トップページ > エコアカデミー一覧 > 第45回 住民の取組を資金面から応援する、「世界で最もグリーンな都市基金」:カナダ、バンクーバー市
2015.05.12
太平洋に面したブリティッシュコロンビア州の最大都市、バンクーバーは、前面には景色の良い港を、背には雄大な山々をいだく美しい都市です。これまでもフォーブス誌やエコノミスト誌の「世界で最も住みやすい都市」調査の上位に入っていましたが、今度は「世界で最もグリーンな都市」を目指して、「グリーネストシティ2020行動計画」(Greenest City 2020 Action Plan)を2009年に採択しました。その計画では、2020年までに取り組む目標分野として、以下の10項目が掲げられています。
(バンクーバー市ホームページ:http://vancouver.ca/green-vancouver/greenest-city-2020-action-plan.aspx)
この夢を叶えるためには、あらゆる世代の住民の強い意志と関与が必要だと考えた同市は、バンクーバー財団*と共に、上記の目標分野における取組を資金面から応援する、「世界で最もグリーンな都市基金」を設置しました。これは、2012-2015年度の4年間で総額200万カナダドル(1カナダドル=99円程度)を、以下の3種類のプログラムに拠出するものです。(*バンクーバー財団:1943年設立のカナダ最大のコミュニティ財団。基本財産は9億3000万カナダドル。毎年、カナダ全土の慈善団体などの認定組織に年間総額5000万カナダドル程度の助成(全5300件)を行っている。)
(出典:https://www.vancouverfoundation.ca/initiatives/greenest-city-fund)
対象:自分たちの「ネイバーフッド」をグリーンにするために、住民個々人が応募するプロジェクト。地区別に申し込み、応募した地区内で実施する。上限:年間7万カナダドル。
対象:コミュニティをグリーンにするための、非営利組織によるプロジェクト。上限:年間30万カナダドル。
対象:市内の若者・子どもたちの発案した若者や子どもたちのためのプロジェクト。団体や組織で応募。上限:年間10万カナダドル。
では、以下、それぞれのプログラムごとにどのようなプロジェクトが実施されているのかを紹介します。
自分の住むネイバーフッドのために、個人が応募できるプログラムです。例えば、「鶏小屋見学」というプロジェクトがあります。自宅で鶏を飼っている人が、地域の人々とともに鶏を飼うことの楽しみや、卵料理をシェアしようと、庭を開放したものです。
(庭に置かれたベンチで鶏を見る子どもたち)
(卵料理のための卵を取る参加者たち)
このプログラムに応募できるのは、非営利の団体や組織。バンクーバー以外の地域の団体も応募することができますが、あくまでも、市内で実施することが条件となっています。例えば、「バンク―バーの「鳥」戦略」(Vancouver’s Bird Strategy)は、市内のどの地域や公園にも在来の鳥が生息できる環境を保全することを目的にしたプロジェクトです。(写真は環境整備前後のバニエル公園内の池) (出典:http://vancouver.ca/files/cov/vancouver-bird-strategy.pdf)
グリーンな未来への道具を作ろう(Building Tools for a Greener Future):若者を対象に、グリーンな分野の各種ワークショップ(たい肥作り、電子機器修理、洋裁、地域食材など)を実施する。
このプログラムの特徴は、なんといっても、若者や子供たち発案のプロジェクトを実現するプログラムであるという点です。例えば、ロードキッチナー(Lord Kitchener)小学校で実施された「屋外教室」プロジェクト。これは学校の敷地内に、植物や食べ物について学ぶためのガーデンを、生徒や教師、保護者で作ってしまおうというものでした。子どもたちはガーデン建設から始め、その後植物を植え、育てるまでの全プロセスを学びます。「教室内ではほとんど話さない生徒が生き生きと関わっているのを見て、感動します。また子どもたちは植物とふれあう作業を通じて、優しくなり、いろんなことに気が付くことも増えています。」(一年生担任マルグエリタ・リーヘイ先生の談話)
(ガーデンと参加した子どもたち)
(バンクーバー教育委員会HP:http://www.vsb.bc.ca/district-news/lord-kitchener-elementary-builds-outdoor-classroom-food-garden-and-green-space)
以上、3つのプログラムの様々な取り組みを紹介しましたが、バンクーバー財団のCEO、ケビン・マッコートはこれまでの成果を次のように話しています。「4年目に入ったこのプログラムから、草の根のプロジェクトが数多く生まれています。そして、これまでの3年間でグリーン関連の仕事は19%増加しました」。バンクーバー市では、この基金の創設により、住民による小さなプロジェクトが数多く生まれ、それが団体や組織による多くの人を巻き込んだプロジェクトと重層的に繋がって、グリーンな都市づくりが着々と進められているようです。
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