トップページ > エコアカデミー一覧 > 第49回 2020年の「ゴミゼロ」達成を目指し、リサイクルに取り組む:アメリカ、カリフォルニア州バークレー市
2015.09.10
アメリカ西海岸、カリフォルニア州、サンフランシスコと湾を挟んで向かい側にある人口11万人強の小都市バークレー。カリフォルニア大学バークレー校があり、進歩的なライフスタイル発祥の地として知られているこの市で、2006年11月に、住民投票が行われました。2050年までに同市の温室効果ガス(GHG)排出量を80%削減し、かつ2007年にはそのための計画を策定するという、シンプルでありながら大胆な法案(Measure G)は、投票の結果、住民の81%という圧倒的な支援を受けて通過しました。この市民の要請を受け、2009年にClimate Action Plan (気候行動計画)が策定されました。
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気候行動計画
【以下のサイトで計画の全文をご覧になれます。】
http://www.cityofberkeley.info/uploadedFiles/Planning_and_Development/Level_3_-_Energy_and_Sustainable_Development/Berkeley%20Climate%20Action%20Plan.pdf)
GHG削減を目指す気候行動計画には5つの目標分野*1が明記されています。その一つが、「2020年時にゴミゼロ(Zero Waste)達成」です。ゴミゼロとは、不要になったもの(通常「廃棄物」や「ゴミ」と呼ぶもの)がすべて再利用、リサイクル(再生利用)、あるいはコンポスト*2化されて、埋め立て処分にまわすものがない状態を指します。
家庭やオフィス、公的施設でリサイクルを推進すると同時に、そもそもの消費を減らすことで、製品を生産するために必要なエネルギー消費を減らすことができ、それがGHGの発生を抑えることにつながります。さらに、埋め立て量が減ることで、処分場での、GHGの一つであるメタンの発生を減らすこともできます。
本稿ではゴミゼロに向けたバークレーの取り組み*3をご紹介します。
*1:5つの目標分野:持続可能な交通と土地利用、建物のエネルギー消費量の削減、ゴミゼロ、コミュニティへのエンパワメント、気候変動の影響への適応。出典:上記、気候行動計画から。
*2:有機物を微生物によって完全に分解した肥料
*3:出典:以下、バークレー市のHP:http://www.cityofberkeley.info/ContentDisplay.aspx?id=71006#Increase_commercial_composting,_recycling,_and_source_reduction
バークレー市では、2020年のゴミゼロに向けて、以下7つの施策を講じてきました。2013年には、一般廃棄物量は2000年比で50%減にまで達しています。
コンポスト化やリサイクルに熱心な住民の手間をできるだけ軽減するために、バークレー市は非営利組織であるエコロジー・センターに委託して、道路脇でのリサイクル品の回収を実施しています。対象となるのは、ビン、缶、プラスチック製品、新聞、ミックスドペーパー(新聞紙・雑誌・段ボール・牛乳パックを除いた紙類)、段ボール紙。それに加え、生ごみや剪定後の木の枝なども、コンポストにするために回収します。
エコロジー・センターのリサイクル品回収車(出典:エコロジーセンターHP http://ecologycenter.org/recycling/)
ビン、缶、プラスチック製品、新聞、ミックスドペーパー、段ボール紙、さらにコンポスト化するための廃棄物を、事業所からも回収しています(バークレー市が直接実施)。これにより事業所のごみ廃棄費用が大幅に軽減されました。また、事業所から回収されてコンポスト化される有機廃棄物の量は、年間6,500トン超にもなっています。
バークレー市のあるアラメダ郡では、建築廃材などの廃棄物量が全体の21%を超えています。これをリサイクルすることで、埋め立て処分場での廃棄物量が減るだけではなく、新しい建築資材を生産するために必要なエネルギーの消費を減らすことにもつながります。現在、バークレー市の廃棄物の18%ほどが建築用廃材で占められています。
せっかく回収した廃棄物でも、リサイクルするために遠隔地まで運んでいては、輸送から出るGHGが増えてしまいます。さらに、廃棄物管理の仕事を地元で生む可能性を失ってしまいます。そのために市では、回収品目をできるだけ増やし、廃棄物転換を地元で推し進めています。
ゴミゼロを達成するには、リサイクルやコンポスト化を増やすだけではなく、そもそもの生産量を減らすことが重要です。そのために、市では様々な取り組みを始めています。
まず、2012年には使い捨てのビニールのレジ袋の配布を禁止しました。買い物袋を持参しなかった客には再生紙の袋や再利用可能な袋の販売を始めました。ある調査では、カリフォルニア州で使われるレジ袋190億枚のうち、リサイクルされる率は5%に満たないということが分かっています。きちんと処分されないレジ袋は捨てられ、水路や野生生物の生態系汚染につながることもあります。
気候行動計画には、市が一般廃棄物の廃棄費用を改訂して(値上げの方向へ)、住民にリサイクルへのインセンティブ(動機付け)を与えるとともに、普及啓発活動も行うことが求められています。住民が負担する廃棄費用は住宅や事業別に、また、廃棄量によっても、以下のように分かれています。
【廃棄物回収費用(1か月):一般家庭対象】
出典:バークレー市HP http://www.cityofberkeley.info/ContentDisplay.aspx?id=7770#Refuse_Rate
役所や公共施設でのゴミ削減は住民に大きな影響を与えます。気候行動計画には、役所のどの部局にも、適切なゴミ分別容器が設置され、職員はリサイクル可能なものは100%リサイクルするよう、適切なトレーニングを受けていることが推奨されています。さらに、紙の利用を減らし、文書作成や配布には電子媒体を用いることが求められています。
バークレー市では、特に以下の、高いミッションを掲げた非営利組織と協働することで、ゴミゼロに向けた取り組みを充実したものにしています。
エコロジー・センター(Ecology Center):1973年に市の新聞回収のパイロットプロジェクトを担って以来、一般家庭を対象にした、道路脇リサイクル品回収事業を担当。バークレー市からの委託事業として、市内でビンや缶、新聞紙、ミックスドペーパー、段ボール紙などを回収しています。1988年には、市と共に、発泡スチロールを禁止する条例を草案し、その条例はその後アメリカの多くの自治体のモデルとなってきました。
エコロジー・センターでは、ミッションを重視する非営利組織として、回収したものができるだけそのままの形で再利用されるように取り組んでいます。たとえば、ガラスのビンを回収すれば、それを粉砕してアスファルトに用いるのではなく、まずは再度ガラスビンとして使えるようにすることを重視します。また、コミュニティにおけるリサイクル教育をセンターの中核的事業と位置付けています。
コミュニティ・コンザべーション・センター(Community Conservation Centers-CCC):
CCCでは、1982年以来、持ち込まれたリサイクル品の買い取りサービス(Buyback Recycling)を提供しています。火曜日から日曜日まで、毎日9時から4時まで営業し、買い取り価格を常時、ホームページで公開しています。買い取ってもらえることで、消費者は「捨てる」ものという感覚から、「再利用や再生利用」できるものという意識に変わるといいます。
CCCはこの買い取り事業を、1982年以来、バークレー市の所有する建物で実施しています。この建物にはエコロジーセンターも入居しており、バークレー市はこの二つの非営利組織と共に、毎年約18,000トンのリサイクル品を回収しています。
バークレー市が2020年にゴミゼロを達成できるかどうかはまだわかりませんが、再利用・再生利用・コンポスト化「できるもの」をリサイクルしようではなく、レジ袋の禁止など、そもそもそう「できないもの」は、使わない、禁止する、生産する量を減らす、といった断固とした施策が、リサイクルを推進する上では効果的なようです。
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