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2015.07.21

第14回台東区:環境の情報は、繰り返し発信するとともにわかりやすくインパクトを与えていくことで、意識化したり行動につなげたりすることを期待 ~環境情報誌『環境案内人(エコガイド)』の発行

 当プロジェクトの助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
 第14回となる今回は、20年以上にわたって発行を続けている、下町・台東区の環境情報発信事業について紹介します。
 平成5年12月に創刊した前身の『THE 再環(りさいくる)』が14年7月にリニューアル創刊してはじまった環境情報誌『環境案内人(エコガイド)』。現在の発行月は、5月、9月、10月、12月の年4回。環境施策の紹介やイベント情報など、区民や区内事業者を中心に情報提供を行うためのツールとなっています。環境に特化した情報誌の発行スキームとその効果について、担当者の話を聞きました。ぜひご一読ください。

区報の中の一記事では数ある情報の一つとして埋もれてしまう

『環境案内人(エコガイド)』(平成26年10月20日発行の第55号より)。第一面には、毎年11月に開催する『環境フェスタたいとう2014』のスケジュールとプログラムについて紹介。サイズはA3。全8ページ、フルカラー。

『環境案内人(エコガイド)』(平成26年10月20日発行の第55号より)。第一面には、毎年11月に開催する『環境フェスタたいとう2014』のスケジュールとプログラムについて紹介。サイズはA3。全8ページ、フルカラー。※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:107KB)

 台東区の『環境案内人(エコガイド)』は、現在年に4回発行(5月・9月・10月・12月)し、新聞折り込みを通じて区内全戸に配布するとともに公共施設等での取り置きによって広く配布する、環境情報発信に特化した区の広報誌だ。
 「区報の中でも環境についての情報発信はしていますが、数ある情報の中の一つとして扱いは小さくなりますから、どうしても埋もれてしまい、なかなか区民の皆さんにお伝えしきれません。環境のことは、繰り返し・繰り返し、何度も触れていただくとともに、見ていただいたときのインパクトによってようやく気づいてもらえ、行動や実践につながっていくのだと思います。その意味で、大きな誌面をとって、カラーのイラストでわかりやすく発信していく必要があります。情報誌の発行を通じて、これまで意識してこられなかった方にも知っていただくきっかけになってくれればと思っています」
 そう話すのは、台東区環境清掃部環境課の林文恵係長と渡辺勝久さん。『環境案内人(エコガイド)』は、A3サイズのフルカラー印刷、現在、通常号は8ページ構成で発行している。

20年以上にわたり、環境に特化した区の情報誌を定期的に発行

 『環境案内人(エコガイド)』の創刊は平成14年7月31日だが、前身の『THE 再環(りさいくる)』はさらに遡ること9年前に当たる平成5年12月20日に創刊準備号(Vol.0)を発行している。翌6年3月にはVol.1を創刊。当初は年3回(7月・11月・3月)の定期情報誌として発行された。創刊準備号の特集記事には「空きびん・空き缶の分別回収(沿道回収)モデル事業」の紹介を大々的に掲載するなど、名前の通り、主にごみ問題やリサイクルについての情報発信および区民との情報交換のための媒体となることをめざしたものだった。
 その後、環境保全やエネルギー問題などより幅広い環境情報の発信と交流をめざして、14年7月から『環境案内人(エコガイド)』として新たなスタートを切ることになったわけだ。
 「区役所では、同じ年(14年)の2月にISO14001【1】認証を取得しています。その紹介や実績報告なども掲載して、ごみ・リサイクルにとどまらない幅広い環境の取り組みについて情報発信するようにしたのです。それと、『大江戸清掃隊』といって、みんなで法被(はっぴ)を着て清掃をする活動があります。台東区らしい、掃除活動をしながら下町情緒も出せるという取り組みなのですが、この活動を紹介するための情報誌『まちの美化通信』を、『THE再環(りさいくる)』とは別に、年に2回発行していました。これらを統合して、『環境案内人(エコガイド)』にリニューアルしたわけです。『まちの美化通信』は、今でもエコガイド誌面の中の1ページとして定期的に挿入されています」
 近年は、18年度から蔵前に開設している環境学習拠点施設『環境ふれあい館 ひまわり』で数多く開催する環境のイベントなどの案内も掲載して、環境全般にわたる幅広い情報を発信していくようになってきている。

