第11号 野草茶をつくって味わう 大人の体験講座
環境学習情報館 えこっくる江東(江東区)

近所の散歩で、心浮き立つ秘訣
雲一つない青空、一足早い夏の訪れを感じさせる5月17日(日)、JR潮見駅から徒歩12分、江東区潮見に立地する環境学習情報館えこっくる江東で「野草さんぽと野草茶づくり」が行われました。自然の恵みラボ~おとなのCraft & Food from Natureと題し、大人を対象としたイベントです。20~80代までの13名が参加しました。
講師は2009年から同館にイベント協力するNPO法人マザーツリー自然学校の中安敬子理事長です。子ども・大人向け合わせて年間約20回の講座を受け持ち、当選倍率10倍になることもある人気ぶりです。今回、幸運にも当選した参加者は、植物や野草について学びたいと応募されていました。

参加者同士で簡単な自己紹介の後、歩いて5分ほどの潮見さざなみ公園に野草観察に出かけました。潮見さざなみ公園は、運河沿いのコンパクトな公園(7,500平方メートル)で、ぎゅっとまとめてもサッカーコート一面分くらいの広さです。

公園入口から土を踏みしめ歩いていると早速、誰もが雑草と思って通り過ぎてしまう道端にヨモギが生えていました。
中安さんは「ヨモギは葉の裏が白いのが特徴です。合っているか不安なときは必ず香りも嗅いでみるとわかります」と呼びかけました。なぜかというと見た目だけで判断すると危険なことがあるからです。よくニュースになっているのは、ニラと毒のあるスイセンを間違えて食用にしてしまう例があると説明がありました。
蚊に刺された参加者がいると、ヨモギやドクダミの葉を揉んで出た汁はかゆみ止めになると話し、試してみたりしました。

少し歩くと、シロツメクサ、ヘラオオバコ、ヤブカラシと野草の説明が続き、まるで中安さんの眼には植物図鑑が映し出されているかのようでした。参加者は興味津々で匂いを嗅いだり、質問しながら歩みを進めました。

ここで中安さんの声のトーンが一つ上がりました。見つけたのは「ヘビイチゴ」の群生です。ヘビが出そうな湿った草むらに生育するため「ヘビイチゴ」と呼ばれ、一般的には食用にしませんがみどりの中で赤がひときわ目を引きます。

おしゃべりしながらゆっくりと散歩しただけですが、参加者の見る目は雑草という一括りではなく、名前の分かる野草が増え、何気ない景色の解像度が上がったようでした。
※野草を採取する際は、公園や道路でも必ず所有者の許可が必要です。本講座は許可を取って開催しています。
ひたすらコツコツ、自分を整えるお茶づくり
散歩から戻ったら、いよいよ野草茶づくり本番です。
今回は講師の中安さんがあらかじめ採取して干した「スギナ」と「ドクダミ」を切って・焙じて・煮出します。
スギナはツクシと地下茎でつながり栄養を蓄える茎で、ドクダミは毒溜めに由来する独特な香りが印象的な植物です。どちらも繁殖力・生命力が強く、都会でもよく見かける雑草と思われがちですが、薬草の一面を持っています。


- スギナは2~3日、日当たりがよいところなら1日で乾燥する場合も。
- ドクダミは1~2週間ほど干す。色良く仕上げるには、陰干しがよいです。
まずは「切る」作業です。
キッチンバサミでどちらも1~2センチ程度に細かく刻んでいきます。

スギナは細く柔らかいので早々に作業が進みますが、ドクダミは根や茎が硬いため刃に抵抗を少なからず感じ、1人で作業するのは骨が折れるかもという声も聞かれました。
続いて「焙煎」です。
フライパンに刻んだ野草を入れ、弱火にかけて軍手やヘラでゆすったり天地を返したりして焦がさないようにします。火を止めて余熱にする場合もあるほど、ここは慎重です。

数分すると、香ばしいお茶の香りが部屋に広がってきました。天日干しの状態から焙煎していくと、見た目は半分から3分の1ほどの容量に減りました。焙煎が終わったら、粗熱をとるため、茶葉を広げます。
あとは煮出したら完成です。水と茶葉を火にかけて5~10分。時間は好みに応じて、短ければさっぱりと淡く、長ければ濃くなります。薬として飲む場合はさらに長く煎じる方もいるといいます。

写真は参加者全員の試飲用の分量です。1杯飲むなら通常ティースプーン1杯の茶葉が適量です。アイスで飲む場合もお湯で抽出してから、冷やします。
焙煎時から異なる香りを放っていたスギナとドクダミですが、お味はいかに…!
知っていることは財産

