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第1回自然とよりそい、緑がつなぐ都市再生

エコアカデミーインタビュー3.緑がつなぐコミュニティ―

―都市をつくる上でも、防災の上でも、コミュニティ―の再生が、とても重要であるとい うお話をうかがいましたが、コミュニティーを考える上で緑にはどのような役割があるの でしょうか―

人間とは面白いもので、とりわけ、日本人は、常に愛する存在を持たないと、ある種のイニシエーション(注7)というか、地域の特色を象徴するようなものを求めるんですよ。
だから緑はそういう意味で心地よい。なぜかというと、愛情を注いていても、裏切らない、口答えしない、それでいて、緑は心地良いものだからです。

緑には、いろいろな意味で利用効用だけでなく、それ以上に、存在効用がある。
存在効用は意外と気が付かれませんが、緑を使って遊んだり、楽むだけでなく、そこに緑があることによって、発災時には、防災機能を発揮してくれるし、それから、二酸化炭素の吸収源になるという環境貢献をも有しています。
存在効用と利用効用の両用が相まって、地域に存在するという意味で、緑ほど身近で頼もしい存在はない。

写真:東京ミッドタウン

コミュニティーといっても、何を中心にコミュニティーをつくるか考えると、選挙を中心に作るというのは、ナンセンスですよね。一方、地域の緑を育てていきましょう、地域を豊かにしていきましょう、そういうコミュニティーであれば、みんな一生懸命参加してくれるわけですよ。ある種の「緑はつなぎ手」なんですよ、緑は媒体なんですよ。
そういう意味で緑を評価すると、非常にものがわかりやすいのではないでしょうか?

具体的な例を言うと、ニューヨークのハイライン(注8)ですよね。
マンハッタン島の端のあたり、昔、食肉加工場や食にまつわる倉庫、工場地帯が多く、そこに平面交差すると事故が多かったので、ハイラインという高架鉄道を通したんです。けれども1950 年代になると、トラック輸送が盛んになり、貨物輸送が衰退してしまいました。
鉄道は放置され、錆びつき、同時に街も活力を失いました。そこでニューヨーク市が、鉄道を取り壊す計画を出しました。ところが、地域の市民が立ち上がって、全長6.8kmの路線跡を公園にしようと活動を始めました。なぜかというと、雑草が生え、ウルシ類の木が生え、いい具合で緑が育っていたのです。これを整備すれば、もっとスマートな街になると、市民が中心になり、ジュリアーニ市長の応援のもと、ハイラインという構想が実現しました。 実は、今、この地域がものすごい活性化をしているんですね。
このように、行政主導ではなく、地域住民主導で、都市再生が実現したという実績があります。

このような事例は、意外と多く、緑に着目しながら、コミュニティーの再生や地域社会を支えていく大きな存在として緑をとらえ、その傍らに、防災機能、エコロジカルな機能、都市の暑熱環境の緩和機能と利用し、地域が緑によって繋がれて、そして、絆をふかめて、良質はコミュニティーを形成して、様々な環境問題に対応していくことができるのではないでしょうか。

この環境問題ですが、環境ストレスは、どこにしわ寄せがいくかというと、体の悪い人、高齢者など弱者に行きます。今度の津波でもそうでした。
環境ストレスが弱者に行くことを前提にしながら、緑を中心に、いかに絆を深めていくか、そのためには、かつての江戸が、ガーデンシティーとして世界的に評価されたように、大都市でありながら緑量が多かったというところにポイントがあると思います。自然によりそう暮らしと、その自然をコサージ(注9)にした祭があり、そこに防災組織の形があった。これは、現代、減災を考える上で、地域構造をどのように作っていくかが、とても大事であることを示しているのではないでしょうか。
一騎加勢に言ってしまいましたが、こういうことじゃないでしょうか。

注釈

  • (注7)イニシエーション(initiation):ある集団や社会で、正式な成員として承認されること。また、その手続きや儀式。成人式・入社式はその一形態(出典:「大辞泉」小学館)。
  • (注8)ハイライン(The High Line):アメリカ、ニューヨーク州、マンハッタン、ウエストサイド地区に1930 年代に建設された貨物鉄道廃線路の公園整備。地元NPO とニューヨーク市とのパートナーシップのもと、整備計画を立案、2006 年より建設工事が開始され、2009 年に公園として一般開放された(出典:ハイライン公式WEB サイトhttp://www.thehighline.org/外部リンクより)
  • (注9)コサージ(corsage) 女性が、胸・襟・肩などに留める小さい花束や花飾り。生花・造花などを使う。コサージュ(出典:「大辞泉」小学館)。

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