トップページ > 環境レポート > 第40回「ジテツー(自転車通勤)が普通になれば、都市の交通は大きく変わる ~『TOKYOツーキニスト』主宰・内海潤さんの取り組み」
2013.10.21
自転車通勤は、ルールを守って安全第一。内海さんは、前に3つ、後ろに4つのライトを点けて走っている。(内海さん提供)
「東日本大震災を機に、自転車で通勤する人たちも目に見えて増えてきました。自転車の持つ機動性が大きな注目を集めたできごとになったといえます。また、新しく自転車を買って、乗りたくてたまらないからと通勤にも使うようになっているような人も多いですね。春先になるとピカピカの自転車に乗った人たちが朝の通勤時間にもどっと増えてきています。始めること自体はそれほど難しくはありませんし、慣れないと最初はつらくても、そのうちだんだんと疲れ方も少なくなってきます。むしろ、乗らないと気持ち悪くなっていくんですよ。“気持ち悪いワールド”って、私は言ってるんですけど。何か血がドロっとしている感じというんですかね、サラサラしてない感じなんですよ。“いかん!”みたいなね。“はやく乗らなきゃ!”って。久しぶりに乗ると、風がバーッと感じられて気持ちいいんです。“うわー気持ちいい!やっぱり最高!!”と思うわけです。それはぼくだけじゃなくて、乗っている人は皆そう言いますね」
現代社会では、慢性的に生活習慣病に悩む人が増えてきている。生活習慣の悪化が原因で起こるわけだから、生活習慣を改めれば症状も改善する。そのためには、いかに楽しく続けられる運動を定期的に行えるかが問われる。そうして、早朝や帰宅後にトレーニングウェアに着替えて走っている人も少なくはない。ただ、そのためにわざわざ時間を割くことができないまま、何も変えられないでいる人の方がはるかに多い。皆、忙しい生活を送っていて、やりたいこともたくさんあるからだ。
内海さんの提案は、だったらそれを通勤の往き帰りの時間にやってしまえばいいじゃないかということだ。どうせ電車の中で過ごさなくてはならないのなら、その時間を有効に使いたい。時間に対してシビアになっている現代人だからこそ、上手に時間を管理する。そんな発想の転換で、すべてが好転するキーとなる。
お話を伺った、『TOKYOツーキニスト』の内海潤さん。胸元には自転車をかたどったカフスボタンを付けているのが、内海さんなりのおしゃれとメッセージだ。
一方で、会社が認めていないケースも、今はまだ少なくはない。欧米で自転車通勤があれだけ盛んなのは、多くの国では通勤交通費の支給がなく、自腹で通っているからだという。支出の節約にもつながって、健康や環境にもよい。しかも自転車専用レーンなどインフラも整備されているから、快適に走行できる。自転車通勤が人気を呼ぶのも当然だろう。幸か不幸か、通勤時の事故や怪我などは労災対象になっていないから、雇用側も自転車通勤に対して大らかな気風がある。
日本では、通勤手当も支給されるし、通勤途中の事故も労災対象になる。それだけ福利厚生が手厚いことは、労働者にとっては喜ばしいことだが、その分、保守的になってしまう面もある。通勤手当についても、マイカーや自転車で通勤する人に対して片道の通勤距離に応じた非課税の限度額を国が設定している【1】。例えば、平成25年4月1日現在の法令では、10km以上15km未満で6,500円、15km以上25km未満では11,300円などと定めている。定期代よりも低く設定されているから、会社としてもむしろ経費削減につながる。事故の補償なども、自転車保険に加入しておけばカバーできるところもある。勤務先での駐輪場をきちんと確保し、走行時のルールやマナーを守って、安全に走行することも自転車通勤をする人の責務といえる。
そうして正々堂々と自転車通勤できる環境が整えば、本人はやる気になるし、知らず知らずのうちに健康にもなるし、朝エンジン全開で会社に来るから能率も上がる。ひいては会社にとってもメリットは大きい。
7年後の東京オリンピックに向けて、自転車レーンの整備なども含めて、インフラが整っていけば、安全性もより高まっていって、日本でも自転車通勤が当たり前になっている社会が遠くはない将来に実現しているかもしれない。そういって、内海さんは笑顔を見せる。
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