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第7回「“地産地消とフードマイレージ”から地球温暖化防止を学び、実践 ~東久留米市エコキッズプランの活動」(東久留米市市民環境会議くらし部会)

エコランチづくりからフードマイレージの計算へ

写真:くらし部会による企画検討の様子

くらし部会による企画検討の様子

 エコキッズプランは、概ね2~3回シリーズの親子体験学習のプログラムとして実施してきた。講師・スタッフは、くらし部会の面々が務めるとともに、栄養士や新聞記者など外部講師の力も借りて、衛生面のサポートや調理と食材についての専門的な実習・講義をお願いしたり、世界各地の環境の実情をスライドで説明してもらったりしている。
 くらし部会内での企画内容の検討や外部講師との打合せなどの準備期間を経て、市広報等を通じて参加者となる小・中学生とそのお母さんたちを公募。 毎回、20~30人の親子が参加している。

 講座の第1日目、参加者はまずは実際にワンプレートランチをつくる料理実習を通じてエコの取り組みについて実地で学ぶ。手を洗ってから愛情込めて野菜を洗い、シンプルな調理で素材そのものの味を楽しむ。この時、なるべく食材を余さずに使うことを心がけたり、調理くずを捨てるときにはチラシで箱をつくって水分を吸わせたり、食べた後の食器洗いでは油を拭き取って下水道に流さないなど、手を動かしながらの作業を通して、理屈よりも実感・経験として、環境負荷とその対策について学ぶことになる。
 普段はなかなか使わせてもらえない包丁も、この日は大人のサポートがあるから安心して扱える。できあがった料理は、思い思いに盛りつけて、個性豊かなランチプレートが並ぶ。ワンプレートランチにしているのは食器を減らして、水や洗剤の節約につなげるためでもある。

写真:ワンプレートランチづくりの料理実習

ワンプレートランチづくりの料理実習

 楽しく料理をして、おいしく仕上がったランチに舌鼓を打ったあとには、食材と環境問題のつながりについておさらいの学習をする。日本では多くの食料が輸入されていることと、それによって資源もエネルギーも消費されているという実情について学ぶ。すべてを理解できなくても、何かしら感じてもらうことがあればという思いで進めている。

写真:プロの機材を覗かせてもらっての学習

プロの機材を覗かせてもらっての学習

 日を変えての第2回の講座では、前回のワンプレートランチづくりに使用した食材の一覧をもとに、『フードマイレージ』の計算を行う。フードマイレージとは、食卓に並ぶ食料・食材は生産地からの距離が短いものを食べる方が輸送に伴う環境への負荷が少ないとして、距離×重量によって“環境負荷量”を算出するための指標。食材の選び方によって環境への負荷が大きく変わることを目に見える形にするとともに、それを自分の手と頭を動かして計算することで、前回教わったことの意味を実感として咀嚼することを意図するものだ。
 この日の講座では、計算に取りかかる前段として、まずは世界中で起こっている地球温暖化の影響について、世界各地を飛び回って近年の環境の変化を取材している新聞記者を講師に招いて、スライド写真を見ながら説明を聞く。
 赤道直下の南米のジャングルで伐採によって森がなくなっていく様子や北極で氷が融けていくシーンを写真に写すときの苦労話を聞いたり、プロのカメラマンが使う大きなレンズのカメラを覗かせてもらったりと、訥々とした話は決して説明がうまいわけではないが、臨場感にあふれ、普段の勉強とはひと味違ったリアリティーがある。

写真:作業中、机に身を乗り出して地図に書き込む子も…

作業中、机に身を乗り出して地図に書き込む子も…

 こうして地球環境の今について大きな刺激を受けたところで、フードマイレージの計算に取りかかる。
 具体的な算出方法は、食料・食材が生産地から食卓に届くまでの「距離」と、その「重量」を掛け合わせて計算する。距離が遠ければ遠いほど輸送にかかる環境負荷が増えるし、それが空輸されるのか船で運ばれてくるのかなど輸送手段によっても値は変わってくる。
 エコランチづくりで使った食材ごとに、産地と日本からの距離が一覧になった表が用意され、それをもとにフードマイレージを計算して、地図に書き込んでいく。
 数人ずつの班に分かれての作業の過程で、例えばタコはアフリカ北西部のモーリタニア産が多いとか、サバは北欧産が輸入されているなど、日頃食べているものの多くが思った以上に遠いところから運ばれきていることを学ぶ。食料品の表示に、値段や重さだけでなく原料原産地の表示がされるようになって、気にする人は産地で選ぶこともできるようになったが、それを環境負荷とつなげて捉えるのが、今回のフードマイレージの考えだ。
 国内産、特に野菜などは地元の東久留米で採れるものを使えば、フードマイレージの値は著しく小さくなる。それこそが“地産地消”──地元で作った食料をその場で消費すること──の意味だということが、腑に落ちる。