スギナ茶は淡い黄金色で、焙煎したこともありお茶らしい風味が口に広がります。ドクダミ茶の見た目は紅茶に近い色味ですが、独特な香りでハーブっぽいと話す方もいました。「思ったより飲みやすくて、おいしい」という声が大半でした。
スギナは利尿作用があり、ドクダミには血圧を下げる効果が期待できるといわれていて、どちらも健康茶として親しまれています。
参加者は「役に立つ植物を知れて楽しかった。自家製の野草茶を友達に配ってみたい」、「物価高の今、こんな近くにあるなら使わない手はない」、「日頃は通り過ぎていたから、もっと草花を気にかけたい」と感想を寄せてくれました。
講師の中安さんは、野草茶以外にも梅干しづくりや染め物、薬草ローションづくりなど多彩なテーマを15年以上にわたり企画しています。講座を続けている理由を次のように語ります。
「最初は自分の興味を広げていましたが、根底には”地球を守りたい”という想いがあります。今は何でも購入できてしまう便利な時代なので、私たちの暮らしが実は自然とつながって成り立っているということを忘れがちになってしまう。実際に自然に触れ、手を動かしてものを生み出す経験を通して、都会にもこんなにも自然がひろがっていることに気づくきっかけにしてもらいたい。」
そんな気持ちに応えるように、参加者の中には、毎年ルーティンのように自然の恵みを暮らしに取り入れる方もいるそうです。自然を意識していると、四季に応じた旬が楽しみになることも学べました。
みんなで作った茶葉はお土産に、大満足の講座になりました。
ここからは、会場となった「環境学習館 えこっくる江東」に迫るよ!

「ごみ戦争」とは?過去を知って今を生きる
環境学習館えこっくる江東は2007(平成19)年2月、江東区が設置し、子どもから大人まで誰でも楽しく、体感しながら、ごみ処理問題や地球全体の環境問題などを学べる施設です。
2025年度は環境講座やイベントなど296事業を実施し、中でも干潟観察会や荒川河川敷のビオトープ観察といった親子で生きものに親しむ企画に人気があります。(来館者数:3万7,197名(2025年度))
施設自体は、常設展示室の1階と研修やワークショップができる2階のフロアを利用できます。特に江東区が経験した「ごみ戦争」の歴史に関する展示は見ごたえ満点です。
ごみ戦争とは、1970年代を中心に東京都区部で起きたごみの処理・処分に関する紛争を指します。1971年、23区で排出するごみの7割が江東区に運ばれ、毎日5,000台以上のごみ収集車が江東区内を走っていたといい、その事実は現在の整備された街で過ごす子どもたちに大きな衝撃を与えます。
江東区は江戸時代から東京のごみを埋め立てる最終処分場の役割を抱えてきた歴史があります。今では想像できない悪臭やごみ火災、交通渋滞、ハエの大量発生といった深刻な問題を経てきたことを現代の子が知る貴重な機会となっています。
年間で最もにぎわうイベントは、6月開催の「江東区環境フェア」です。50以上の団体が出展し、「ゼロカーボンシティ江東区」を目指した環境に関する展示や工作体験などを楽しめます。
実際にえこっくる江東に行ってみて驚くのは、土日祝日を中心に館内を案内する環境学習ボランティア「エコサポーター」が出迎えてくれることです。知らない施設に初めて入るときの心細さや勝手のわからなさを解消し、展示の回り方や楽しみ方を丁寧に教えてくれます。現在は18名が、それぞれ月1~2回ほど当番制で担当し、職員にとっても心強い存在となっています。
同じく同館を活動拠点とする「江東エコリーダーの会」もあり、こちらは干潟観察会などの講座の講師やみどりのカーテンの普及活動など、環境活動に力を入れている団体です。
お近くにお住まいの方はボランティアに参加したり、江東区内には他にも、東京スイソミル、水の科学館、虹の下水道館など学べる施設が充実しているので、ちょっと足をのばして回ってみるのもおすすめです。

環境学習情報館 えこっくる江東
開 設
2007(平成19)年2月
住 所
東京都江東区潮見1-29-7
開館時間
9:00~17:00(常設展示室は9:30~17:00、入館は16:30まで)
青梅市や奥多摩漁業協同組合主催のイベントにも多数協力。
休館日
月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、その日以後、直近の休日でない日が休館)
年末年始(12月28日から1月4日)
入館料
無料
アクセス
JR京葉線・JR武蔵野線「潮見駅」下車西口出口から徒歩12分
東京メトロ有楽町線「辰巳駅」下車2番出口から徒歩20分

