キマダラセセリやダイミョウセセリなどの蝶や、秋には鳴く虫の声も聞かれ、小さな緑地に息づく多様な動植物の姿や生態について解説しながら、緑地内をめぐっている。
 平成28年度に保全地区内で観察された生きものの種数については、植物が162種の他、虫類が104種、鳥類19種、菌類14種(市民の会観察記録より)と、狛江市が毎年まとめている年次報告書『狛江のかんきょう』に報告されている。

 図鑑で見かける生物の実物を間近に見ながら、狛江駅の目の前に残されたこの緑地に息づく生物たちが、この地の「気候・土壌・水などの環境要因と結びついて、どのように一つのシステムとして成り立っているかを知る、またとない機会となる」(「森と泉の狛江」より抜粋)と、参加を呼びかけている。

緑地内の植生(狛江市提供)
緑地内の植生(狛江市提供)

緑地内の植生(狛江市提供)

開放日には幟を立て、ゲートを開いて案内する。(狛江市提供)
開放日には幟を立て、ゲートを開いて案内する。(狛江市提供)

開放日には幟を立て、ゲートを開いて案内する。(狛江市提供)

門の目の前には管理棟が建つ。公開日には、会員が撮影した四季折々の写真をパネルにして掲示し、緑地の自然や生物を紹介している。(狛江市提供)
門の目の前には管理棟が建つ。公開日には、会員が撮影した四季折々の写真をパネルにして掲示し、緑地の自然や生物を紹介している。(狛江市提供)

門の目の前には管理棟が建つ。公開日には、会員が撮影した四季折々の写真をパネルにして掲示し、緑地の自然や生物を紹介している。(狛江市提供)

閉鎖管理地区内にある、ひょうたん池。人工的に掘った水辺空間だ。
閉鎖管理地区内にある、ひょうたん池。人工的に掘った水辺空間だ。

閉鎖管理地区内にある、ひょうたん池。人工的に掘った水辺空間だ。

コンパクトな市域内に残された緑地と南北を流れる河川緑地を緑道で結び、緑のネットワークを形成

 開放日は、毎月第2日曜日の定例開放日のほか、臨時開放日も設けている。平成28年度中には、15回の開放日に合計1,672名が緑地保全地区を訪れていると報告されている(『狛江のかんきょう』より)。
 広報の手段としては、主に市報や市のホームページで案内しているほか、フェイスブックやツィッターなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用した発信もしている。特に臨時開放日の広報は、迅速性が求められることもあって、SNSが中心になる。
 平成29年12月には、定例開放日も含めて4回の開放日が設けられた。新聞の地方版の取材が入り、記事が掲載された直後の開放日には、通常100人ほどの来訪者が400人にもなるほどの盛況となったという。駅前で市のイベントがある日などにも臨時開放して、通りがかりの人たちも含めて普及啓発に努めている。開設当初は高齢者が多かったが、バギー(ベビーカー)を押しながら参加する親子連れも見られるようになったという。
 開放日に合わせて、その時期に応じた管理作業も実施しているという。春先には竹の間引き、夏は除草、秋には落ち葉掃きなど、緑地の自然にふれあい、暮らしとのつながりを伝えることも大事にしている。

 緑地保全地区は、市内に残る貴重な緑の拠点の一つとして、狛江市の重点環境プロジェクトにも位置付けられ、「狛江の景観保全・環境美化の推進」をめざすとともに、「市民の環境活動支援の推進」の場と機会を提供する役割も担っている。
 緑地内では、日常的に動植物の記録を行うとともに、生きもの観察会により生態系モニタリングを実施している。市では平成29年度から生物多様性地域戦略策定の検討を開始して、平成31年度の策定をめざしている。当然、緑地保全地区が地域戦略上でも最重要拠点の一つとして位置づけられることになる。
 狛江市は、市域面積639haと、東京都の市の中では最も小さい(全国でも埼玉県蕨市に次いで2番目に小さい市である)。都市化が進む中で、農地や樹林地などの緑地は宅地に転用されて、大きく減少している。市域全体の土地利用現況は、宅地や道路などの都市的土地利用が9割を占め、農地や河川などの自然的土地利用は1割にとどまる。
 市境には、北側を国分寺崖線と野川、南側を多摩川が流れて、緑地保全地区はちょうど中央に位置している。旧野川と岩戸川旧水路敷は南北を結ぶ緑道となって、一部には西野川せせらぎや岩戸川せせらぎが整備されている。その中で、緑地保全地区も緑の拠点の一つとなり、緑のネットワークを形成している。生物多様性を保全していくうえでも、今後も引き続き、生態系モニタリングなどの取り組みを進めながら市民とともに保全・活用を図っていくとしている。

狛江駅北口広場から、一番に目に入るのが120本前後の孟宗竹が生える竹林。きれいに管理され、林床にやわらかな陽光が射す。風に揺れる様は、樹木とは違った風情を見せる。(狛江市提供)
狛江駅北口広場から、一番に目に入るのが120本前後の孟宗竹が生える竹林。きれいに管理され、林床にやわらかな陽光が射す。風に揺れる様は、樹木とは違った風情を見せる。(狛江市提供)

狛江駅北口広場から、一番に目に入るのが120本前後の孟宗竹が生える竹林。きれいに管理され、林床にやわらかな陽光が射す。風に揺れる様は、樹木とは違った風情を見せる。(狛江市提供)

狛江市では、多摩川河川敷が市街化調整区域である以外、すべてが市街化区域となっており、それぞれの地域で重点的な緑化の推進が求められている。このため、市域全体を緑化重点地区と位置づけ、緑の将来像の実現に努めるとしている。(狛江市緑の基本計画より)

狛江市では、多摩川河川敷が市街化調整区域である以外、すべてが市街化区域となっており、それぞれの地域で重点的な緑化の推進が求められている。このため、市域全体を緑化重点地区と位置づけ、緑の将来像の実現に努めるとしている。(狛江市緑の基本計画より)


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