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2018.02.09

第43回三宅村:噴火によって壊滅的な被害を受けた島の生態系復元に向け、島の環境に強く、古くから自生してきた地域制系統の苗木を島で育て、植林(緑化対策事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第43回は、伊豆諸島の一つ、三宅島を行政区とする三宅村の緑化対策事業について紹介します。火山島・三宅島ならではの事情と取り組み内容を持つ本事業。背景と取り組みの具体的内容について、担当者に話を伺いました。ぜひ、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2018年2月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

およそ20年周期で噴火を繰り返す火山島・三宅島

 伊豆諸島の1つに連なる三宅島は、東京本土から南に約175kmの海上に位置する。竹芝桟橋から船に乗って約7時間。直径8kmの島全域が富士箱根伊豆国立公園にも指定されている豊かな自然に恵まれた島だが、最高峰の雄山(775m)を中心に島全体が円錐形の火山島を形成し、近年は概ね20年周期で激しい噴火を起こしてきたことでも知られている。
 直近の噴火は、2000年夏のことだった。17年ぶりとなったこの年の噴火は、相次ぐ群発地震を伴う激しい火山活動となり、雄山からの噴煙は上空1万5千メートルに達したという。特に、今回の噴火の特徴で、世界でも類を見ないほどの大量かつ継続的な火山ガスの発生は、約3,600名の全島民の島外避難を余儀なくした。
 大規模な噴火活動によって、高熱の溶岩が草木を焼き払うとともに、堆積した溶岩や火山灰は地表を覆い、島の生態系は壊滅的な被害を受けた。溶岩等による直接的な被害を免れた場所でも、大量の火山ガスの噴出によって甚大な影響を受けることとなった。火山ガスの成分には、亜硫酸ガス(二酸化硫黄)や水蒸気、硫酸ミスト、硫化水素、二酸化炭素、浮遊粒子状物質などがあるが、三宅島で特に濃度が高く危険なのが、亜硫酸ガス。無色で刺激臭のあるガスで、目や咽喉を刺激し、高濃度の場合には呼吸障害を引き起こすなど注意が必要だ。それとともに、大量の火山ガスはおびただしい面積の植物が枯死する原因となり、島の全森林の約60%に当たる2,500haほどの森林が被害を受けたとされる。この森林被害の影響は、森林を生息地とする野生動物にも大きな影響を及ぼした。島の自然の象徴として保護・保全されてきた在来固有種で天然記念物にもなっているアカコッコを始めとする野鳥類は、噴火前に比べて3分の1にまでその数を減らしたという。

 現在、三宅島は、気象庁が全国に50ある「常時観測対象火山(火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山)」の1つに選定され、火山活動が24時間体制で常時観測・監視されている【1】

【表1】三宅島の噴火の記録(三宅村のデータをもとに作成)
西暦年号噴火の間隔備考
1085年応徳2年平安時代
1154年久寿元年69年
1469年文明元年315年室町時代
1535年天分4年66年
1595年文禄4年60年安土・桃山時代
1643年寛永20年48年江戸時代
1684年貞享元年41年
1711年正徳元年27年
1763年宝暦13年52年
1777年安永6年14年
1811年文化8年34年
1835年天保6年24年
1874年明治7年39年近代・現代
1940年昭和15年66年
1962年昭和37年22年
1983年昭和58年21年
2000年平成12年17年
火山ガス放出量の推移(「三宅防災のしおり」より)

火山ガス放出量の推移(「三宅防災のしおり」より)

