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2018.08.03

第49回御蔵島村:平地や公園が少ない御蔵島にとって、貴重な憩いの場となっている芝生の校庭を維持管理(校庭芝生再生事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第49回は、太平洋に浮かぶ伊豆諸島の島・御蔵島村の校庭芝生再生事業について紹介します。面積約20.58km2の中に人口わずか324人という、自然豊かな島は、狭小で急峻な段丘上に集落が群立しています。村役場の隣には、島唯一の教育機関である御蔵島村立御蔵島小・中学校があり、芝生化された校庭は、村人たちにとっても公園的役割を果たしています。
 その芝生校庭を維持再生するために実施しているのが、校庭芝生再生事業です。
 事業の概要やその背景等について、担当者より話を伺いました。ぜひご一読ください。

 ※本記事の内容は、2018年7月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

イルカと出会える島にある唯一の小・中学校

 御蔵島は、島の周辺海域に野生のミナミハンドウイルカが生息し、イルカに出会える島として知られている。島内には豊かな原生林が広がり、オオミズナギドリの繁殖地としても知られ、島全体が富士箱根伊豆国立公園の指定区域に含まれる。
 東京都と御蔵島では自然の保護・利用について協定を結び、イルカウォッチングや森のツアーにガイドの同行を義務付けるなどルールに従って環境に配慮した自然利用を行っている。
 今も活発な火山活動を続ける島が多い伊豆諸島の中では比較的古い時代に火山活動を停止していることもあって、島全体は全国でも有数の巨樹の森を有する原生林に覆われている。他の島が水の確保に苦労する中、水に恵まれ、豊かな原生林が広がっている。海岸線には海食崖が発達し、高いところでは最大500mの断崖絶壁になっているところもある。
 御蔵島村の行政区域は、南西約35kmの海上にある無人島・藺灘波島(いなんばじま)を含み、面積約20.58km2。人口は、177世帯324人(平成30年1月1日現在)が住み、過疎地域に属さない市町村としては、全国でもっとも少ない。現在、村民が住む集落は御蔵島北部の狭小で急峻な段丘上に群立し、島内唯一の港である御蔵島港や空の玄関である御蔵島ヘリポート、村役場や郵便局、駐在所など村の施設もこのエリアに集中している。この村役場周辺の「入かねが沢」と、かつて昭和40年代までは住民が住んでいた島南東側の「南郷」を除くと、村域のすべてが無番地となっている。
 村役場に隣接して、島内唯一の教育機関である村立御蔵島小・中学校がある。平成30年度は、小学生3名と中学生1名の新入生を迎えたことで、児童・生徒の総数は25名となるとともに、小学校第1学年から中学校第3学年まで、全ての学年に児童・生徒が在籍することとなった。

 丘の上にある学校の教室からは、一面に広がる海が見えるという。

イルカの群れを間近で観察できる御蔵島(図版提供:御蔵島観光協会)

イルカの群れを間近で観察できる御蔵島(図版提供:御蔵島観光協会)

海が荒れる冬場には着岸率が50%を下回ることもある

 東京から南へ約200kmの太平洋上に浮かぶ御蔵島は、三宅島から南に約18kmの距離にあり、さらに南南東に下った八丈島までは約75km離れている。御蔵島に足を踏み入れるには、海から大型客船で海路を行くか、空からヘリコプターで上陸するかしかない。
 島に唯一ある御蔵島港は、島の崖地に張り付くように造成されており、大型船が接岸できる岸壁には、往路・復路を合わせて一日2便の船が発着している。前夜のうちに本土竹芝桟橋を出港した大型客船が三宅島を経て御蔵島港に到着するのが朝の6時頃。一方、八丈島を朝9時頃に出発した東京行きの航路は、昼の12時半に御蔵島港に到着し、三宅島経由で夜の8時頃に竹芝桟橋に帰港する。ただし、海の状況によって発着時間が前後するだけでなく、欠航もしくは条件付出航となることも少なくはない。特に海が荒れる冬場には着岸率は50%を大きく下回る。ただ、年間を通じて着岸率が低いというわけでもなく、多くの観光客が訪れるイルカシーズンの5~11月は、台風の発生状況に左右される面もあるが、平均80%の着岸率と安定している。

