トップページ > 環境レポート > 第1回「恵み豊かな森を守り、育む ~森林レンジャーあきる野の森づくり」(あきる野市)
レンジャーの皆さんに、今後の活動の展望や夢を伺った。
森林レンジャーあきる野、4人の精鋭たち(左から、佐々木さん、パブロさん、加瀬澤さん、隊長の杉野さん)
自然体験活動をメインにしている唯一の女性隊員の加瀬澤恭子さんは、地域の古老たちに山を案内してもらうときに聞く昔の話や石碑の由来などがとても興味深いと話す。
「地域の人たちガイドになったり、地域の人と都会の人をつなげるような体験プログラムを企画していきたいですね。めざしているのは、あきる野が“東京のふるさと”のように親しまれる森づくりをしていくこと。もちろん、東京都外の方たちにも来ていただきたいのですが」
加瀬澤さんは、子どもたちの体験活動も担当している。
「この夏、都内の小学生を対象にした自然体験活動をしたんですけど、都会の子どもたちがあきる野の自然を「楽しい」「すごい」「また来たい」と口々に言うんですよね。それを聞いていた地元の子どもたちが、どこか誇らしげにしていたのが印象的でした」
「地元の子どもにとっては、当たり前の自然なんですけど、その当たり前の自然の素晴らしさを知り、伝えていくことが、子どもたちの中に誇りを生む。その子どもたちが将来、私たちのような森林レンジャーになれるような活動を続けていくのが夢なんです」
スペインで地理・環境学を専攻して、数年前に日本に渡ってきたパブロ・アパリシオ・フェルナンデスさんは、生き物や自然資源を中心に森を調査している。
「森にはいろんな環境があります。その森の個性をうまく引き出していって、ここは市民の人たちが楽しく遊べる森づくりをめざしていくとか、さまざまな環境に合わせて自然保護と一般の人たちが自然にふれあっていける場がともにできるような森づくりをしていきたい」
「今、特に力を入れているのが、トウキョウサンショウウオなどの絶滅危惧種のための保護活動や環境整備。市域内でも産卵が確認されていますが、産卵できる池づくりなどの環境整備をしていかないと将来的には危うい。それと、例えば、横沢入り(注1)のような市内の人気スポットを増やしていきたいですね」
北海道の釧路から移り住んできた佐々木優也さんは動物調査に重点を置いて森を見ている。
「あきる野にはヤマザクラが5種類くらいあって、5~8月に順次、実をつけるんですが、それをねらって哺乳類や野類などいろんな動物が来ているというのが、この春の調査でわかってきました。そういった森の特徴を捉えて、動物たちにも優しい森をめざしていければなと思っています。市民が山に出かけていって、興味の湧くようなものを発見していって、それを守りつつ、野生動物と人間がうまく利用しあえる森をめざしていきたい」
そんな基礎的なデータを蓄積して、今後の森づくりや観光資源に役立てていきたいという。データのまとめ方、それを市民にどう発信していくかを考えていきたいと話す。
隊長の杉野二郎さんは、森の恵みを一般の人たちにも享受できるような環境を整えていくことが大事と話す。
「ハイキングに行って楽しいとか、森林に入ってセラピーの効果があるということから、木材の搬出まで。また滝を見に行ったり巨木を見に行ったりというのまで全部含めて、森の恵みを享受できるような道筋をつけていきたいんです」
そのためにはどうすればよいのか。昔の人の森との関わりにヒントがあると熱を込めて話す。
「昔の人のくらしと山との関わりが、今ならまだ年配の方から伺うことができるんですね。沢でも、かなり奥の尾根筋まで登っていったときに、炭窯跡があるんですよ。沢筋の岩のまわりなどには基本的に針葉樹が植林されていなくて、広葉樹が残っているんですけども、ほとんどが萌芽更新したあとが残っている。つまり、炭を焼くために切られていた森であったということがわかるんです。昔の人たちはそうやって山といっしょに暮らしていたということがあると思うんです、残っているものから推察すると」
「今はまだ昔の山の暮らしというものをいろんな人から聞けるので、聞き取りたいなと思っています。そこから、これから先、森と人が関わっていくためのヒントが出てきたら、新しい森づくりが本当にスタートできるかなと感じています」
今後のレンジャーの活躍を期待したい。
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