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2019.02.15

第55回八丈町:“花と緑と温泉の島”として、まちを彩る(花いっぱい運動推進事業)

 「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。第55回は、八丈町で各自治会が中心となって実施する花と緑のまちづくりをサポートする「花いっぱい運動推進事業」について紹介します。
 花を植えたプランターを都道沿いの観光スポットに配置したり、苗木を配布して自宅の庭に植えてもらったりして、“花と緑と温泉の島”にふさわしい景観を創り出そうという同事業の概要や背景について、担当者のお話を聞きしました。ぜひ、ご一読ください。

 ※本記事の内容は、2019年2月掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

羽田から55分、東京都心からもっとも近い南国・八丈島

大阪トンネル入り口の展望台から横間ヶ浦海岸方面を望む。右にそびえる山は八丈富士(854.3m)。左の小島は八丈小島。

大阪トンネル入り口の展望台から横間ヶ浦海岸方面を望む。右にそびえる山は八丈富士(854.3m)。左の小島は八丈小島。

 伊豆諸島最南端の八丈島は、東京の南約290kmの太平洋上に位置し、面積約70km2に人口およそ7万5千人が住む。黒潮の影響により一年を通して温暖な気候で、亜熱帯の植物に囲まれた豊かな自然に恵まれている。島は、南東に三原山(700.9m)、北西部には八丈富士(854.3m)と2つの山が両端にそびえるひょうたん型をしていて、1960年代にNHK総合テレビで放送された人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとも言われる。
 集落は、三原山の裾野に点在する樫立(かしたて)・中之郷(なかのごう)・末吉(すえよし)で構成される「坂上(さかうえ)地区」と、山の間に挟まれた平地に空港や町役場など島の経済活動の中心地が発展した大賀郷(おおかごう)・三根(みつね)よりなる「坂下(さかした)地区」に大きくは分けられる。

島の経済を支えるヤシ科の植物、ロべは、町の木に指定されている。

島の経済を支えるヤシ科の植物、ロべは、町の木に指定されている。

 中之郷には、三原山の地下深くにある地熱資源を活用する八丈島地熱発電所(出力3,300kW)が日本の離島としては初めて開設し、1999年から運転を開始している。地熱発電は、主に火山活動による地熱を利用した再生可能エネルギーの一種として、クリーンなエネルギーとして古くから考えられてきた。ただし、電力需要に応じて出力を変化させることが難しいため、ベース電源(3,300kw)として運転を行い、八丈島の電力需要に合わせて既存のディーゼル発電機を追加運転させることで、島の生活を支えている。発電所に隣接する八丈島地熱館では、こうした火山の噴火から始まる島の成り立ちや地熱発電の仕組みを伝え、学ぶ環境学習の場を提供している。さらに、地熱資源を活用した熱帯果樹展示温室・農産物直売所「えこ・あぐりまーと」もすぐ近くに開設している。
 島内には高木になるビロウヤシや、葉っぱが花束などの装飾として人気が高いロベなど、南国情緒あふれる植生が島の至る所で見られる。インドシナ原産のロベは、「フェニックス・ロベレニー」が正式名。大正10年に雌雄2本が移入されたのが発端とされ、温暖な気候と雨に恵まれた八丈島に適していたことで、現在は世界有数の栽培地として、国内のシェアはほぼ10割。町の木としても指定されているほど島の重要な産業になっている。
 地質的には富士火山帯に属する火山島で、地熱発電所の他にも温泉施設もあって島に恵みをもたらしている。太平洋が一望できる絶景の温泉や夏場は海水浴客やサーファーで賑わう漁港脇の無料温泉、西側に海を臨む夕陽を望む足湯温泉など、個性豊かな7つの温泉は、すべて坂上地区に集中する。

町の花として指定されている、ストレチア。極楽鳥のようにも見える。

町の花として指定されている、ストレチア。極楽鳥のようにも見える。

真っ赤なハイビスカスの花と八丈島の夕陽。

真っ赤なハイビスカスの花と八丈島の夕陽。

地域ごとの特性を踏まえた事業として展開

 前項で紹介したように、地熱資源に恵まれ、南国情緒あふれる豊かな自然を有する八丈島では、「花と緑と温泉の島」をテーマに、島内外に呼び掛けている。今回紹介する「花いっぱい運動推進事業」は、このテーマに沿った取り組みの一環として実施している事業。その概要とめざすところについて、産業観光課産業係の奥山晃希さんに話を聞いた。
 花いっぱい推進事業は、地域の特性に応じて、坂上地区と坂下地区では異なる方法により実施しているという。
 温泉施設などが点在する坂上地区では、地域住民の協力で、都道沿いの温泉施設や展望台などの観光施設を中心に花木の苗を植えたプランターを置いたり、地域の花壇に花を植えたりしている。
 花の植え付けやメンテナンスなどは地域の自治会の協力によって実施される。年度初めに各自治会から提出される実施計画に基づいて、役場から苗木やプランターが配布され、事業が開始する。設置場所や植え付ける花の種類なども、実施計画の中で自治会ごとに決定している。パンジーを中心に植える地域もあれば、アガパンサスという花を植える地域もあるし、季節に応じて花を植え替えて一年を通して花を咲かせるなど、自治会ごとにそれぞれ特色を打ち出している。

