トップページ > 環境レポート > 第15回「日本のビジネスの中心地から環境行動の新たなモデルを発信 ~「みなと環境にやさしい事業者会議」の取り組み」(みなと環境にやさしい事業者会議)

第15回「日本のビジネスの中心地から環境行動の新たなモデルを発信 ~「みなと環境にやさしい事業者会議」の取り組み」(みなと環境にやさしい事業者会議)

「みなとモデル」の創出へ

【写真】「企業と環境展」(会場:六本木ヒルズ)の様子。来場者には、meccの活動の一環として育てた有機無農薬の「mecc米」をプレゼント。

【写真】「企業と環境展」(会場:六本木ヒルズ)の様子。来場者には、meccの活動の一環として育てた有機無農薬の「mecc米」をプレゼント。

【写真】「企業と環境展」(会場:六本木ヒルズ)の様子。来場者には、meccの活動の一環として育てた有機無農薬の「mecc米」をプレゼント。

【写真】「企業と環境展」(会場:六本木ヒルズ)の様子。来場者には、meccの活動の一環として育てた有機無農薬の「mecc米」をプレゼント。

「企業と環境展」(会場:六本木ヒルズ)の様子。来場者には、meccの活動の一環として育てた有機無農薬の「mecc米」をプレゼント。

 現在、meccでもっとも力を入れているのが、毎年秋に開催している「企業と環境展」だ。会員事業者による区内外での環境への取り組みを幅広く発信する場として、2006年の発足以来、毎年開催してきたもので、2010年からはそれまで港区エコプラザで開催されていた展示中心の内容を、セミナーやワークショップを中心により活性化したイベントへと衣替えしてきている。会場も、人通りが多く、賑わいのある六本木ヒルズを借りての開催となった。会員事業者の一つでもある森ビルの協力によるものだ。

 4日間の会期では、初日にオープニングセッションとなるリレートークやパネルディスカッションが開催され、その後も連日のワークショップや小規模セミナーが数多く企画されている。常設展示では会員事業者が環境に配慮してつくっている製品の模型を展示したり、会員企業が発行する環境報告書・CSR報告書を展示したりする他、2011年には国産材を使った木質オフィスのモデルルームを展示する「森のオフィス」の提案もしている。
 この「森のオフィス」の提案は、2011年10月1日からスタートした、国産材利用推進事業「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」の推進につなげるために企画されたものだ。港区内の施設で国産材の利活用を進めることが二酸化炭素の固定に寄与するのと同時に、国産木材を使ったフローリングや家具、壁材で自然に溶け込むような心落ち着くオフィスが実現する──そんな一粒で二度おいしい取り組みを、モデルルームとして目に見える形で示そうというものだ。

【写真】「企業と環境展2011」の会場内に展示された「森のオフィス」。フローリング、家具、壁材に飛騨の杉を使っている。

【写真】「企業と環境展2011」の会場内に展示された「森のオフィス」。フローリング、家具、壁材に飛騨の杉を使っている。

「企業と環境展2011」の会場内に展示された「森のオフィス」。フローリング、家具、壁材に飛騨の杉を使っている。

 meccが設立当初から掲げる目標(目指すべきところ)の一つに、「CO2削減に向けた 全国に先駆ける『みなとモデル』の創出」がある。事業者と区民と区が連携して新しい協働の場を確立することで、これまでにない環境保全活動の取り組みとなる「みなとモデル」を全国に向けて発信することができる、そんな可能性を秘めたネットワークとしてmeccを育てていこうというわけだ。

【図】「みなと環境にやさしい事業者会議」のめざすところ

「みなと環境にやさしい事業者会議」のめざすところ

 2011年10月に始まった「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」は、meccの枠組みで進める事業ではないが、meccのつながりやmeccでの検討が背景にあって実現した仕組みといえる。
 その内容は、港区内で床面積5,000m2以上の建築を計画する場合に、一定割合の国産木材使用を義務付けるというもの。国内の森林がきちんと整備され、二酸化炭素を吸収・固定する健全な森として維持されるためには、森林に関する経済がまわっていくことが必要不可欠。大消費地である都心の港区における木材消費を促進することで、経済の環をつなげる役割を担おうというものだ。

 mecc事務局長の嵯峨生馬さんは、「みなとモデル」について、次のように説明する。
 「港区には、木材産地となる森林はありませんが、“港区らしい木材の使い方”=国産木材の消費を促進することで、産地となる国内の森林を支えていくような仕組みをつくっていけるんじゃないかという発想です。制度自体は一種の規制なんですけど、前向きに捉えれば、この港区エコプラザのように国産木材を活用した、雰囲気のよい建物ができるわけです。これはmeccの事業としてやっているわけではありませんが、meccでの発想が制度の一つのきっかけにもなって、実現したといえるんじゃないかと思っています。そんな新しい仕組みを今後もどんどん生み出していけるような場にしていきたいですね。もっとも、2006年に打ち出して、実際に制度として動き出したのが2011年ですから、時間もかかり、簡単にできることではありません」

