トップページ > エコアカデミー一覧 > 第4回 カーボン・オフセットでつなぐ都市と森林
-自治体が、カーボン・オフセットに取り組む上で、クレジットを購入する場面もあると思いますが、クレジットには、国際的なものや国内のものなど、いろいろな種類があります。埋め合わせ(オフセット)ができるなら、クレジットはなんでも良いのでしょうか。-
現在、日本で市場流通型のカーボン・オフセットで用いられるクレジットには、京都メカニズムクレジット(注5)、環境省のオフセット・クレジット(J-VER)、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)(注6)などがあり、各クレジットを購入することで、埋め合わせ(オフセット)を行うことができます。1トンの価値を金額に換算して取引されるもので、どれを購入しても、数字の上では、埋め合わせ量に変わりがありません。しかし、同じ1トンですが、創出するプロセスがそれぞれ異なることに関心をもってクレジットを選ぶということも大切だと思っています。
私たちの組織は、「グリーンプラス(green-plus)」という名前ですが、これは、前身である環境NPO法人の「地球温暖化防止のために緑を増やしていこう」という活動から由来しています。当時は、企業のCSR活動の支援策として、海外での植林活動に取り組んでいました。ところが、企業の方から、植林活動は賛同するが、海外よりも日本国内での活動にできないか、国内の方が身近で植林の現場も見に行くこともできる、といった要望がありました。
これを受けて、私たちは、北海道から沖縄まで、各地の森林組合を打診して、「今、地球上で木が減っています。植林する場所はないですか、企業の支援で木を植えて森をつくりましょうよ」と、声をかけました。ところが、あらゆる現場の人たちに「ばかたれ」と言われてしまったんですよ。
本来の林業では、若い木が多く、除伐などの管理や、材木として伐採していくことで、高齢の木が少なくなっていくのですが、日本の人工林の年齢分布は、若い木が少なくて、40から50歳の木が一番多い状況にあります。国産材の需要が減ったことや、担い手の不足によって、このような状態になっているのです。木を植えるための支援よりも、木を切ることに企業のお金を活用させてほしい、というのが現場の声でした。これは北から南からどこからも同じようなことを言われました。
―企業のCSR活動となると、「木を切っています。」よりは、やはり「木を植えています。」のほうが、イメージが良いですよね。―
そうですね。「木を植えています。」の方が、断然イメージが良い。なので植林できる場所を提供してほしいと何度も打診したのですが、現場の方に「植えるなんてばかなこと言ってるんじゃないよ、これを切らないと植える場所なんてどこにもない」って言われて、ようやく理解したんですよ。
そこで、企業には、木を植えるのではなく、まず、伐採が必要な木がたくさんあることを理解してもらい、何をすべきか検討を重ねていたところ、環境省のJ-VER制度にいきついたのです。J-VER制度には、植林だけでなく、間伐などの森林整備による吸収プロジェクトもあり、これに参加することで、企業と現場と地球環境にメリットのある取り組み、コベネフィット(注7)の取り組みができるのでは、と思いました。
―単なる、埋め合わせ(オフセット)のためにクレジット購入するのではなく、そのクレジットが創出されたプロセスも意識して、カーボン・オフセットを介した社会貢献の視点をもつことも大切ということですね。―
お米に例えるとわかりやすいです。仮にお米を、単にキロいくらという取引にすると、消費者は、どれを買っても同じだから安い方を選ぶようになります。そうすると、単純に安いと多く売れるという状態になり、価格競争になってしまいます。
生産者は、これではたまらないと、うちは「減農薬コシヒカリ」だ、さらには「○○さんが作った無農薬ササニシキ」など取組みをPRし、値段が高くても消費者が買ってくれるような、安心でおいしい米をつくるようになり、そこに信頼関係が生まれるようになります。
国内で現在購入できるクレジットは、各種ありますが、発行のプロセスをよく見て、選ぶことが大切だと思います。また、そういった視点が、信頼度の高い制度を作っていくことにもつながると思います。
国内森林に必要なのは間伐
(出典:「カーボンオフセットによる付加価値の創造(GreenPlus)」より)
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