トップページ > エコアカデミー一覧 > 第75回 ハロウィンをグリーンに!:アメリカ、ナッシュビル市
2017.11.17
ここ数年、すっかり日本でも定着したハロウィン。今年も10月後半になると、街がすっかりハロウィンカラーに染まっていました。子どもから大人までが楽しめる参加型イベントとして、今後日本でもますます人気が出そうなハロウィンは、アメリカで特に盛大なイベントとして行われています。
アメリカ人が今年のハロウィンに向け、仮装用コスチュームや、飾り付け、菓子類などに支出する総額は、過去最高の91億ドル(約1兆円)、個人の平均支出額も、昨年の82.93ドル(約9400円)から86.13ドル(約9800円)に増えると、全米小売業協会(NRF)が発表しています【1】。そんな莫大な金額が消費されるハロウィンだからこそ、また多くの人が参加するイベント【2】だからこそ、ハロウィンを「グリーンに!」と呼びかけている自治体があります。ハロウィンイベントが毎年大々的にまち全体で繰り広げられる、米国南東部テネシー州の「音楽の町」(Music City)、ナッシュビルです。
テネシー州ナッシュビル市(共にGoogle Mapから)
【1】 ハロウィンの支出額
全米小売業協会(National Retail Federation-NRF)が、調査会社プロスパー・インサイツ&アナリティクス(Prosper Insights & Analytics)と毎年実施しているハロウィン支出調査(Annual Halloween Spending Survey)の結果(金額は1ドル=113.87 円(11月1日レート)で換算)。(NRFのHPから:https://nrf.com/media/press-releases/halloween-spending-reach-record-91-billion)
【2】 ハロウィンの参加人数
【1】のNRFの調査によると、今年はアメリカ人10人中7人にあたる、1億7900万人が何らかの形でハロウィンのイベントに参加する。
2017年10月、ナッシュビル市のジェネラルサービス部(General Service Department―市民サービス部)が運営する「ソケット・アンプラグ・ナッシュビル」(コンセントを抜こう、ナッシュビル:Socket Unplug Nashville)【3】のブログに大きなカボチャの写真が登場しました。タイトルは、「ハッピー・ハローグリーン」(Happy Hallow-Green)。そこには、10月末のハロウィンを「グリーン」に楽しむヒントが、6項目にわたって紹介されています。
ソケット・アンプラグ・ナッシュビルのブログ記事: http://socket.nashville.gov/blog-new/item/210-happy-hallow-green ナッシュビル市のジェネラルサービス部が運営するブログ「ソケット・アンプラグ・ナッシュビル」では、「ハロウィンには創造と楽しみがいっぱい。今年は、地球にとって、ハロウィンがTrick(いたずら)じゃなくて、Treat(ごちそう)となりますように。それには次の6つの方法で!」と呼びかけている。
【3】 市が環境や持続可能性への取り組みを進めるなか、市民や行政職員の関与や意識変革を促すプロジェクトを担当する。新築建築物の環境認証取得に加え、市民や職員への意識向上を目指す各種ワークショップやイベントの実施、さらに、日々の暮らしの中に取り入れることのできるアイデアなどを、職員のブログとして、丁寧にHPやSNSで発信している。
新品のハロウィン用コスチュームを買うのにかかる金銭的コストよりも、環境にかかるコストの方がはるかに深刻です。コスチュームを作るには、エネルギーや水、その他の自然資源が必要です。たった一度着るだけのコスチュームは、買うよりも、古着屋で入手したり、アップサイクル【4】したコスチュームを自分で作ったりという選択肢を考えてみましょう。お金を節約でき、クリエイティブになり、その上、確実に他の人とダブることはありませんよ!
【4】 アップサイクル
アップサイクルは、クリエイティブな再利用を指し、廃棄物や利用価値のない製品を、環境に優しい、高品質の新しい素材や製品に生まれ変わらせることをいう。
プラスチックでできた蜘蛛や蜘蛛の巣、骸骨などは楽しいけれど、その生産、出荷、廃棄によって環境への負荷がかかります。ご自宅でハロウィンイベントを企画しているみなさん、環境にやさしい素材で、何年も繰り返して使えるような飾り付けをしましょう。あるいは、リサイクルショップなどでみつけた素材で手作りしたり、中古品を買ってきたりしましょう。
ナッシュビル市内には非営利のリサイクルショップが増えつつあります。お得な買い物ができるだけでなく、市内の非営利コミュニティを支援することにもつながります。リサイクル用品を入手しようとする人たちは、SmART! やTurnip Green Creative Reuseへどうぞ!
