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 みどり東京レターは、都内62市区町村が実施するイベントをわかりやすく紹介することを目的に、月に1回程度の更新を予定しています。ぜひご一読ください。

2019.03.19

第13号《国分寺市制施行55周年記念》第15回 国分寺市環境シンポジウム『緑あふれるまちを目指して ~都市農地の保全・活用~』

「国分寺市制施行55周年記念 第15回国分寺市環境シンポジウム」に集まった市民の皆さん

「国分寺市制施行55周年記念 第15回国分寺市環境シンポジウム」に集まった市民の皆さん

イベント名称:《国分寺市制施行55周年記念》第15回 国分寺市環境シンポジウム『緑あふれるまちを目指して ~都市農地の保全・活用~』

開催日時:令和2年2月8日(土)13時30分~16時15分
会場:リオンホール(cocobunji WEST 5階)
参加者:約100名
主催:国分寺市環境ひろば、国分寺市

shiina

国の農地についての政策が、戦後の「都市の農地は宅地にするべき」という方向から、平成27年に「都市に農地を残すべき」と大きく変わったんだ。今回のシンポジウムでは、都市農地の機能について学んだよ。

東京都26市の中で市域に農地の占める割合が2番目に高いことを活かして緑あふれる❝まち❞をつくろう

 2月8日(土)、JR線と西武線の国分寺駅北口にあるcocobunji WESTの5階にあるリオンホールで、「第15回 国分寺市環境シンポジウム」が開催されました。国分寺市では毎年2月に環境シンポジウムを開催していますが、「国分寺市制施行55周年記念」と重なる今回は、300年の歴史を誇る国分寺市の農業と都市農地の現状を学び、今後に活かすということで『緑あふれるまちを目指して ~都市農地の保全・活用~』というテーマのもと、東京農工大学の渡辺誠准教授による基調講演と、市内で農業を営む中村克之さんの取組事例紹介、会場の参加者と講師をまじえたフロアディスカッションが行われました。
 当日は、まず国分寺市の内藤達也副市長の挨拶のあと、市内の環境団体の中から「美しい用水の会」「エックス山等市民協議会」「国分寺市にふるさとをつくる会」「緑と自然を育てる会」の活動報告が行われました。
 「国分寺市環境ひろば」は、市と市民が環境についてフランクに話し合う場として設けられたもので、基本的には月1回開かれていて、市民ならだれでも参加できます。国分寺市環境基本条例に基づいて設置され、2004年(平成16年)から続く息の長い活動です。「継続は力なり」といいますが、こうした地道な活動が国分寺市の緑を守るうえで力を発揮してきたのだと想像されます。


開会の挨拶に立たれた国分寺市の内藤達也副市長。

開会の挨拶に立たれた国分寺市の内藤達也副市長。国分寺市では市域の12.8%が農地になっていて、近年になって新鮮な野菜が市民の口に入ることが多くなってきた。
2014年に始まった「こくベジプロジェクト」によって、地元で生産した野菜を地元の飲食店で使い、地元で消費する地産地消の仕組みができた結果だとのこと。このプロジェクトは、市外から観光客を呼びこむことも目的としており、市政としてもしっかり支え、環境ひろばの皆さんとともに考えたことを実践していきたいとお話しされた。


基調講演に登壇した渡辺誠准教授(右)。隣は手話通訳者。

基調講演に登壇した渡辺誠准教授(右)。隣は手話通訳者。
現在、国は都市農地を残していく必要があるとして、様々な法整備を進めている。そのなかで、都市農地には新鮮な農産物の供給、国土・環境の保全、農林体験・学習や交流の場、都市住民の農業への理解の醸成、良好な景観の形成という6つのことが期待されているという。副市長さんのお話では、市域の12.6%が農地だということだが、農地の保全は農業従事者だけの問題ではなく、市民の皆さんの課題だ、自分たちの生活を守るという意識でやっていけるとよいのでは、というお話が印象に残った。


講師の渡辺准教授。

都市が抱える環境問題、なかでも近年深刻さを増すヒートアイランドのメカニズムや緩和に都市農地や都市の樹林が果たす役割について説明する、講師の渡辺准教授。
「最近、気温の上昇を体感している人」という問いかけに、会場の多くの人が手を挙げていた。


もっと開かれた農業・開かれた農地を目指したい

 基調講演の後は、国分寺市内で農業を営む中村克之さんが、『一番近い畑から 一番おいしい野菜を ~国分寺中村農園の挑戦~』というテーマで取組事例を紹介されました。もともとIT系の企業でサラリーマンをしていた中村さんは、奥様とのご結婚を機に国分寺市民になったものの、農業には全く興味がなかったそうです。それが、義父の育てたキュウリを「おいしい」と誉める娘さんの言葉で農業を見る目が変わり、農家を継ぐ決心をされたとのこと。新しい技術の取りいれにも熱心で、CO2施用システム(CO2濃度を高めることで光合成を促進させる)や、防蛾灯(LED)照明で病気を予防する環境をつくったり、天敵を使って害虫をおさえたりなど、低農薬の農業を心がけているそうです。
 「こくベジプロジェクト」は、2014年(平成26年)に国の地方創生交付金をもとに、商工会、観光協会、JA、NPO、農家などが一丸となって始めた活動で、国分寺のプロ農家が生産した農畜産物を「こくベジ」としてブランド化し、それを飲食店で使ってもらう活動で、参加している飲食店は100店舗を超えています。「自分の作った野菜に、こんな食べ方もあるのか」という農家にとっての新しい発見もあるそうです。
 中村さんは、都市農業の役割について、「農地は自分だけのものではないという視点がこれからは必要になってくると思う」といい、都市農地を市民の方々の居場所にしていく事業を少しずつ進めて行きたいとお話しされました。


取組事例紹介をされる農業者の中村克之さん(右)。

取組事例紹介をされる農業者の中村克之さん(右)。
国分寺産直会という会に参加され、まだ地産地消などの言葉がない時代から、自分たちでテントを立てて直売形式で野菜を売ったり、赤坂見附駅近くで国分寺産・東京産の農産物をアピールする拠点を作ったり、「トマトフェスタ」や「うどフェスタ」などを仕掛けたりと、さまざまな活動に参画された。
会社員をしていた経験から得た情報収集力やコミュニケーション力を活かし、国分寺市の農業を活性化する起爆剤的な存在なのだろう。


講師お二人と市の担当者、フロアの参加者をまじえたディスカッション。

講師お二人と市の担当者、フロアの参加者をまじえたディスカッション。
フロアの参加者からは「都市農地保全のための助成金のようなものはあるのか」「国分寺市の樹林地では倒木や枯れ木が増えているがそれを防ぐ手立てはあるのか」「雨水浸透のための農地について、どんな施策を考えているのか」「温暖化に対応した野菜の品種はつくられているのか」などさまざまな質問や意見が出され、活発な議論が交わされた。


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