きっかけの一つだったエコポイント ~今後のmeccに向けて

 meccが立ち上がった当初、区民の環境行動に対するインセンティブを与える仕組みとして導入されたのは、「みんなとエコポイント制度」だった。現在は、2012年3月末をもって休止し、新規の事業を立ち上げた。
 同制度は、「テレビ画面は明るすぎないよう設定した?」「お湯を沸かすときはナベやヤカンにフタをした?」「食事は残さず食べた?」「ゴミは正しく分別した?」といったエコチェックの項目を設定して、日々の行動を通じた環境への影響を見直していくというもの。港区立エコプラザの受付で「みんなとエコポイントカード」を発行すれば誰でも参加でき、記入済みのエコチェックカードを見せれば、回答に見合ったエコポイントがカードに加算される仕組みだ。パソコンや携帯電話を通じたオンラインのシステムも提供されていた。
 この「みんなとエコポイント」は、前述の通り2012年3月末で休止し、meccの事業としては終了したが、貯めたエコポイントを使える場として設定されていたのが、年に4~5回ほど開催してきた「エコバザー」だ。
 5月の環境啓発イベント「エコライフ・フェアMINATO」では、会場の中央でエコバザーを実施するのが恒例となっている。バザーへの出品は、mecc会員事業者の協力によって集められている。例えば、社員向けの頒布品の余剰在庫や、サンプル品や販促グッズの文具やおもちゃ、食器などが並ぶ。中でも人気なのは、会員制食品宅配サービス業のらでぃっしゅぼーやが供出する有機野菜セット。アパレル会社から提供のあった端切れ布も事前の心配をよそに大きな人気を呼んだ。これらの商品を目当てに、毎回多くの人々が集まり、大盛況を呈している。
 エコバザーの売上(2011年度は198,870円)は、全額が環境保全に寄付される予定。

【写真】「エコライフ・フェアMINATO2011」内で、毎年恒例の「エコバザー in エコライフ・フェア」を開催(2011年5月21日、有栖川宮記念公園にて)。
【写真】「エコライフ・フェアMINATO2011」内で、毎年恒例の「エコバザー in エコライフ・フェア」を開催(2011年5月21日、有栖川宮記念公園にて)。
【写真】「エコライフ・フェアMINATO2011」内で、毎年恒例の「エコバザー in エコライフ・フェア」を開催(2011年5月21日、有栖川宮記念公園にて)。
「エコライフ・フェアMINATO2011」内で、毎年恒例の「エコバザー in エコライフ・フェア」を開催
(2011年5月21日、有栖川宮記念公園にて)。

 区民の環境行動促進を目指したmeccにとって、エコポイントは設立のきっかけになったものの、実際に動き出してからは必ずしも中心的な取り組みではなかったという。むしろ、企業間連携と区民に対する直接的な働きかけ──一企業としてはなかなか取り組みづらいことも、meccの枠組みでできることもある──などが中心となって、「企業と環境展」などの形で実施してきている。
 今後、区民の環境行動をどう盛り上げていくか、更なる活動の柱について検討している段階だ。

 会員事業者も、このところ横ばい傾向にあるものの、区内を見渡せば、まだまだ参加してもらえていない事業者は数多くある。現在は、「企業と環境展」などの機会を通じてmeccに興味を持ってもらったところ、環境に関わる事業で区といっしょに進める機会のあったところなどから地道に広げていっているというが、裾野の広がりはまだまだ見込めるという。
 一方で、具体的にどういう活動をして、参加事業者に対してどんな価値を与えていけるかというところの工夫も必要になってくる。

 今後のmeccの方向性について、嵯峨さんは次のように話す。
 「企業側のニーズや社会的要請が変わってきている中で、地域社会と企業とをつなぐというところで、どういう形が適切なのか。meccが発足した2006年頃の環境活動は普及啓発を主流として意義のあるものになっていましたが、時代も変わって──東日本大震災もありましたし──そうした普及啓発にとどまらない、より実効性のあることをしていかないとならないことを感じています。meccの活動内容も年々変化していくものだと思います。そうした辺りが、これから求められるものになってきていると感じています」

 

 設立から7年目を迎えて、一定の成果も課題も見えてきた。meccの新たな局面に向けた挑戦が、今またはじまっている。

【写真】話を伺った、事務局長の嵯峨さん(左)、区担当者の若杉さんと北野澤さん(右)
【写真】話を伺った、事務局長の嵯峨さん(左)、区担当者の若杉さんと北野澤さん(右)
話を伺った、事務局長の嵯峨さん(左)、区担当者の若杉さんと北野澤さん(右)

このページの先頭へ

本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。