第10号 稚鮎の放流と生態系調査「がんばれ!あゆっ子2026」
NPO法人奥多摩川友愛会(青梅市)

多摩川上流にアユを遡上させたい
初夏らしい心地よい晴天に恵まれた5月9日(土)、青梅駅から徒歩10分ほどの多摩川に隣接する釜の淵公園で、稚鮎の放流やヤマメのつかみ取りを行う「がんばれ!あゆっ子2026」が行われました。市内在住の小学生と保護者を対象に、子ども60名、大人54名の計114名が参加。地元の釣り人で構成するNPO法人奥多摩川友愛会と青梅市役所が協働主催しています。
2005(平成17)年に初開催し、今年で19回目を迎えました(コロナ禍の2回(令和2年・令和3年)は中止)。多摩川に遡上してくる江戸前鮎を、青梅市を流れる上流の多摩川に泳がせるのが目標です。同時に、川に親しむ機会の減った小学生に、生き物の命の大切さを感じてもらう目的もあります。
集まった子どもたちはライフジャケットに身を包み、今か今かとそわそわしている様子でした。
まずは奥多摩川友愛会の須崎隆理事長、青梅市の小山高義副市長、奥多摩漁業協同組合の大久保芳木組合長からそれぞれ挨拶がありました。その中で、小山副市長は「釜の淵公園は日本で初めてアユを放流した地であり、今年は初放流から113年が経つと言われています」と話すと、保護者を中心に驚きの声が漏れていました。

早速、稚鮎を放流するため、まずはみんなにバケツを配布。協力する奥多摩漁協が約1,000匹の稚鮎を準備してくれていました。「魚を触ると弱って死んでしまうので、触らないでね」という呼びかけを聞き、子どもたちは、触りたいのをぐっとこらえてバケツの中を興味津々で覗いていました。

全員にアユが手渡されると、いよいよ河原に一列に並んで、放流するときのかけ声の確認です。子どもたちは、「美味しくなれよ・大きくなれよ、どっちがいい?」と冗談交じりに聞かれると、一斉に『美味しくなれよ』と笑顔で叫びました。「いやいや、大きく育ってほしいよね?」と再度尋ねると、みんな素直に「はーい!」と返事がありました。
ここは恒例の「大きくなれよ」のかけ声とともにバケツの中のアユをそっと川に放流しました。透明な川に放たれた黒い魚影を目で追って、元気に育ってくれることを願いました。おかわりタイムがあり、もう一度放流したい子はそれぞれに稚鮎を受け取って、川の流れにゆっくり放ちました。
紙芝居で学ぶ多摩川の魚
続いて、子どもたちはヤマメのつかみ取りの前に、紙芝居で多摩川の魚の生態を学びました。お話ししてくれたのは、生態系調査や生き物の保全活動を行っている海老名 愛柚香 さん(NPO法人「おさかなポストの会」代表)。中学生の頃から多摩川に親しみ、多摩川で育った生き物のスペシャリストで、奥多摩川友愛会の方々とは旧知の仲です。

紙芝居では、アユの生態や天敵、河口から川を上ってくるのに障害となるダムを越えるための「魚道(ぎょどう)」の設置などについて楽しく語られました。
ここでクイズです。
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アユの食べ物は何でしょう?
- 小魚
- 石についている苔
- 川に住んでいる小さい虫
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正解2 石についている苔
苔を食べて、20センチ以上に立派な育ったアユからはスイカの香りがするといいます。川魚で藻類をエサにしている魚はアユ以外にもいますが、同じような匂いはしません。アユには縄張り意識が強く、縄張りの藻類だけを食べる習性があり、雑食性の魚は藻類以外のエサも食べるので匂いが残りにくいといわれています。
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アユの産卵場所はどこでしょう?
- 水草の中
- じゃばじゃば流れが速いところ
- 流れがゆっくりな川のふち
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正解2 じゃばじゃば流れが速いところ
アユの卵にはスカートのような吸盤がついていて、しっかり張り付くことで水流に流されず、他の魚に食べられにくい場所で育つことができます。
つかみ取りするヤマメをはじめ、ニジマスなどの魚は、水生昆虫を主食としている説明もありました。多摩川にはエサとなる小さな虫がたくさん生息しており、代表的なのは、ヤゴ、カワゲラ、カゲロウ、トビケラ、ヘビトンボなどで、実物を見せると子どもたちは身を乗り出して見入っていました。

