トップページ > エコアカデミー一覧 > 第5回 ECO女子のチャレンジ~エコキャンパス・プロジェクト~
-南太平洋のキリバス共和国(注11)で、「おひさまクッキング」の活動をなさっているとのことですが、どのような活動なのでしょうか-
高潮による被害(キリバス共和国)
2006年、本学主催で開催した国際シンポジウムで、南太平洋諸国の政府機関のコイン・エトゥアティ氏(キリバス出身)の講演がありました。地球温暖化による海面上昇に起因する高潮の被害状況に関するお話でした。シンポジウムは、ただ開催するだけではなく、参加者同士が交流を深め、その関係を継続させることが大切だと思っています。そこで、エコキャンパス研究会の学生たちを中心に、キリバス共和国に行くことになりました。しかし、沈みゆく島々の状況を見るだけではなく、国際交流学部として大学の講義で学んだことを自分たちで実践するためには何をすべきなのか。高潮被害を受けた道路の修理や護岸工事は、学生たち、ましてや女子では、実際には無理です。しかし、あきらめず、自分たちにできる解決策を探りました。
まずは、キリバス諸島で生活する人々の様子を調査しました。実は、キリバス共和国では高潮被害も深刻な問題ですが、市民生活に深刻な影響を与えている問題が他にもありました。
まず、エネルギーです。キリバスは島国で、灯油やプロパンガスを輸入に頼っています。値段も日本とほぼ同じですから、現地の経済状況からすると、燃料費の家計負担はかなり大きいです。
現地の方々とともに汗を流して作ったソーラー・クッカー
そこで、太陽の光で料理ができる「おひさまクッキング」としてソーラー・クッカー(注12)を紹介するプロジェクトにチャレンジしました。ところが、現地には日本のようなホームセンターもありません。現地で調達できる材料や技術で作れるソーラー・クッカーでないと、その広がりは期待できません。他方で、キリバスの調理方法は、「煮る」と「蒸す」が主で、タロイモやパンの実を煮る、米をなべで炊くなどが一般的です。さらに大家族が多いので、一度にたくさんつくります。そういった点でも、太陽熱を利用するソーラー・クッカーは適していました。
日本では、足利工業大学、現地ではキリバス技術専門学校の先生、生徒の方々と、キリバスで生産できるソーラー・クッカーの開発を進めました。本学の学生たちは語学が堪能ですから、現地のスタッフと楽しく会話しながら、ともに汗を流しました。また、キリバスの主婦の方々のご協力をいただき、デモンストレーションもおこない、「太陽なんて暑くていやだったけど、太陽の利用法とありがたさを教えてもらった」とコメントをいただくことができました。また、地元の新聞からも、「燃料費の高騰するなか、家計を助ける期待がかかる」と紹介していただきました。日本人の生活から比べたら、実際のところキリバスの生活では、二酸化炭素なんてわずかしか排出していません。二酸化炭素排出削減というコンセプトで現地の方々にアプローチをしてもピンとこないのです。
校章入りマイボトルの販売、利益はすべてキリバス支援へ
一方、水不足ですが、近年、地球温暖化による気候変動の影響で、キリバスでは降水量の変動が大きく「降ればどしゃぶり、降らなきゃ干ばつ」という極端な天候が続いています。また、急激な都市化で人口密度が高まり、地下水の枯渇や生活排水による汚染で地下水が飲用できない、という水不足が深刻となっていました。この現状に、エコキャンパス研究会では、雨水タンクをキリバスの小学校に寄付するため、大学内で省資源のためのマイボトルを売り、その収益金や募金で資金集めをしています。キリバスでは、一般の家庭には、雨水タンクが普及しているのですが、小学校などの公共施設には、設置が遅れています。
キリバスでの体験のひとつひとつは、現地の人々の現状に耳を傾け、ともに解決策を考える、現地の人たちが自ら取り組める方法を考える、そういった国際協力の在り方を学ぶ上で学生たちに大きな成長をもたらしました。キリバスでの活動は、これまでエコキャンパス研究会の活動として継続してきましたが、国際交流学部の現地実習科目として展開できるようになりました。本学ならでは、女性ならではの視点を活かし、キリバス住民とともに歩みながら、温暖化の問題に対して、日本のみなさんにも関心をもってもらえるよう、学生とともに研究を発展させていきたいと思っています。
本事業は、公益財団法人 東京都区市町村振興協会からの助成で実施しております。
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