 一方、坂下地区では、島の人口が集中している地域ということもあって、苗木を配布して自宅の庭などに植えてもらう形で事業を展開している。キンシバイやモチノキなど島の気候に合う花木の苗木を東京都農林水産振興財団の協力によって選定し、本土からコンテナ輸送して、地域住民に配布する。
 実は、取材日の翌日に苗木の配布日が設定されていて、平成30年度は合計640本の配布を予定したという。あらかじめ各地域の振興委員の協力で取りまとめた希望苗木と本数により調整し、配布日に役場に取りに来てもらう方式だ。
 「以前植えていたものが枯れたので補てんしたいとか、移住者が新たに植えるための苗木を希望するなどのケースが多いようです。総本数は多めに確保しているので不足することはありませんが、今回の場合でいうと特にオウゴンモチノキという苗木が人気で、希望が殺到しました。振興財団からは50本までしか渡せないといわれていましたが、事前の希望本数は倍率3倍を超える166本にものぼり、調整が必要でした」

八丈八景の一つにも数えられる展望スポット「名護の展望台」(坂上地区の末吉集落)を、植栽された花々が彩る。
八丈八景の一つにも数えられる展望スポット「名護の展望台」(坂上地区の末吉集落)を、植栽された花々が彩る。

八丈八景の一つにも数えられる展望スポット「名護の展望台」(坂上地区の末吉集落)を、植栽された花々が彩る。

台風が来るたび、プランターを屋内に避難させる

 地植えや花壇づくりもしているものの、あえてプランターに植栽して道沿いなどに並べている地域もある。
 「八丈島の特徴でもあるのですが、台風の襲来が非常に多いんですね。直撃した場合はもちろん、近くを通る場合でも進路や規模などによって、強風の影響で花が飛び散ってしまいます。風の影響だけでなく、潮風による塩害も生じています。葉っぱに潮がつくと、枯れたり、変色したりしてしまうのです。それらを避けるため、プランターに植えて、一時的に体育館など屋内に避難できるようにしています」
 つい先日も、役場の近くにあるプラザ公園というところに並べたプランターを、台風襲来の前に急いで片づけた。ここのプランターは役場で管理しており、急な対応が必要だったため、役場職員総出で300鉢のプランターを避難させ、台風が通り過ぎた後に再度設置するという作業をすることになった。
 奥山さんは、台風発生のニュースに触れると、予想進路や風速などから影響を判断して、役場から各地域に連絡を入れて、プランターの避難の声掛けなどもしている。ただ、連絡を入れた時点ですでに住民たちが自主的に片づけていることも多いという。

プラザ公園に並べられたプランターの植栽。
プラザ公園に並べられたプランターの植栽。
プラザ公園に並べられたプランターの植栽。
プラザ公園に並べられたプランターの植栽。
プラザ公園に並べられたプランターの植栽。

プラザ公園に並べられたプランターの植栽。

住民同士のコミュニケーションの機会にもなっている

 坂上地区のプランターや花苗を配布する際には、地域ごとに日時・場所を通知して、住民に集まってもらっている。プランターの配布のほか、植え付け作業もいっしょに行っているから、住民同士で話をする機会にもなると好評を得ている。各地域ならではのやり方で進めてもらう事業だからこそ、コミュニケーションや主体性が必要だし、結果としてやる気を盛り上げることにもつながっている。花の管理や土の更新など技術的なアドバイスも住民同士のコミュニケーションの中から相互に補い合っているし、新しく島に移住してきた人たちにとっては、地域に溶け込むきっかけの一つとしても役立っている。
 「住民の方は、わからないことがあると、まわりの詳しい人に聞くんですね。そうすると、そこから話が広がっていって、コミュニケーションが生まれていくようです」

 プランターの植え付けや水やりなどのメンテナンスに加えて、道路沿いに植栽されて南国イメージを彩っているハイビスカスやビロウヤシなど町で植えた樹木等の剪定や除草、清掃などにも住民の協力を得ている。
 「道路沿いに植えている背の高いビロウヤシの木は、葉が茂ってくると景観を乱すとともに、道路に覆いかぶさってくると通行車両にぶつかる危険性もあるため、剪定して整えています。この作業を各地域の自治会さんに、花いっぱい運動推進事業の一環として協力していただき、定期的に柄のついた長いノコギリで伐ってもらいます。もちろん、住民の方にできないところや、緊急性の高い時などには建設課から業者に委託して実施しますが、通常のメンテナンスは自治会にお願いしているのです」
 こうした作業を通じて、緑化推進をめざすとともに緑の大切さを体感してもらう機会としても位置付けている。自然豊かな八丈島では島の至る所で緑を目にすることができるが、色鮮やかな花々を増やしていくことで、住民や観光客が自然に目を向けるきっかけにしてほしいと奥山さんは話す。

坂上地区のビロウヤシ並木。道路に覆いかぶさるように葉が茂ってくる。

坂上地区のビロウヤシ並木。道路に覆いかぶさるように葉が茂ってくる。

都道沿いで、花の植栽前に草刈り。

都道沿いで、花の植栽前に草刈り。

都道沿いに植栽された花々。
都道沿いに植栽された花々。

都道沿いに植栽された花々。

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