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第1回自然とよりそい、緑がつなぐ都市再生

エコアカデミーインタビュー5.国際的都市間競争に打ち勝つ力とは

―これからの日本、そして東京の再構築というテーマでは、日本独特の自然によりそうと いう発想と、江戸の街づくりや祭りに学ぶところがありそうですね、最後になりましたが、 これからの東京に、どのような期待がありますか―

今までインナートリップの話をしてきましたが、東京には、実は大きな課題があります。
たしかに、緑や文化で、心豊かに暮らしやすい東京をつくることも大切ですが、国際的な都市間競争にどうやって打ち勝つかという大きな課題であります。
今、僕が一番懸念しているのは、東京が国際的な競争力を失っているという事実です。
これまで、東京の評価は、実はものすごく高かった。
考えてみれば、東京は、カナダ1国分くらいの経済力がある大都市なんです。
ところが、未来はどうなのかというと、ものすごく、発展途上国が押し上げてきている。
特にアジアが成長し、東京は、ズルズル後退しはじめている。

ここで、国際的な都市間競争で、何が魅力なのかと考えると、その一つは、安心で安全であること、東京の評判のよさは、多様で、安心で安全であること、それが国際的な評価につながっているのです。世界中の美味いもの、世界中の楽しいものが、脅かされることなく安心して楽しめるっていうのが、東京の魅力であり、東京の国際的な評価なんです。

写真:香港ビクトリア湾

しかし、東日本大震災、さらに、福島原発事後の影響が与えたダメージは大きく、追い打ちをかけて、円高の影響で、東京にアジア拠点を置いていた外資系企業が、シンガポール、香港、上海、ソウルとアジアの都市に移転し始めている。このような状況の中、東京が国際的な都市間競争に打ち勝つ力をどうやって作るのかが、大きな課題となっています。

急成長をしているアジアの都市には、派手さで競うのではなく、「やっぱり東京っていいよね・・」っていう魅力で競うべきだと思います。それは、さっき僕が言ってきたものが可視化されてきた東京っていうのが望ましいんじゃないかな。例えば、外国人が港区に住みたがるのは、緑が多くて、楽しいところが多くて、だからみんな港区に住みたがる。
これと同じ心境で、シンガポールや香港、上海もいいけど、東京の方が、適当な倫理感と楽しさが共存し、安心で安全、しかも美しい、だから東京が一番いいと、決めてもらえるようなものをつくらなければならないね。

―安全で安心、そして、日本らしい景色と、それが、都市の中に溶け込んでいるところに、東京の魅力を見出していけばいいのでしょうか―

そうですね。やっぱり、アジアの都市の派手さにはかなわない。
東京のもつ品のいい佇まい、それで競って行く以外にないかもしれません。
しかし、品がいいだけでも、魅力にならはい、ダメなんですよね。

写真:江戸城 田安門

魅力っていうのはね、何かというと実は、多様性なんですよ。
サブカルチャー(注11)がないと文化は育たない。
歌舞伎もね、かつては、サブカルチャーですよ。能や狂言にくらべ、品の悪いものと思われていたんです。品のよさと品の悪さの両方がないと、刺激的にはならない。時代とともに、どんどん価値観が変わっているから、サブカルチャーがメインストリームに転換するときがある。いつもそういう風にサメの歯のように、次の用意がサブカルチャーの中に仕込まれている。本当の意味でのクリエイティブな文化って、そんなものじゃないかな。江戸の文化も、洒雑でいきだって言われているでしょ。

それはなぜかというと、人が住まない番外地の文化が、人が住むところに入り込んでいって、ある種の刺激になって、文化を作ってきたんですよ。ある種の遊びがないと、文化は育たない。現在の東京は、それを仕込んでいないというところに危機感を感じますね。

サブカルチャーっていうのは、どちらかというと洗練されていないから、ちょっと汚くて品が悪い、でも、緑が入ることでサブカルチャーを品よくしてしまう。江戸でいうと、吉原の柳とかね、水辺とかね。
緑は、そうゆう意味でも、これからの東京、その魅力をつくる上で、大きな役割を担う存在であると思いますよ。

注釈

  • (注11)サブカルチャー( subculture):社会の正統的、伝統的な文化に対し、その社会に属するある特定の集団だけがもつ独特の文化。大衆文化・若者文化など。下位文化。サブカル(出典:「大辞泉」小学館)

―インタビューを終えて―

涌井先生は、これまで、都市から過疎農山村に至るまで幅広く「景観十年、風景百年、風土千年」というお考えのもと、人と自然の空間的共存を図る造園技術をベースに、数多くの作品や計画に関わってこられました。

今回、東日本大震災から、今後の日本、そして東京の再構築をテーマに、日本独特の自然によりそう「負けるが勝ちのデザイン」、江戸にまなぶ街づくりのモデル、今後の国際都市間競争に打ち勝つ東京の魅力づくりについて、幅広くお話いただきました。これらのお話には、「緑」の存在と、自然によりそう人々の姿、そして絆というテーマが貫かれおり、造園家として、自然に向き合い、自然を読み解く、先生のまなざしを感じました。

東日本大震災によって、私たちは自然の驚異を思い知らされましたが、その一方で、今だからこそ、かつての日本人がもっていた自然に向き合う姿勢、まなざしをもつことの大切さに気付く機会を得たと思いました。

インタビュアー 峯岸律子(みねぎしりつこ)

環境コミュニケーション・プランナー。エコをテーマに、人と人、人と技術を繋げるサポートを実践。
技術士(建設部門、日本技術士会倫理委員会)、環境カウンセラー、千葉大学園芸学部非常勤講師。

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