トップページ > 環境レポート > 第39回 豊島区:役所の情報誌らしからぬスタイリッシュなデザインで、興味を引き、手に取ってもらうことを重視(環境情報誌『エコのわ』の発行)
2017.08.31
「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」の助成金を活用した都内62市区町村の環境事業の取り組み状況について順番に紹介する「環境事業紹介」のコーナー。
第39回は、豊島区環境清掃部環境政策課事業グループで年に2回発行している環境情報誌『エコのわ』について紹介します。
「区民生活」から「地球環境」を見直すという視点で平成19年度に創刊された『エコのわ』は、区民の生活スタイルの延長線上に、無理なく地球環境に配慮した暮らしとそれを実現することができる行動様式などの情報を提供することで、区民のライフスタイルの転換を促すとしています。
『エコのわ』の具体的な誌面の紹介とともに、誌面づくりについても、担当者にお話を伺いました。ぜひ、ご一読ください。
※本記事の内容は、2017年7月取材時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
豊島区は、23区の西北部に位置し、区域面積13.01km2に人口29万1,167人(平成27年国勢調査結果より)が住む。人口密度2万2千380人/km2は日本一の水準にある。
区内には、小学校22校及び中学校8校の合計30校があり、児童・生徒合計約1万人が通っている。その1万人全員に1部ずつ、豊島区環境政策課が発行する環境情報誌『エコのわ』を配布して、家庭に持ち帰ってもらう。
「現在の発行部数は、毎号1万5千5百部、年間2号を発行していますので、合計では3万1千部になります。小中学校の全児童・生徒に配布している他、区の公共施設や区内にある大学、専門学校、幼稚園など140か所での取り置きもしています。かつては発行部数も多く、新聞の折り込みで全戸配布をしていた時代もありましたが、効率的・効果的な予算執行の見直しもあって、現在は、ファミリー層中心にターゲット設定をして、小中学校で配布しています。学校からの配布物ならご両親にも見てもらえますから、ターゲット層には届きやすい手段になっていると思います」
そう話すのは、豊島区環境清掃部環境政策課環境政策担当係長の冨樫由美さんと事業グループの山下舞さん。
表紙には、毎号の特集に合わせた色鮮やかな写真が大きく引き伸ばされ、その上から「エコのわ」のロゴとサブタイトルの『地球と向き合う』の文字が被さる。スタイリッシュなマガジン形式のデザインは、区役所が発行する情報誌のイメージをよい意味で裏切り、つい手に取ってみたくなる。ボリューム自体は、A4判4ページと薄いが、その分、コンパクトな情報提供をしていきたいと冨樫さんと山下さんは言う。
最新号の『エコのわ』Vol.19は、平成29年3月3日発行。特集は、「フードロス」って何?~みんなで育む食べものを大切にする心~。
『エコのわ』は、“区民生活”から“地球環境”を見直すという視点で、平成20年2月22日に創刊号が発行された。
創刊号に寄せて、高野之夫区長は、本庁舎屋上庭園(当時)でのスナップ写真とともに、次のようなメッセージを寄せている。
このたび豊島区は生活に密着した環境情報を紹介する『エコのわ』を創刊いたしました。『エコのわ』という名前には、エコロジカルな活動を通して交流の輪や人と人のつながりが広がっていくという意味が込められています。また、豊島区では平成20年度を「環境都市づくり・元年」と位置づけています。私たち一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、豊島区に住み、働き、学びすべての人の力が集まれば、未来の世代へ価値ある環境都市を引き継ぐことができると信じています。(後略)
区民に、地球にやさしいライフスタイルを実現するためにどんなことができるか、身近で取り組みやすいエコ活動を紹介することで、エコ活動を身近に感じ、行動変革につなげてほしいという思いを込めている。
