トップページ > 環境レポート > 第4回「公共空間に向けてエコの情報を発信 ~コミュニティFMのエコ番組『Rainbow Earth』の取り組み」(「Rainbow Earth」制作チーム)
深川ギャザリアの一角に開設しているRainbowtownFMの公開スタジオ
江東区深川界隈は、藤沢周平や池波正太郎らが江戸時代小説の舞台として好んで描いた地だ。“江戸最大の八幡様”と呼ばれる富岡八幡宮が駅前に鎮座し、賑わしい商店街が軒を並べる東京メトロ東西線の門前仲町駅は下町情緒ゆたかな街並みを残す。それとは対称的に、隣駅の木場駅前には首都高速9号深川線の高架橋が頭上にかかる大通り(三ツ目通り)が走っている。その大通り沿い、駅から徒歩2分ほどのところに、近代的な商業複合施設「深川ギャザリア」がある。
石畳の広場を進んでいくと、イスとテーブルが用意されたオープンスペースが設けられている。赤地に黄色い文字が鮮やかな「RainbowtownFM 79.2MHz」の看板が掲げられたガラスの向こう側の室内が、江東区のコミュニティFM局「Rainbowtown FM」のメインスタジオ。
今回の取材対象『Rainbow Earth』は、このコミュニティFM局で毎週日曜日のお昼に放送されている、“エコ”をテーマにした1時間のラジオ番組だ。
1月のとある日曜日、『Rainbow Earth』の放送時間に合わせて深川ギャザリアの公開スタジオを訪れた。気温は低いながらも天気は快晴、暖かな陽射しがポカポカと気持ちよい。
スタジオ前のオープンスペースからは、ガラス越しに番組生放送の様子を間近に見ることができる。もちろん、スピーカーから音声も流れてくるから、誰でも立ち寄ってラジオの生放送に耳を傾けたり、イスに座って休憩したりできる。
この日も寒空の下、数名のリスナーが『Rainbow Earth』のパーソナリティ、通称「えこめん」たちのトークや音楽を聴いていた。オープンスペース入り口にはこの日のタイムテーブルを掲示した立て看板が設置されて、買い物で通りかかった人たちが覗き込んでいる場面も見られた。
軽妙なトークと音楽の1時間はあっという間に過ぎる。この日の話題は「スズメバチが太陽光発電をしている」という小ネタを導入にした太陽光発電にまつわる話があったり、妖怪とエコとの関係について考察してみたりと、ジョークも交えておもしろおかしく“エコ”を取り上げていく。合間には、アイルランドのアーティストによるナチュラルミュージックの紹介もあったりと、FM番組らしい小洒落た雰囲気のなか、普通にイメージする「環境番組」のお勉強臭さとはまるで違った爽快感がある。
生放送の間、隣接する喫茶店の軒下で静かに聴いていた2人組がいた。番組が終わって帰り支度をしていた2人に話を聞く。1人は千葉から、もう1人は横浜市の外れの横須賀市境から遠路はるばる、『Rainbow Earth』の生放送を聴きに訪れたという。
「今日の放送はたまたま男子2人のパーソナリティーでしたけど、女の子の時はお出かけ情報や公園のスポット情報の紹介なんかもしていますよ」
番組内容にも詳しい様子で、「えこめん」たちがパーソナリティーになって以来、ずっと聴きにきているという。
「ミュージシャンや声優さんたちのプロダクションつながりで、ファンの子たちもよく聴きにきていますよ」
この日も、放送直後に花束と差し入れを抱えたファンの子の姿が見られた。
「この番組は、ちょっと異質な感じですよね。エコ番組なんだけど、パーソナリティーは声のお仕事をしている人たち。エコの仕事をしているわけではない人たちがやっている番組ということで、アプローチの仕方もちょっと変わっている。放送では『石が紙になる』なんて話もあって、ああそんなこともあるんだと新鮮な発見があります。まじめ一辺倒な話だけでは毎週は聴き続けていられないけど、FMらしいおしゃれな話題の中で意外なエコの話題を散りばめてくれるから、毎週聴いていても全然違って、飽きがこないんです」
あまり誉めちゃうと、「えこめん」たちが調子に乗るから──と苦笑しつつ顔を見合わせる2人の表情からは、パーソナリティへの共感と番組への思い入れが伝わってくるようだった。
番組パーソナリティの「えこめん」たち
番組が連携したライブイベントの様子
Rainbowtown FMの番組は、ほぼすべてが、この公開スタジオから発信される生放送だという。ただ、放送局自体はごく普通のコミュニティFM局で、ミュージシャンやタレントなどがパーソナリティーを務めていて、それほど際立って他の局と違うことをしているわけではない。特にエコを意識した番組が他にあるわけでもない。
開設当初は、現プロデューサーの福田さんがパーソナリティを務め、がっつり環境寄りの番組だった
局の中で、エコをテーマにした番組『Rainbow Earth』が始まったのは、2006年4月のことだった。番組のプロデューサーで、当初はパーソナリティーも兼ねていた福田寛之さんが、当時をふりかえって、番組がはじまったきっかけを説明してくれた。
「たまたま、日曜日の昼の1時間、枠が空いていたようなんですよ。その前から別の番組の手伝いをしていたことがあり、『何か自分でやりたい番組はない?』と声をかけていただいたのがそもそものきっかけでした」
民設民営のコミュニティFM局だから、番組枠を売って運転資金に回しているが、すべての枠が売れるわけではない。あまった枠は、他放送局の番組を買って流したり、自社で活用する枠として番組を制作したりして埋めることになる。例えば、九州地方のコミュニティFM局でJ-WAVEの番組が流れたりすることも珍しくはないという。
発信電波が制限されるコミュニティFM局は、主に市区町村内(及び隣接地域)を対象とした限定地域に向けた放送局だ。放送対象地域が限定される分、地域密着の細かな情報発信が特徴で、特に防災および災害時の放送にアドバンテージがあると指摘される。Rainbowtown FMも、江東区で防災を軸にした機能を持たせたいという熱意で開局した民設民営のラジオ局。だからこそ、この場所・時間帯に出演者が来てしゃべるという生放送にこだわっているという。録音した番組を流しているだけでは何か起きても迅速な対応は難しいが、生放送で話をする人がいて、スタッフがついて番組を作っていれば、急な災害や突発的な事故が起きても、臨機応変な対応が可能だし、呼びかけなどもできるということだ。
実は、福田さんの本業は気象予報士。防災関係──特に台風情報など──に詳しかったり、ラジオを通じて注意喚起できたりするということもあって、番組を任されたのだ。
自社活用枠の一つとしていろんなコンテンツが必要となる中で、当時すでに環境省の「チームマイナス6%」が発足するなど地球温暖化防止をはじめとする環境問題への関心や注目が盛り上がっていたことを受け、「環境」をテーマにしたラジオ番組を立ち上げることにしたという。それ以前から、小学校の授業で「環境」を教えたり、企業の環境PRに携わったりと、福田さん自身の環境に対する関心や知識を生かすことにしたわけだ。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
オール東京62市区町村共同事業 Copyright(C)2007 公益財団法人特別区協議会( 03-5210-9068 ) All Right Reserved.