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2013.07.16

第34回「子どもたちとともに歩んできた20年の月日
 ~子どもたち自身の実践活動を手助けする、あきる野市・菅生(すがお)の『自然の学校』の取り組み」

20年前にはじまった「自然の学校」

 あきる野市北東部に位置する菅生地区は、秋川左岸の河岸段丘に広がる、旧秋川市の丘陵地帯。同地区を流れる多摩川水系平井川の支川・鯉川流域には、ゲンジボタルやトウキョウサンショウウオなどが繁殖する豊かな自然環境が残されている。
 『自然の学校』(浅原俊宏校長)は、ここ菅生地区の里山や畑をメインフィールドに、20年前から小中学生を中心とした体験プログラムを実施している。体験を通じて、子どもたちが遊びの文化や生活の知恵を知り、身近な自然に気づき、大切にする心を育てることを目的とした活動だ。“学校”といっても、学校法人が運営する私立の小中学校等ではないし、公立の学校でもない。自然体験活動のための「場」「プログラム」「指導者」を、年間を通じて提供する、いわゆる「自然学校」【1】と呼ばれる団体の一つだ。
 『自然の学校』の参加者は、年間登録(年会費12000円)をして、定期的に開催される日帰りから1泊程度のプログラムに参加する。ここ2年ほどは隔月で開催している。

食べられる草の説明をする、ゆかりさん。話を聞いた子どもたちは、さっそく折って、匂いをかいで、ビニール袋に採り貯めていく。ちぎった葉っぱからは、清々しいヨモギの香りや、慣れ親しんだミツバの香りがする。「ほんとにミツバだ!」、そんな声も聞こえる。

食べられる草の説明をする、ゆかりさん。話を聞いた子どもたちは、さっそく折って、匂いをかいで、ビニール袋に採り貯めていく。ちぎった葉っぱからは、清々しいヨモギの香りや、慣れ親しんだミツバの香りがする。「ほんとにミツバだ!」、そんな声も聞こえる。
食べられる草の説明をする、ゆかりさん。話を聞いた子どもたちは、さっそく折って、匂いをかいで、ビニール袋に採り貯めていく。ちぎった葉っぱからは、清々しいヨモギの香りや、慣れ親しんだミツバの香りがする。「ほんとにミツバだ!」、そんな声も聞こえる。

 毎回の例会では、里山を歩いたり、木登りや川遊びをしたり、畑作業をしたりと、季節ごとの自然を存分に楽しむ。特に“食”を通じて自然を味わうプログラムは子どもたちに好評だ。野山を歩きながら食べられる山菜や野草を摘んでみたり、畑では収穫体験をしながら新鮮な作物にかぶりついたりする。
 4月末に開催した、今年度(2013年度)の第1回例会では、「春の里山ハイク」と題して、鯉川沿いに延びる林道を源流に向かい、道端の野の草を摘みながらのんびり・ゆっくりと歩を進めて、春の自然を満喫した。
 道々、まわりの子どもたちを呼び集めてのミニ講座が始まる。
 「はい、食べられる草の話~!」
 説明するのは、浅原校長の奥さんのゆかりさん。もともと環境調査が専門だから、動植物の生態にも詳しい。
 ヨモギ、ミツバ、ユキノシタの葉っぱ、カキオドシなど、思った以上に食べられる草がたくさん生えている。ヤブカンゾウは根本の茎を食べるという。クセのないアスパラガスのような食感のタチシオデの若芽は、茎を手で手繰っていくと硬くなるところがわかるから、そこで折って、柔らかい部分だけを食べるのだという。