『THE 再環(りさいくる)』の創刊準備号の一面(平成5年12月発行)

『THE 再環(りさいくる)』の創刊準備号の一面(平成5年12月発行)※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:2,480KB)

『環境案内人(エコガイド)』の創刊号(平成14年7月発行)

『環境案内人(エコガイド)』の創刊号(平成14年7月発行)※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:2,314KB)

同じ環境の取り組みでも、かつてとは違った考え方が出てきていることを知ってもらうのも環境情報誌の役割

第57号(27年5月発行)では、台東区一般廃棄物処理基本計画の改正について紹介。

第57号(27年5月発行)では、台東区一般廃棄物処理基本計画の改正について紹介。※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:109KB)

 『環境案内人(エコガイド)』の発行は、誌面構成から記事の作成まで、ほぼすべてのプロセスを区環境清掃部が自前で担っている。環境課にはエコガイド担当の職員が1人配置され、環境課及び隣のリサイクル課、清掃事務所からそれぞれ発信したい情報を集めてきて、誌面構成を考えていく。各課から記事と図版の提供を受け、これらをもとに印刷会社がレイアウトを組んで、毎号6万9千部ずつ印刷して、新聞折り込み等によって配送される。
 「年間の流れはおおむね固まってきています。例えば、5月号では、環境ふれあい館『ひまわり』で毎年6月に開催している『環境ふれあい館まつり』の案内を一面に持ってきますし、11月に開催する環境フェスタについては、春に実行委員募集の告知をして、直前の10月号で開催案内、事後の12月号に実施報告を掲載しています。助成金制度の紹介なども、毎年決まった時期に公募していますから、その使い方と応募受付について紹介していきます」
 時期に応じた固定の記事によって誌面の多くが埋まっていくが、1~2ページほどはその時々の旬な情報を掲載している。例えば最新の第57号(27年5月発行)では、台東区一般廃棄物処理基本計画の改正について、現在の達成状況(ごみの削減や資源回収の状況など)や家庭ごみの混入状況の調査結果などと併せて、表やグラフを示しながら大きく紹介している。予定稿がない時には「ページがあいていますが、載せたい情報はありますか?」と各課に聞いてまわると、「もしあいているなら載せて」とどんどんあがってくるという。
 環境清掃部として、エコガイドという情報発信のツールがあり、そのツールをうまく活用していこうという機運と仕組みができあがっているといえるだろう。

 「その年々で新たに発信する内容もありますが、一方で、夏にはエアコンの省エネ、冬も暖房の省エネなど、繰り返し・繰り返しお伝えしていくことが大事なものもあります。その内容も、かつてお伝えしていた内容から変わってきているものもあります。昔はとにかく電気を消しましょうという一辺倒だったのが、最近は新しくよりエネルギー効率の高い家電に買い替えるのも効果的な手段ですということをお伝えしています。LEDの照明に替えるのが代表的な例ですが、“古いものを使い続けることがいい”と思っておられるお年寄りも結構多いので、そうではない新しい考え方もあるということを知っていただくのに、エコガイドの誌面が役立っています」
 と渡辺さん。

 東日本大震災以降、区民の放射線量に対する関心も高まり、エコガイドでも大きく誌面をとって測定結果について報告してきた。また、3年前から段階的に拡充してきたごみの戸別収集については、地域ごとの開始状況などの案内を丁寧に掲載している。区報でも掲載しているが、小さな記事としてしか掲載できないため、エコガイドの誌面を大きくとって、わかりやすく出していくことで周知を図っていく効果は大きい。

23年度~25年度にかけて、放射線量の測定結果を報告するページを何度も掲載している。23年8月発行の第39号では、2・3ページ見開きで、放射線量の測定開始について報告。

23年度~25年度にかけて、放射線量の測定結果を報告するページを何度も掲載している。23年8月発行の第39号では、2・3ページ見開きで、放射線量の測定開始について報告。
※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:323KB)

23年12月の第41号では、一面のトップ記事に測定結果について報告。26年2月発行の第52号では、最終8ページ目に掲載。※クリックで別ウィンドウが開きます(左PDF:161KB 右PDF:148KB)