車で出掛けるよりも、あなたの健康や地球の環境にやさしい交通手段を選びましょう。徒歩や自転車で出かけると、燃料の節約、大気汚染の防止だけではなく、あなた自身の運動にもなります。カロリーをかなり消費しますから、チョコレートを一つ余計に食べたって、全然平気かもしれません! シェアバイクのステーションを探すには、Nashville B-Cycleをご覧ください。
スーパーなどの日常的な買い物に行く時と同じように、ハロウィンでお菓子をもらいに行くときもエコバッグをお忘れなく! クリスマスのプレゼントをサンタさんに入れてもらう、あのクリスマスの靴下のように、自分専用のハロウィンエコバッグはいかが? 自分の名前をちゃんと書いておけば、落としても安心ですね!
子ども達にあげるお菓子を選ぶ際は、あなたの良心に適うものを選びましょう。フェアトレードのチョコレートや、天然糖や有機食材で作られたお菓子のほうが、地球にも消費者にもやさしいです。天然着色料を使ったり、パッケージにリサイクル素材を使ったりしているメーカーもあります。エコフレンドリーなハロウィンのお菓子を、オンライン検索して選んでみましょう。たくさんみつかりますよ!
お楽しみの後は、食べきれないくらいのお菓子と腹痛だけが残った、なんてことになっていませんか。一緒に楽しんだカボチャを堆肥にすることもお忘れなく。裏庭の落ち葉や枯れた花、台所から出る生ごみも、全部一緒に堆肥作りにまわしましょう! そうすることで、これらの有機ごみの埋立処分が不要になり、埋立ガスと呼ばれるメタンの発生も減らせます。堆肥化することで、食品廃棄物は有益な形で土壌に還ります。
堆肥化のために、食品廃棄物を持っていけば、無料で引き取ってくれるセンター(East and Omohundro Convenience Centers)もあります。また枝や落ち葉など、庭から出るごみも 年に4回、市が回収しています。もしその日まで待てなければ、無料で引き取ってくれる場所も3か所ありますよ【5】。
【5】 枝や落ち葉など庭から出るごみの回収(Brush & Yard Waste Collection)
http://www.nashville.gov/Public-Works/Neighborhood-Services/Yard-Waste-Composting/Composting.aspx
以上、ハロウィンをグリーンに楽しむ6つの方法を紹介しました。「ソケット・アンプラグ・ナッシュビル」のブログでは、次のように結んでいます。
「一年を通じて様々な祝日があります。どんな季節にも、持続可能な方法で、祝日を楽しんでみませんか」
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アメリカのカントリー&ウェスタン・ミュージックの本拠地として名高いナッシュビルが環境への取り組みを強化させた背景には、人口増加があります【6】。未開発地が、住宅や事業用用地へと急速に転換されていく中、2015年に就任した市長メーガン・バリー(Megan Barry)が打ち出したのが、「Livable Nashville」(暮らしやすいナッシュビル)という目標です。
多様なステークホルダーで構成されるLivable Nashville委員会を2016年4月に立ち上げ、まずは全市民で共有すべく、以下のビジョンを作成しています。
「ナッシュビルをアメリカ南東部で最もグリーンな都市にすべく、我々は共に、資源を保全し、きれいな空気・水・自然やコミュニティの快適性への公正なアクセスを確保し、私たちが愛するナッシュビルのダイナミックかつ本質的な部分を守り、発展させていく」
この過程で、今回紹介した「ソケット・アンプラグ・ナッシュビル」も生まれました。
ナッシュビルが人口増大と持続可能性や気候変動の問題をどのようにバランスしていけるのか。まだまだ試行錯誤が続くなか、このようなハロウィンへの呼びかけは、ささやかながらも、多くの人々が参加し、多くを消費するお祭りやイベントを通して、累積すると大きな効果につながる可能性もあります。今後、日本でも「ハローグリーン」なハロウィンへの眼差しが生まれるといいですね。
【6】 ナッシュビルの人口
2006年に1,394,928人だったナッシュビルの人口は、2015年には1,637,000人へと24万人ほど増え、今後も2025年に1,904,300人、2035年には2,174,914人と増え続けると予測されている。(出典:ナッシュビルの都市圏計画機構(Metropolitan Planning Organization、MPO)
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