安全・安心な島の暮らしを取り戻すために、鍵となるのが、森林の再生

 火山ガスによる全島避難が長期化する中、島民の生命と財産を守るための災害復旧工事が進められ、2003年度中には島内一周道路の修復が完了するとともに泥流対策の一環となる砂防ダムの建設は計画基数の約60%まで整備されてきた。
 一方で、島の自然環境は前述のとおり火山ガス等による甚大な被害が及んだ。表土が露出したことで、雨が降るたびに堆積した火山灰が表土とともに削られ、泥流となって山の斜面を下り、民家に押し寄せていた。安全・安心な島の暮らしを取り戻すために、鍵となるのが森林の再生だったが、植生の回復、特に樹木の生長は、道路や砂防等の工事と比べて、はるかに長い年月を必要とする。
 こうした中、全島避難指示が解除されたのは、2005年7月のこと。4年5か月にわたる避難生活を終えて、三宅島に戻った村民の生活再建の取り組みが始まった。ただし、避難指示こそ解除されたものの、火山ガスの放出は依然として続いていたため、広い範囲で植物の生育が困難な状況にあった。
 三宅島の緑化対策の推進に向けて、2004年1月には「三宅島緑化ガイドライン」(三宅島災害対策技術会議 緑化関係調整部会)がまとめられた。東京都及び三宅村が復旧工事に関連して進める植生回復に向けた緑化対策の基本的な方針や対象区域、工事の基準等を定めたものだ。翌2005年7月には、ガイドラインで示した方向性を具現化するために必要な事項を記した「三宅島緑化マニュアル」(三宅島災害対策技術会議)もまとめられた。
 ガイドラインおよびマニュアルで示したのは、三宅島固有の植生に配慮した緑化対策の重要性だ。ガイドラインでは、策定の目的について、以下のように明記している。
 「三宅島の災害復旧工事については、火山ガスによる全島避難が長期化する中で、どれだけ自然豊かな元の姿に戻せるかが注目されている。緑化を急ぐあまり三宅島固有の植物を脅かすことがないよう細心の注意が必要である。泥流対策に重点を置いた急速緑化を施す場合であっても、中長期的な植生の将来像を見据えて緑化する必要がある。一方、噴火災害の傷跡をそのまま保全することも貴重な観光資源・教育資源になるものと考えられる。生物多様性の保全が世界的な要請となっている中、今後は今までにも増して環境や生態系に配慮した復旧工事を進めていくことが期待されている。」

溶岩流に飲み込まれた阿古水道施設(昭和58年)

溶岩流に飲み込まれた阿古水道施設(昭和58年)

泥流で埋まった椎取神社(平成12年7月29日)

泥流で埋まった椎取神社(平成12年7月29日)

低温火砕流(平成12年8月29日)

低温火砕流(平成12年8月29日)

降り積もった火山灰の上を走行する自動車(平成12年)

降り積もった火山灰の上を走行する自動車(平成12年)

島民が育てた、島に自生する木の苗木を、島外のボランティアが植林

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」助成金による三宅村の緑化対策事業では、こうした背景を受けて、帰島直後の2005年度以降、学生や企業、NPOといった島外団体等による植林を行ってきた。業者委託による植林と合せて、年間の植林本数は1万本を超える。
 植林イベントでは、島民が育てた島に自生していた木の苗木を村と植林団体が購入し、植林場所まで搬入して、ボランティア団体がその場で植林するというスキームで実施している。
 平成28年度までに行われてきたイベントによる植林の実施状況は、下表のとおりである。12年間の累計で、ボランティアのべ5,763人の協力により、97,602本の苗木が植林されたことになる。

【表2】平成28年度までに行われた植林イベント一覧
年度(平成)団体数人数本数
17 年度1 団体261 人1,125 本
18 年度1 団体295 人100 本
19 年度1 団体215 人5,300 本
20 年度6 団体554 人9,878 本
21 年度12 団体951 人18,744 本
22 年度13 団体1,114 人15,820 本
23 年度10 団体644 人11,060 本
24 年度7 団体567 人8,650 本
25 年度6 団体372 人6,925 本
26 年度6 団体226 人5,450 本
27 年度7 団体315 人9,400 本
28 年度6 団体249 人5,150 本
累計5,763 人97,602 本

 現在、三宅島の火山ガスは減少傾向にあり、ススキ等の植物が生えるなど、植生の遷移が始まっている。一方で、これまで植林してきた苗木も、根付かずに枯れるものもあるのが実情だ。
 今後は一度植林をしたものの、根付きがよくなかった場所などへの捕植も行ないながら、植生回復に向けた取り組みを継続していくとしている。

注釈

【1】常時観測対象火山
 常時観測火山は、噴火の前兆を捉えて噴火警報等を適確に発表するために、全国4か所に設置された火山監視・警報センターでの観測データ及び大学などの研究機関や自治体・防災機関等の関係機関から提供を受けているデータによって、火山活動を24時間体制で常時観測・監視するもの。国内に111の活火山のうち、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定された50火山が対象。
 2018年1月23日に発生した草津白根山の噴火では、当時「噴火警戒レベル」が5段階のうち最も低いレベル1「活火山であることに留意」だったこともあり、火山監視体制の見直しについての報道もされている。

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