 「道端の草でも、結構食べられるんですよ、皆知らないだけで。ただ、あまり食べ過ぎると下痢をするから、ほどほどにと言っています。これらの草は、午後のおやつの時間に、天ぷらにして食べるのです。他にも、今回はホダ木で育てたシイタケや山菜を朝採ってきて用意してあります。自然の学校では、毎回、山や畑で採れた自然の恵みをおやつとして食べてもらいます。里の恵みを五感で味わってもらう。そうやって、子どもたちの中に何かしら刻まれていくものが残ってほしい、そんな思いです」
 道を歩きながら、自然の学校の活動について、校長の浅原俊宏さんはそう説明する。
 毎年4月の第1回は、オープンプログラムとして開催している。この日は年間登録する会員だけでなく、家族や友だちを誘ってのお試し参加の人たちも集まって、スタッフを含めて総勢30名ほどとなった。

突如響きわたる「あ~ああ~!」の叫び声

 6月の例会(第2回)は、「ホタルキャンプ」と称して1泊2日のプログラムを実施した。この季節、鯉川沿いには、夜になるとホタルが舞う。気温はやや低く、午後には一時にわか雨が降ったりもしたが、夕方以降は晴れ渡った。
 この日は、土曜日の夕方4時に集合し、日が落ちて暗くなってからホタル観察に出かけるというスケジュール。日が落ちる前のまだ明るいうちに、下見として同じコースを歩いたから、子どもたちも皆、コースの様子は想像がつく。下見では、川岸に生えるノイチゴの甘酸っぱい実を口に含んだり、まだ青いオニグルミの実をもいだりしながら、草をかき分け進んでいった。

まだ明るいうちに、ホタル観察の下見として同じコースを歩く。川岸に生えるキイチゴの赤く熟した実を口に頬張る。

まだ明るいうちに、ホタル観察の下見として同じコースを歩く。川岸に生えるキイチゴの赤く熟した実を口に頬張る。

 まだ明るいうちに、ホタル観察の下見として同じコースを歩く。川岸に生えるキイチゴの赤く熟した実を口に頬張る。

キャンプの夜。テントの中は子どもたちだけの世界だ。
キャンプの夜。テントの中は子どもたちだけの世界だ。

 いったん戻って、それぞれが家から持ってきた夕食の弁当で腹ごしらえをしたあと、長袖長ズボンに着替えて、いよいよホタル観察に出発だ。
 「子どもは懐中電灯を持たない! 暗くないよ、ちゃんと見えます。じゃあみんな、目を閉じて! 30秒数えます。1・2・3・4・5……28・29・30! はい、目をあけてごらん。明るく見えるようになったでしょう」(本当だ!と子どもの声)「そういうことです。じゃあ、出発!」
 出発に先立って、子どもたちの集中力を高めつつ、ホタル観察の気分を盛り上げていく。

 ホタルキャンプの翌日は、畑での収穫体験などのほか、ホタルを見た同じ川で「川遊び」もした。岸辺でタモ網を差し入れてガサゴソとすくってみると、一すくいで小魚や小エビ、ヤゴなども網に入る。網の目に絡まるように稚魚の群れが入ることもあった。石をひっくり返すと、隙間に隠れたカニがわさわさと逃げていく。捕った魚は水槽に入れて、小さい子たちも覗き見る。

指先や手もとに止まったホタルをじっくりと観察する。

指先や手もとに止まったホタルをじっくりと観察する。

 指先や手もとに止まったホタルをじっくりと観察する。

両手で川の水をすくってしぶきを立てる校長の姿が…。
両手で川の水をすくってしぶきを立てる校長の姿が…。

 ふと、水しぶきが飛んでくる。ふりかえると、前かがみになってニタリと笑顔を見せる浅原校長と目が合う。着替えがないからやめてよと真顔で嫌がり、逃げる子どもたち。そんな子どもたちにもお構いなし、両手で水をすくってしぶきをたてる校長だ。仕返しをしてくるようになればこちらのもの! そんなふうにして、子どもたちは『自然の学校』の洗礼を受ける。

