トップページ > エコアカデミー一覧 > 第16回 環境を守り,安全運転にもなるエコドライブ

2012.12.05

第16回環境を守り,安全運転にもなるエコドライブ

春日 伸予氏顔写真

春日 伸予(かすが のぶよ)

 芝浦工業大学工学部共通学群教授,早稲田大学理工学部総合研究所客員教授。
 お茶の水女子大学大学院を修了後,東京慈恵会医科大学にて医学博士を取得。専門分野は心身医学で,特にストレスマネージメントに重点を置いている。
 芝浦工業大学教員就任後は,交通安全の領域において,ドライバー心理を中心とするヒューマンファクターの研究に従事している。特に,ストレスマネージメントにおける気づきを応用し,気づきを利用した事故防止のための支援と教育を推進している。さらに,環境と安全の両方に貢献するエコドライブの推進活動も行っている。

 エコドライブは,自動車が排出する二酸化炭素量(CO2)を少なくして環境を守る運転として知られていますが,同時に安全運転にもなります。さらに,自分の運転のエコドライブ度(燃費)を知ることは,自分がどのような運転をしているかを知ること(気づき)につながります。そして,自分の運転への気づきを継続していると,次第に自分をコントロールする能力が高まることも期待できます。
 エコドライブは環境だけでなく,安全,能力向上,等いくつものメリットがあるのです。

1.エコドライブのポイントと効果

 エコドライブの取り組み方法については,警察庁,経済産業省,国土交通省,環境省からなる「エコドライブ普及連絡会」が,表1に示す10項目を取り組みポイントとして挙げています。

表1 エコドライブのポイント
ポイント 解説
1.ふんわりアクセル「eスタート」 急発進や急加速をしない。
2.車間距離に余裕をもつ 定速走行できるように車間距離を十分とる。
3.早めのアクセルオフ エンジンブレーキを積極的に使う。
4.エアコンの使用は控えめに 燃費を悪化させるエアコンの使いすぎは避ける。
5.アイドリングストップ 無用なアイドリングはやめる。
6.暖機運転は適切に エンジンをかけたらすぐに出発する。
7.道路交通情報の活用 計画的で時間の無駄のないドライブをする。
8.タイヤの空気圧を適正に タイヤの空気圧をこまめにチェックする。
9.不要な荷物はつまない 燃費に影響する荷物の重量を軽くする。
10. 駐車場所に注意 渋滞をまねく違法駐車はしない。

表1の中で,特に安全との結びつきが強いポイントは次のようになります。

  • ふんわりアクセル「eスタート」
    急発進・急加速は事故に結びつきやすい危険な運転で,それらをやめると安全性が高まります。そして,急発進を10回やめると約170ml,急加速を10回やめると約110mlの燃料浪費が避けられ,CO2排出量が減少します。
  • 車間距離に余裕をもつ
    前の車との間に十分な車間距離をとることは,追突の危険を避けるために重要です。また,車間距離が不足すると,前の車のスピードに合わせて運転をすることになり,一定の速度で運転することが困難になります。加速したり減速したりが多いほど燃料消費は大きくなるので,一定の速度で運転できないとCO2排出量が増加します。
  • 早めのアクセルオフ
    これは,アクセルからブレーキへの滑らかなブレーキ操作のことで,典型的な安全ブレーキのかけ方です。また,エンジンブレーキを使う方が燃費はよくなり,CO2排出量も減少します。
  • 道路交通情報の活用
    交通情報を活用することで,混んでいる道を避けたり出来るので時間の無駄がなくなります。時間の余裕が出来ると気持ちにも余裕も生まれ,安全運転につながります。逆に,道がわからなかったり迷ったりして余計な時間を走行すると,その分燃料の浪費になり,CO2排出量も増えますし,心理的な焦りを生んで運転の安全性が損なわれることにもなります。
  • 駐車場所に注意
    交通の流れを妨げるような場所に駐車をすると渋滞を招くことになります。そして,その渋滞に巻き込まれた車から余分な排出ガスを出させることになります。また,渋滞に巻き込まれたドライバーはイライラして運転が荒くなり,安全性が損なわれることにもつながります。

2.一つのポイントの実行で大きな効果

 エコドライブの実行ポイントは10項目ありますが,最初からすべてを実行する必要はありません。1つか2つのポイントを実行するだけでも効果はあります。例えば,運送業のトラック1000台以上を対象に,ふんわりアクセル「eスタート」(ゆっくり発進)とゆっくり停止だけを実施したところ,図1に示すように交通事故は半減し,また図2に示すように燃費は約9%向上しました。ですから,まずは1つのポイントからスタートし,それが身に着いたら次のポイントの実行を加えることをお勧めします。

図1 エコドライブによる交通事故削減例

図1 エコドライブによる交通事故削減例
※クリックで拡大表示します

図2 エコドライブによる燃費改善例

図2 エコドライブによる燃費改善例
※クリックで拡大表示します

3.エコドライブは報酬感のある安全運転

図3 エコ安全ドライブ

図3 エコ安全ドライブ
※クリックで拡大表示します

 エコドライブは,続けるのが楽しい安全運転です。なぜなら報酬感があるからです。普通に安全運転をして得られるご褒美は「何事もない安全な日々」です。それは素晴らしいご褒美なのですが,しかし,人は形のないものをご褒美と感じることが難しいのです。事故を起こしてはじめて,何事もなかった日々の素晴らしさを知るものです。一方,エコドライブは,安全な日々に加えて,燃費という目に見えるご褒美を示してくれるので,成果を実感することが出来ます。そして,「自分は環境にいい運転をしている。環境改善に貢献している。」という感覚は人としてのプライドにもなります。このように,目に見えるご褒美とプライドを得ることが出来ると,「やりがい」を感じることが出来ます。そして楽しく運転を持続することが出来るようになるのです。したがって,エコドライブは続けやすい安全ドライブ「エコ安全ドライブ」といえるわけです。

4.エコドライブによる自分の運転への気づきとその効果

図4 エコドライブによる気づきの効果

図4 エコドライブによる気づきの効果
※クリックで拡大表示します

 自分がどのような運転をしているかを自覚することを,自分の運転への「気づき」といいます。気づきが深まると,ドライバーは自分の運転をコントロールする能力を高めるという効果もあります。逆に,自分の運転への気づきがなくなると,コントロール能力も低くなります。コントロール能力が低くなると,頭で考えていることと実際の運転が違うという現象が起こってきます。自分では安全運転をしているつもりでも実際には危険な運転をしているという無意識の危険ドライバーになる可能性がでてくるわけです。したがって,自分の運転への気づきを深めることは,安全運転ドライバーになるためには重要なことであるといえます。
 そうした気づきは,エコドライブをすることによっても深まります。エコドライブを行った後,燃費を計算することで,自分の運転がどのくらいエコドライブになっていたかを知ることが出来るのです(気づき)。そして,エコドライブのポイントをさらに確実に実行できるように運転していくことによって(運転の修正),燃費はさらによくなり安全性も高まっていきます。こうしたエコドライブ活動を毎日繰り返すと,自分の運転をコントロールする能力が高くなって,やがて自分の思い通りの燃費で運転できるほどのコントロール能力を身につけることも可能になるのです。

 以上のように,エコドライブは環境にも安全にも良い運転であり,さらに,自分の運転への気づきを深めて運転能力を高めることも出来るのです。まずは自分が取り組みやすいポイントからスタートしてエコドライバーの仲間入りをしましょう。


このページの先頭へ

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。