海老名さん「捕まえるぞー!」、子どもたち「オー!」のかけ声で低学年の子から川の中へ。勢いよく魚を追いかける子、じっと様子を伺いながらゆっくりと手を近づける子など個性が光る中、ぬるぬると手の間を滑るヤマメと格闘していました。

捕まえるポイントは、ヤマメの顔を隠すように手で覆うこと。水が冷たいと泣き出してしまう子もいましたがめげずに必死に頑張っていました。

全員2回目にも挑戦して、最後に残ったヤマメは大人たちで争奪戦が繰り広げられました。
参加者は、日頃から川遊びに親しんでいる子もいれば、自然体験の機会の少ない子など様々でした。小学4年生の女の子は「楽しかったけど、魚が可哀想で苦手」と話し、生き物を捕まえて食べる現実を直視する経験になったようです。生き物好きの小学1年生の男の子は、イベント後に紙芝居で聞いた魚のエサを河原で熱心に探していました。
保護者は「いつもすぐ募集が埋まってしまう。やっと参加できた」「何度も参加しているが、今年で小学6年生なので最後かな」と話し、イベントの人気が伺えました。
捕まえたヤマメは持ち帰って今晩のおかずになります。子どもたちは自分で捕まえた魚を食べる一連の過程を経験し、生き物の命をいただくことを身体で学びました。
ここからは、NPO法人奥多摩川友愛会の取組みに迫るよ!

釣り人たちの想い 白濁した多摩川を蘇らせる
NPO法人奥多摩川友愛会は2005(平成17)年、多摩川が白濁したことをきっかけに元の自然を取り戻したいと、釣り愛好家が集まって設立しました。白濁とともに、川底には砂と砂利が堆積し始め、川の生物も減少していました。原因は上流の石灰鉱山付近と考え、事態を重く受け止めた会員らは、汚染状況などを世の中に発信し、自然環境を守る啓発活動に努めました。
現在は長期にわたって白濁することはなくなりましたが、今までに堆積した砂、砂利は未だに河床を埋め尽くしたままであり、川の変化を常に観察しています。
「がんばれ!あゆっ子」を始めた経緯を須崎理事長はこう語ります。
「東京湾で育ったアユが多摩川を遡上し始めたことを知り、それなら上流の青梅まで遡上させて、市民や観光客に見てもらいたいと考えました。我々は釣り人なので、それが釣れれば最高との思いもありました」
魚の放流は、水産資源の維持や増強、絶滅に瀕した種の保全を目的に全国各地で実施されています。奥多摩上流部(源流部)では奥多摩漁協が毎年、アユ漁のために稚鮎を放流し、その一部を自然教育の一環に充てています。
活動開始3年後、環境学習の重要性から青梅市も加わり、実施体制が少しずつ整えられてきました。青梅市環境政策課が事務局を務める「おうめ水辺の楽校(がっこう)」の親水事業の一つに位置づけられ、参加募集や費用面で支援があり、相互に支え合っている関係です。
青梅市環境政策課の福島大樹係長は「青梅市の長期計画でも多摩川の保全は目標であり、友愛会さんは頼もしい存在です。親水事業は次世代を担う子どもに向けた重要な取り組みであり、継続していきたい」と話します。
20年前の設立当初の会員数は約200名でしたが、現在は30名ほどです。当時60代の設立メンバーが引退していく中、今も受け継がれるのは「みんなが川で釣りを楽しめる環境をつくりたい」という想いです。
毎年イベントに協力する海老名さんは「青梅の釣り人の皆さんは、分け隔てなく受け入れてくれる。私も含め、他の団体やよその人とも仲良くやっていこうという方々ばかりです」と話します。
奥多摩川友愛会は絶賛メンバー募集中とのことです。釣り好き、自然が好きな人、自然保全に興味がある人なら、市外在住でも歓迎しています。一緒に活動してみたい方は、奥多摩川友愛会または青梅市に連絡してみてはいかがでしょうか。

NPO法人奥多摩川友愛会
設 立
2005(平成17)年
活動内容
「がんばれ!あゆっ子」稚鮎の放流と生態系調査(5月)、親子魚釣り教室(10月)など。
青梅市や奥多摩漁業協同組合主催のイベントにも多数協力。
活動場所
釜の淵公園鮎美橋付近
人 数
約30名
※奥多摩川友愛会の名前は、多摩川の上流(奥)で活動していることから奥多摩川と表記。