戸別回収の案内もエコガイド誌面で大きく扱っている。区報だけでは見落としてしまいかねない情報の周知を図る。第45号(24年10月発行)では、4・5ページ見開きで大きく告知している。

戸別回収の案内もエコガイド誌面で大きく扱っている。区報だけでは見落としてしまいかねない情報の周知を図る。第45号(24年10月発行)では、4・5ページ見開きで大きく告知している。※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:272KB)

第56号(26年12月発行)の6ページ目に掲載した、戸別収集実施の地区別タイムスケジュール。

第56号(26年12月発行)の6ページ目に掲載した、戸別収集実施の地区別タイムスケジュール。

カラーの図解を通してわかりやすく伝えることで、助成金制度の活用が増える効果も出ている

 エコガイドによる発信に対して、区民からの反響が多く、手ごたえを感じることのあった事例として、林係長は中小企業向けの支援制度のPRと活用をあげた。
 「ちょうど最新号の第57号では、3ページ目に中小企業向け支援制度の紹介をしています。区の事業として実施している「我が社の環境経営推進事業」による省エネ専門家派遣制度や各種助成金制度などを紹介するとともに、27年度から区立小学校跡地にオープンした台東区中小企業振興センター(産業振興事業団の運営)による融資制度や相談業務、新製品新技術開発支援やアトリエ化支援などの助成制度などを紹介するものです。単に区の助成金制度を紹介するだけでなく、これから事業を立ち上げたり改善したりしようと融資相談や技術支援の相談をされにきた事業者さんに、省エネ診断や導入費用の助成制度を活用していただくことで、環境経営にも取り組んでいただき、より効果的・効率的な事業の実施・改善につながる例もありました。制度の内容も実施主体も違いますが、関係機関と連携・連動した中で進める取り組みの一環として、エコガイドの誌面を活用しています」

 見開きの左ページには家庭向けの助成制度の案内もある。家庭向けの取り組みを進めるとともに、事業者の取り組みを促進して、台東区全体の省エネ活動を進めていきたいという。

27年5月発行の第57号。2・3ページ見開きで、一般向け助成金制度と中小企業向け支援制度について大々的に紹介。

27年5月発行の第57号。2・3ページ見開きで、一般向け助成金制度と中小企業向け支援制度について大々的に紹介。※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:235KB)


26年12月発行の第56号では、一面のトップ記事で、冬の家庭の省エネライフについて図解するとともに、窓や外壁等の遮熱・断熱改修助成の紹介をした。同助成制度は、27年度から事業者も対象になるという。

26年12月発行の第56号では、一面のトップ記事で、冬の家庭の省エネライフについて図解するとともに、窓や外壁等の遮熱・断熱改修助成の紹介をした。同助成制度は、27年度から事業者も対象になるという。※クリックで別ウィンドウが開きます(PDF:90KB)

 昨年度から助成制度を開始した、窓や外壁の遮熱・断熱改修については、第56号(26年12月発行)で大きく誌面にしている。イラストによる図解を入れたことで、助成の対象や内容がわかりやすいと好評を得て、制度の利用も大きく伸びた。区民の利用はもちろん、工務店が顧客に制度を紹介することで利用が進んだケースもあったという。区でも、窓・壁を扱うガラス組合の会合に出かけて、制度について説明してきた。

 『環境案内人(エコガイド)』を通じた環境情報発信事業については、今後も同じように継続して、“繰り返し・繰り返し発信していくこと”を大事にしていきたいという。それが意味あることだと思っていると話す林さんと渡辺さんだ。


注釈

【1】ISO14001
 ISO(国際標準化機構)が1996年に出した環境マネジメントシステム規格。ISO14000シリーズの根幹を成すもので、認証登録制度となっている。
 このシステム規格は品質システム規格(ISO9001)と同じように、PDCAサイクルを回すことによって継続的な環境改善が図ることをめざす。登録申請に際しては、経営者の決意表明(キックオフ)に始まり、環境理念と環境方針で目的や目標を定める。それを達成するために環境保全計画を立て、環境マネジメントシステムを構築して運用する。そして、システムの内部監査を実施し、その結果を経営者にレビューして、計画の見直しをすることを義務づけ、向上を図る。

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本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。