 港について、崖上にある集落に向かうには、急な坂道をぐるっと迂回するように登っていかなくてはならない。船を降りると目の前に立ちはだかる崖を見上げて、息を切らしながら坂道を歩んでいかなければならないことに、島に赴任した人たちは驚きを持って受け止めているという。

御蔵島港桟橋から望む。港から坂を登った先の狭小で急峻な段丘上に集中して施設や宅地が建ち並ぶ様子が見て取れる。(図版提供:御蔵島観光協会)

御蔵島港桟橋から望む。港から坂を登った先の狭小で急峻な段丘上に集中して施設や宅地が建ち並ぶ様子が見て取れる。(図版提供:御蔵島観光協会)

平地が少ない御蔵島の中で、公園的役割を果たす芝生の校庭

 村立御蔵島小・中学校は、明治7年に現在とは別の場所に小学校が開校してその歴史の幕を開いた。昭和22年4月には、小学校内に中学校が設立され、同年6月に生徒35名を迎えて開校式・入学式が行われた。この間もこの後も、校舎は改築、移転、増築等を繰り返し、現在の小中合同校舎(6階建て)として完成移転したのは、平成12年4月のことだった。
 島で唯一の学校であるとともに、狭い地域に住宅及び施設が集中する集落の中で、住民たちにとって小・中学校が占める存在感は決して小さくはない。
 そんな学校の校庭を、地域の公園的役割を果たすコミュニティの場として活用してもらうことも目的の一つとして実施されたのが、校庭の全面芝生化だった。
 「芝生化前の校庭は、石ころが多かったとともに、強い季節風で砂が舞ってしまいました。学校教育に支障をきたすとともに、学校教育以外での利用はほとんどありませんでした。このため、平成20年に校庭の全面芝生化工事を実施したのです。芝生の校庭になって島民の利用も多くなり、現在は年間を通して地域に開放しています」
 御蔵島村教育委員会の伊藤珠理さんがそう説明する。
 平成20年4月に校庭全面芝生化工事が完了した翌月には芝生開き行事も開催された。
 現在、学校でも芝生の整備養生として、主に冬から春にかけて、週1回ほど中学校の保健体育教諭が中心になって芝刈り機で手入れを行っている他、用務主事が荒れたところの草取り等をしている。
 また、年1回は「親子清掃」の行事として、児童生徒、保護者、教員で芝生の草取り等を行っている。

 校庭の芝生化で校庭の利用価値は増したが、集中的な利用によって、芝生が部分的な枯死や損傷が進行し、維持管理メンテナンスの継続が課題となっている。
 週末には日に100人以上の地域住民が校庭を利用する場合もあり、冬から春にかけての養生作業だけでは維持できなくなっていた。
 「御蔵島小・中学校校庭芝生再生事業では、5月から12月にかけて、芝生診断作業、目土作業、芝張替え作業、肥料散布などを業者に委託して実施しています。助成金を活用させていただき、10年が経ちました。公園や平らな場所がほとんどない御蔵島の中で、芝生の校庭は貴重な憩いの場となっています。今後も、これまでの10年間の継続のノウハウを生かして芝生再生事業を続けていき、地元住民や観光客のためのレクリエーションの場として喜ばれ続けるように取り組んでいきます」

全面芝生化された校庭で開催される、御蔵島小・中学校・村民合同運動会。地域に開かれた校庭として、村の大切な財産になっている(図版提供:御蔵島観光協会)

全面芝生化された校庭で開催される、御蔵島小・中学校・村民合同運動会。地域に開かれた校庭として、村の大切な財産になっている(図版提供:御蔵島観光協会)

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