トップページ > かれんとシーナの『エコ質問箱』 > 質問23:セルロースナノファイバーって何?

2017.12.28

かれん と シーナの『エコ質問箱』 質問23

質問23:セルロースナノファイバーって何?

かれん
ねえ、シーナ。「セルロースナノファイバー」って知っている?
シーナ
え、聞いたことないなあ。何のこと?
かれん
自由課題のグループ研究で「夢の素材・セルロースナノファイバーの可能性」について取り上げることになったんだけど、何のことか、全然わからないんだよね。
シーナ
う~ん、ぼくも知らないよ。
かれん
そうなんだ…。じゃあさ、シーナもいっしょに調べてくれない?
シーナ
うん、いいよ。でも、どうやって調べればいいんだろう? 何かヒントはないの?
かれん
そういえば、「セルロース」のことは習ったことがあったわ。植物の細胞壁とか植物繊維の主成分のことじゃなかったかしら。ほら、シーナの体もセルロースなんじゃないの?
シーナ
へえ、そうなんだ。かれんの体もセルロースなの?
かれん
人間や動物の体はたんぱく質でできていて、セルロースは植物だけにしかなかったんじゃないかしら。
シーナ
まあ、いいや。じゃあさ、ナノファイバーは何のこと?
かれん
パパの新しいゴルフ道具が、なんとかファイバーだから軽くて具合いいなんて、自慢していなかったっけ?
シーナ
ああ、言っていたかもしれない。もしかして、セルロースナノファイバーでできているってこと?
かれん
ちょっとパパに聞いてみようかしら。ねえ、パパ! ちょっときて!!
パパ
どうしたんだい?
かれん
パパの新しいゴルフの道具って、セルロースナノファイバーでできているの?
パパ
なんだい、急に!?
かれん
軽くていいぞって自慢していたじゃない!
パパ
ああ、あれはシャフトがカーボンファイバーでできているんだ。
シーナ
シャフト? カーボンファイバー?? セルロースナノファイバーとは違うの??
かれん
もう少しわかりやすく教えて!
パパ
はは、ごめんごめん。シャフトっていうのは、ゴルフクラブというボールを打つ道具の柄の部分のことなんだ。軽くてしなりがあるカーボンファイバー製のものがいいって聞いていたから替えてみたんだけど、飛距離も上がって、まっすぐ飛ぶようになったんだよ。うれしいなあ!
シーナ
へえ、そんなに違うんだ。
かれん
ゴルフ自慢はそれくらいにして、本題に戻らせてもらいたいんだけど、そのカーボンファイバーとセルロースナノファイバーは違うものなの?
シーナ
そうだったね。セルロースナノファイバーって、何のことなの?
パパ
ああ、セルロースナノファイバーのことを調べているんだっけね。カーボンファイバーもセルロースナノファイバーも新素材繊維の一種で、そもそも「ファイバー」っていうのは英語で繊維を意味する言葉なんだ。
かれん
どう違うの?
パパ
カーボンファイバーというのは、日本語にすると炭素繊維のことで、石油などからとれる原料を高温で炭化して作った繊維のことなんだよ。鉄に比べると比重が4分の1と軽いのに摩擦や熱に強く、錆びたりもしない優れた性質があって、いろんな用途が開発されてきたんだ。ただ、製造コストが高かったり、リサイクルも難しかったりするのが難点でもあるんだ。
かれん
へえ、すごい素材なのね。それで、セルロースナノファイバーの方は?
パパ
セルロースナノファイバーは、セルロースの名前の通り、天然の植物繊維を原料にしたもので、数ナノメートル(ナノは1mmの百万分の1)にまで細かく解きほぐすことで、木材のような軽さを持ちつつも硬くて丈夫なバイオマス素材を作ることに成功したんだ。
どんな特徴があると思う?
かれん
え~わからないわよ。それを教えてよ。
シーナ
わかった! 植物繊維からできるバイオマス素材ってことは、どこにでもあって栽培もできるから、手に入りやすくてコストもあまりかからないってことじゃない?
パパ
いいところに目を付けたね。木材はもちろん、サトウキビの搾りかすとかジャガイモなどのデンプンの搾りかすなどの副産物も原料になるから、原料そのものの値段や採掘などの調達コストは鉄などの鉱物資源や化学繊維の原料となる化石資源と比べてはるかに低コストだし、ナノレベルの細かさにまで解きほぐすための加工コストも、研究開発によってかなり下がってきている。カーボンファイバーに比べて10分の1ほどのコストで生産できるめども立ってきているらしいよ。
かれん
すごいのね。他にはどんないいことがあるの?
パパ
ちょっと考えてみてごらんよ。化学物質って、便利な素材だけど、問題もあるだろう。何が問題になっていると思う?
かれん
う~ん、ごみになったときに自然界で分解されなってことかな…。あ、そうか! 天然の植物繊維が原料ってことは、ごみになったときにリサイクルしやすいのかな。
パパ
複合素材としても使われているからその場合は簡単にはリサイクルできないかもしれないけど、生産・廃棄の際の環境負荷は低いと考えられている。
もう一つ大きな特徴があるよ。なんだと思う?
かれん
ヒントは?
パパ
日本の森林率って知っている?
シーナ
確か、7割ほどが森林じゃなかったっけ?
かれん
それがどうしたの?
パパ
日本はエネルギーも資源も多くを輸入に頼っているんだよね。資源国が「もうお前のところには輸出してやらないよ」って言ったらどうなる?
かれん
そんな意地悪をいうの? ひどいわね。
パパ
じゃあ、言い方を変えよう。輸出してあげるけど、値上げさせてもらうよって言われたらどうする?
シーナ
もっと安く売ってくれるところから買えばいいんじゃない?
パパ
資源国がみんな一斉に値上げしたらどうなる?
かれん
あ、オイルショックだ!
シーナ
輸入小麦の価格が高騰したこともあったよね。
パパ
資源小国はつらいんだよ。でも、植物性の原料から生産できるセルロースナノファイバーなら、安定供給ができて持続可能な資源として、豊富な森林資源と技術力を生かして日本が資源大国になる可能性も秘めているってわけさ。
かれん
わお!! 日本にとってはまさに夢の新素材ってわけね。
シーナ
それで、セルロースナノファイバーは何に使われているの?
パパ
研究が本格化してわずか10年ほどなんだけど、いろんな用途が開発されているようだよ。細かい繊維だから比表面積が大きいとか、もともと植物体にある物質だから親水性が高いとか、光の波長よりも細かいナノ繊維だから光が散乱せず透明度が高いとかいった素材特性があって、紙おむつやボールペンのインク改良、透明紙など日用品にも実用化されている。一方で、親水性が高い表面特性は、自動車用樹脂との相性が悪かったんだけど、技術開発によって、自動車部品や建築資材、ウェアラブル端末などの素材への応用研究が進んできている。特に軽量で丈夫な素材特性を生かして、カーボンファイバーではコスト的に難しかった自動車部品への応用が実用化できれば、軽量化による燃費向上で地球温暖化対策にもなると期待されているんだ。
かれん
へえ、セルロースナノファイバーってすごいのね。
シーナ
もしかしたら、近い将来、普通に出回るようになっているかもしれないね。

このページの先頭へ

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。