鯉川での川遊び。ホタルキャンプの翌日、前夜ホタルを探した同じ川にて。

鯉川での川遊び。ホタルキャンプの翌日、前夜ホタルを探した同じ川にて。

 鯉川での川遊び。ホタルキャンプの翌日、前夜ホタルを探した同じ川にて。

 4月の里山ハイクでも、校長自らが率先して野遊びへといざなう場面が見られた。
 鯉川源流に沿って伸びる林道を歩いて小1時間ほど、お昼の時間になって小腹がすいてきた頃、道端にシートを敷いて、みんなでお弁当を広げた。食べ終わったらしばし休憩時間。それぞれのんびり過ごす。道から河原を見下ろすと、氾濫原の草原が開けている。正面には、フジのツルが這い伸びて、まるでフジの木が満開の花を咲かせるかのように、薄紫色に彩られた大きな木も見える。
 食べ終わって暇を持て余した子どもたちのうち、原っぱで遊び始める子どもたちの姿もちらほらと現れはじめる。
 突如、野原の奥の木の陰から、「あ~ああ~!」と叫び声が響く。見ると、枝から垂れ下がったフジのツルにぶら下がる校長が、ジャングルの王者・ターザンよろしく出現する。あっ!?と驚く子どもたちの表情。ぼくも・私もやりたいと、殺到する。

満開に花咲く“フジの大木”!?

満開に花咲く“フジの大木”!?

 満開に花咲く“フジの大木”!?

フジのツルのブランコで戯れる校長の浅原俊宏さん。

フジのツルのブランコで戯れる校長の浅原俊宏さん。

 フジのツルのブランコで戯れる校長の浅原俊宏さん。

 理論派のゆかりさんに比べて、校長の浅原俊宏さんはより感覚的だ。草花の名前を聞かれても、「おい!ゆかり~。これなんだっけ?」と大きな声で呼び寄せて確認する。その分、旺盛な子ども心とバイタリティーで、幼少時代に九州の野山で遊び歩いたその当時のままに、率先して子どもたちと遊びまわる。そんなふうにして“自然の遊び方”を、身を持って伝えていく。

 『自然の学校』では、6月以降のプログラムでも畑の作業や里山での野遊びなど盛りだくさんのプログラムを用意している。
 今年度の活動の予定は、以下のような計画だ。
 8月にはツリークライミングや落ち葉溜めの天地返し【2】と虫探し、
 10月には秋の里山散策とサツマイモの収穫、
 12月はお餅つきとしめ縄飾りづくり
 2月の最終回には落ち葉溜めづくりと焚き火
 自然の中で遊ぶことを大事にしたいから、ゲームやおもちゃは厳禁。おやつも、四季折々の自然の恵みを生かしたものを、プログラムと関連付けて出しているから、お菓子などは持ち込ませない。

注釈

【1】自然学校
 明確な定義は必ずしもないが、自然体験活動の受け入れ体制となる施設や組織を指して「自然学校」と呼ぶ例が全国各地に広がっている。文字通り、自然に学ぶ活動を意味する。
 自然体験活動には、キャンプや山登り、川遊びなどのアウトドアアクティビティや自然観察をはじめ、農業体験・漁業体験や田舎暮らしといった生活体験なども含まれる。
 こうした自然体験活動を通じて、「人と自然」「人と人」「人と社会」の関わりを学んで、持続可能な社会の構築に向けた人づくりを目的とする取り組みである。
【2】落ち葉溜めの天地返し
 落ち葉溜めは、枠で囲った中に落ち葉を溜め込んで、踏み固めたり糠などの発酵促進剤を入れたりして、微生物の働きを活性化させるためのもの。  熱が籠もりやすい奥の層で分解が進みやすいのに対して、表面層は外気に晒されて温度が下がりやすく、分解も進まない。このため、落ち葉溜めの上層と下層をひっくり返して入れ替え、発酵を均一化させる。この作業を天地返しと呼ぶ。
 なお、落ち葉の中は、発酵熱で温度が上がり、ミミズや昆虫にとって格好の隠れ場所になっている。

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