子どもたちの疑問をすくい上げつつ、自主的な学習へと発展させる

 エコキッズプランの参加者は、毎年公募で集めている。ただ、中には開始からずっと参加し続けている子もいる。これらの子どもたちを中心に、一連の講座の終了後にもせっかく勉強したことを生かして発展的な学習をしてみないかと持ちかけると意欲をもって応えてくれる子が出てきている。
 これまでの例では、学校給食について調べた子がいた。東久留米市内でとれる地場野菜を給食に使った回数について調べてグラフ化してみたり、ごはん食の回数が週3回以上になったのが平成21年からだったことを調べ上げたりしている。クラスでアンケートをとって、パン食が好きな子の割合や、ごはん食の好きな子、それも白米派と混ぜごはん派で分けて調べたりと、独自の研究を進めていた。

 地域産の野菜について調べた子は、スーパーや八百屋さんに行って、食材の産地を調べた。でも、地域産の野菜は売っていない。
 「石川さん、“地産地消”って言うけど、スーパーにも八百屋にも東久留米産の野菜なんて売っていなかったよ。どうすればいいの!」
 これにはまいったが、そこで終わらせずにもう少し調べてきなよというと、「毎日同じものが同じ量ないと商売にならないんだ」というスーパーのおじさんの言葉を聞いてくる。ただ、スーパーの一角には「地産地消コーナー」が設けてあって、朝すぐに売り切れてしまっていることもわかった。

写真:夏休みの自由学習として取り組んだ作品

小学校4年生がエコキッズプランの延長上で夏休みの自由学習として取り組んだ作品。スケッチブック大で7~8枚の力作(全国規模の2010年コンテストで最優秀賞を受賞)。

写真:市内の軒先販売所の風景

市内の軒先販売所の風景。100箇所ほどあって、市内生産高の20%ほどを占める。

 石川さんは、「子どもたちには、どんどん大人に聞いたり、相談したりしなさい」と、いっしょに学習をつくりあげていくことを促している。そうして、知恵をつけてもらうことをもっとも大事にし、成長してもらいたいという。

写真:市民環境会議座長の石川勝一さん(向かって右側)と、市長の馬場一彦さん(同左)

東久留米市 市民環境会議座長の石川勝一さん(向かって右側)と、市長の馬場一彦さん(同左)

 今後は、これまであまり季節感を意識せずにやってきたランチづくりを、四季を意識したメニューにしてはどうかと構想している。東久留米市でとれる季節感あふれる食材を主体とした四季食材料理をつくれないか。市内には、野菜の品評会で賞を取った農家もある。また地域資源の活用を目的に募集した「東久留米レシピ」という料理もある。それらをエコキッズプランの中にもうまくつなげていけるとおもしろいことが発見できるかも知れない。軒先販売所に出す地場産野菜など、畑になっている状態のものを見せてもらったりしながら、この地で、季節の移ろいの中で育っていく野菜を実感する。
 また、東久留米市在住のエコキッズプラン参加者と、他地域の子どもたちとの交流ができないかとも構想する。東久留米市は、群馬県榛名町(現在は高崎市榛名町)と友好都市を締結している。フードマイレージ地図やスライド写真を見ながらの学習は間接的な体験でもある。都市近郊の東久留米とはまた違った、自然豊かな榛名町を訪れて感じることを生かした展開は新たな気付きと夢を生むことになるだろう。
 「今のエコキッズプランも構想1年半と、3年半の実践でここまできたんです。これから3~5年をかけて次の段階に進んでいければいいと思っています」
 目を輝かせて熱く語る石川さんの夢はとどまることを知らないようだった。

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