メインのターゲットは20代から40代の親子世帯。制作方法は紆余曲折あったがコンセプトやデザインは、創刊当初から一貫し、揺るぎがない。見栄えを大事にするとともに、中身も読みやすくするため、極力文字を減らして、イラストや写真を中心にみてもらうマガジンスタイルを心掛けているという。
「若い世代は忙しいので、よほど興味があるテーマでない限り、読んでもらえません。情報量を多くしてじっくり読んでもらうというよりも、まずはイラストや写真でパッと見てわかるようにしていくことで興味を持ってもらうことをめざすのが、『エコのわ』の役割といえます」
創刊当初は、区内にあったジャーナリスト養成の専門学校から全面的な協力を得て、学科長の指導の下、学生による「チームエコのわ」が結成された。企画から取材、執筆、編集までの全工程を学生チームが担当したという。ところが平成22年に専門学校が閉校し、学生チームの協力が得られなくなる。その後も数年間は、公募による区民編集員の協力を得て、表紙写真の撮影や企画、取材に協力してもらっていたが、市民の負担が大きくなったこともあって、職員による誌面づくりに移行していった。ただ、役所の人事異動で必ずしも専門的な経験と知識が豊富な職員が担当できるわけでもない。現在は、きちんとした裏付けのある記事づくりをするため、専門の業者に委託して制作している。
「身近な環境情報を集めて記事づくりをするのも、職員だけでは難しいのです。区民にかかわってもらうのも一つのよい形でしたが、区民の方の負担も労力も大きくなってしまいました。委託に出すことで、経費はかかるものの、職員にはない視点の企画や素材集めなどもでき、手に取ってもらえるクオリティのものを作るうえでは効率的な方法といえます」
創刊号の特集は、「How to 家庭菜園」。ベランダでできる家庭菜園のやり方や、できた野菜を使った料理などを紹介。
毎号の特集やその他の記事には、旬の話題を取り上げて、最新かつ地域に根差した情報提供を心掛けている。
少し遡るが、平成27年5月に豊島区の新庁舎が開庁した直後のVol.16(平成27年11月20日発行)では、特集テーマの「探してみよう、豊島の水辺」に合わせて、豊島区庁舎に整備した「豊島の森」の水の流れについて紹介した。庁舎に取り込んだ最新の環境技術については、さまざまな場面でPRしているが、よりわかりやすく、親しみやすい内容として『エコのわ』でも紹介した。
先に紹介した最新号のVol.19(平成29年3月3日発行)の特集で取り上げたフードロスは、ごみ減量推進課がフードロス対策として、区内にある女子大学との連携によって開講した「フードロス対策講座」の様子を伝えながら、食材をムダなく使いきるコツを紹介した。
平成28年10月28日に発行したVol.18では「生態系」をテーマに、身近な生態系の保全や、日本在来の野草に着目した「野のくさプロジェクト」などを取り上げている。この号の表紙を飾ったのは、西武池袋本店の屋上にある「食と緑の空中庭園」だった。画家モネの作品「睡蓮」にインスピレーションを得て造園され、池を中心とした約110坪の敷地にスイレンやバラなど100種類ほどが植えられ、トンボやハチ、テントウムシなどが集い、同年3月には都市緑化機構による「都市のオアシス」にも認定された同庭園には、区からも補助金を出していて、同社からの情報提供がきっかけになって取り上げることになったという。
平成29年度も11月と3月をめどに発行を予定しているが、ちょうど地球温暖化対策の国民運動COOL CHOICEの推進の区長宣言をしたことを受けて、特集を組んでいく予定だという。
区の施策として力を入れていることや区民に伝えたいことなどを前面に出して、区民に身近な話題を今後も取り上げていきたいという。
表紙の写真がきれいなので、並べておくだけでも手に取ってもらいやすい。環境イベントでの配布など、手に取ってもらえる機会を増やしていきたいという。区役所庁舎では、3階、4階、6階、8階の通路に「丸ごとミュージアム」と称した展示スペースを設けている。一昨年は11月の1か月間を「としま環境ミュージアム」と題して、環境展を実施。その一環として、エコのわのバックナンバーも展示した。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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